表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/195

【179話】仕返し

遅れました。

 ウラタギラタ侯爵の書状を見て、僕は膝から崩れ落ちた。



 先にそれを読んでいた分身も、手を地に付けている。


 考えることは同じか。



「おいどうした? ランディーズ」


 ガルよ、その呼び方は止めたまえ。


 ガルを睨んでいると、分身が早くも立ち直り、僕の代弁をしてくれる。



「戦争前にさ、僕の仲間がたくさん集まって来たんだ……僕のためにね。その時僕は『全員集合した』と思ってたんだけど……忘れていたよ、スクット・リッツ教官の存在を」


 そう、あのバトルマニアを完全に忘れていた。

 あまりの忘却ぶりはマジで落ち込むレベルだった。


 だが……


「だけど、書状には『若干名』と、書かれていた。リッツ教官以外に師匠なんて居たっけか?」


「僕も心当たりがない、この世界を愛した分身が、忘れてるなら僕も思い出せるわけがない。ただ」


「「この書状は僕に喧嘩を売っている。受けてやろうじゃないか!」」


「おおっ、ランディーズがハモった」



 ◆

 ◆

 ◆



 僕は分身に連れられて、ウラタギラタ侯爵邸に来た。


 見た目はたった2人だが、伏兵が13人も隠れている。


 悪いが伏兵の正体は謎に包まれている。

 ってか僕にも秘密って、どんだけイベント好きなんだ?


 まあ、感じる気配から察すると『泥人形』で間違いないのだが。



「ランディ・ライトグラムだ。ウラタギラタ侯に会いに来た。案内しろ」


 貰った書状を掲げ、ちょっと高圧的に言ってる分身。



「話は聞いているが、後ろの護衛はなんだ!? 仮面くらい取ったらどうだ?」


「このお方は神の使徒である、此度の戦争で敵軍を退けた高貴なる御方だ! ウラタギリタ侯ならともかく、キサマなんぞにそのお顔を見せる訳ないだろう」


 自分で自分を持ち上げる気分は、非常に複雑です。


「ぐっ、しかし……」


 仕方ない、僕も脅してやろうかな。


「よい、ウラギッタじゃなくて、ウラタギリタと言う者に神の力を見せれば、門兵の10や20、殺しても問題なかろう」


 できるだけ分かりやすく殺気を放つ。



「ひぃっ!? まて、待って下さい!! 今すぐ確認を……いえ許可を取ってきます」


 こうして、僕らはすんなりと通された。



 豪華な応接間で、ウラタギリタの到着を待つ。


 仮面から声が聞こえる。


『ランディこちらガルナイン、人質を発見』

『こちらガルファイブ、俺様も見つけたぜ』


 少なくとも泥ガルが9人以上居ると解った。

 楽しそうでなにより。


『こちらガルスリーだ、人質は全部で3人だと思うんだが……』


「ちょっとちょっと、ガルが言い淀むってなにしてんの? ちゃんと仕事しろよ」


『すまねぇ、しかし辻褄が合わねぇんだ。ランディの少年時代の師匠だろ? 1人は間違いないんだが、後の2人が弱すぎて胡散臭い』


「……因みに名前は?」


『モーブとザーコだ』


 ……なるほど、納得。

 リッツ教官が捕まったって信じ難かったんだけど、モーブとザーコが足を引っ張ったんだろう。


「ガル、師匠じゃないけど人質に間違いないよ。学院時代に、たくさん笑わせてくれたんだ」


『そうだったか、なら助けないとな』


分身(ランディ)、人質はリッツ教官にモブとザコだ」


「……あのお笑いコンビは師匠じゃないけど、たくさん楽しませて貰ったから、きっちり助けよう」


 同感だが、僕よりも思い入れがありそうだ。

 分身と言えど、もう別人なんだな。




 少し待ったら、ウラタギリタが護衛2人とジジイ2人の5人でやって来た。






 挨拶を適当に済ませた後、ウラタギリタの要求を聞く。


 その内容は、呆れたものだった。


『今回の戦争に、ウラタギリタ侯爵軍が活躍したと、書面に記して中央に報告しろ』


 だった。


 ヤル気出てきた。


 勿論『殺る』の気構えだ。


「で、そうすれば僕の師匠は返してくれるの?」


「残念だがそれはできない。ライトグラム伯爵の師はこのウラタギリタ侯爵との友好のために、こちらで生活してもらう。もちろん厚待遇を約束しよう。そうなれば将来、ライトグラム侯爵と呼ばれる日が近い内に来るであろう、はっはっはっ」



 なるほど、人質を手離すほとバカじゃないってことか。


「して、ライトグラム伯爵……後ろの御方はか神の使徒だと言ったようだが、本当なのだろうか? もちろん嘘をついてるとは思わないが、簡単に信じらないのも事実だ」


 さて、僕の出番か。


 僕は『グルトリアの面』を外して、素顔を晒した。



「なっ!? ライトグラム伯爵と同じ?」


 全く同じじゃない。

 僕は、髪の色を転生前の茶色に戻して、自分の年齢を22歳に引き上げた。


「僕に似るのも仕方ないだろう。ライトグラムには生まれた時から加護を与えていたのだから」



 ウラタギリタは僕を疑いの目で見ている。


「そう言われましても、なにか信じる物があれば……みなの者共に説明しやすいのですが」


 ここで何もしなければ、難癖付けて騒ぐつもりだな。


「なら、ここに土産をだしてやろう。ライトグラムも手伝え」



 僕と分身はこの部屋の空きスペースに向けて呪文を使う。


「第3レベル呪文……クリエイトアイテム」

「第3レベル呪文……クリエイトアイテム」


 僕はアイテム作成の呪文で、コ○ヨの大学ノート384冊、分身がボールペン2500本を召喚した。


「こ、これは!?」


「資源の召喚魔法、これが神の使徒のちからだ。存分に確認するがいい」


 ウラタギリタとジジイ2名がノートを持って調べている。


「ウムム……こんな上質の紙は今までに見たことがない」


「しかも、薄いのに丈夫で、きれいに束ねてある」


「そして、バランスよく書けるよう、うっすらと線が引いてある。これ1つで金貨何枚分……いや何十枚の価値があるんだ? 値段がつけられぬほどの逸品」

 


 次は、ボールペンをみている。


「これは、ペンなのか!? こんなに細い……インクは、インクはないのか?」


「ウラタギリタ様、真ん中に黒色芯がありますが、まさかこれがインクでは?」


「な、なんと言う滑らかな書き味……しかも細い……これならあの紙にたくさんの文字が書けよう」


 3人とも目の色を変えて、調べている。


「材料はおろか作り方すら想像できない」


「それよりも恐ろしいまでの軽さに、インクが全くなくならない」


「これも、金貨5枚いや10枚で売れるほどの価値がある」



 ここでウラタギリタ侯爵の笑みが、ここ一番で醜く感じた。


「キョホホホ、これは我がウラタギリタ領とエスパルの繁栄のために使うことでよろしいのでしょうか使徒様」


 こいつ、利益になると感じたら、手のひら返しやがった。


 グルトリアの面から声が聞こえる、今は外しているから直接耳に当てて聞く。


『兄さんの動きは予想しています。隠し部屋の伏兵は全て始末して、この土地の有識者を集めて放り込んでます。ついでにブタドリアも入れました』



 じゃ、はやく始末をつけよう。


「ウラタギリタ侯爵、お前は1つ勘違いをしている」


「キョホ?」


「これは、僕が神の力を行使できることを証明しただけ、そしてそこのライトグラム伯爵が力は半分であるが同じことができると解らせるためだ」


「……?」


「僕の加護を与えた者の、親しき者共を人質に取ったと言うなれば、僕に喧嘩を仕掛けたも同然だ。よく考えろ、5万の軍隊が何故撤退したのかを」


「ひぃっ!? ご、誤解ですっ! おい、ライトグラム伯、使徒様の怒りを鎮めさせろ! 侯爵としての命令だぞ!!」


「僕の友達ドリアさんを殺そうとしておいて、そんなこというかなぁ」


「ドリア? ……ハッ、そんな他所の王子など知らん! うちには来てない」


 そこで、タイミングよくドリアさんが転がってきた。


 押したのは誰? ガル? カーズ? もう少し優しく頼みます。


「ヌホォ! 使徒様の前で嘘はいけませんなぁ、ウラタギリタ侯爵殿」


「なっ、貴様は死んだはず……あっ」


 護衛の1人が口を滑らせた。


 実行犯がここに居たか。



「さて、よく聞くがいい。この僕に敵対したのはウラタギリタ侯爵領全てか? ウラタギリタ侯爵個人か?」



「おい、お前! 早く使徒様を説得しろ! 私は大貴族ウラタギリタ侯爵だぞ? おい! 衛兵! 私を護れ、早く出てこい!!」


 しかし、出てきたのは農家の有力者、商人、下級貴族の子息ばかりだった。


「な、なんだお前らは?」


 ウラタギリタ侯爵は知らないらしい。

 そんなことで、領主が務まるのか?


「ウラタギリタ侯爵と共に全滅したいのならあっちに、ウラタギリタ侯爵だけ亡き者にしたいのならこっちに移動しろ」


 ぞろぞろとこっちに来る人々、ドリアさんを殺そうとした奴までこっちに来た。


「お前は来るな」

 ゴキッ!


 分身がそいつの頚を、ぐるっと捻った。

 もう、210度近く頚が回った。



「ひぃ!? た、たたたた、助け……そ、そうだ! おいライトグラム、人質がどうなってもいいのか? はやく使徒様を止めろ!」



「そうだな、使()()()あれは僕の獲物だから見ててくれないか?」


 どうやら、ドリアさんが殺られそうになった怒りは相当なものだ。


 しかも、こいつが裏切ってなければもう少し戦いの幅が広がり、被害は少なくなったかもしれないんだ。


「いくら、分身の頼みでもそれは聞けない。一緒に始末しよう」


「な、なにを言って……あっひゃぁ!」


 僕と分身は、一瞬で詰め寄る。


「「第1レベル呪文……リバース……ライトダメージ」」


 ウラタギリタ侯爵の人生は、盛大に血を吹き出すことで幕を閉じた。




 ◆

 ◆

 ◆



「思ったより早かったか?」


「そうだな、少し早かったか」



 僕は、分身とこれから起きるであろう面倒事にたいして相談(わるだくみ)している。



 数日後には、タタカッタ高原に展開していた軍隊の一部と、アルカディアの国王が、エスパルにやって来る。



 さて、戦後処理の面倒事を片付けますか。


 これがこの世界で最後の仕事になると、そう予感した。




こんにちは、鹿鳴館です。


長い間、神罰転生を読んでいただきありがとうございます。


神罰転生は、次回の『巻き添え召喚』と次々回『エピローグ』で完結になります。


今後は、この作品の元になった『巻き添え召喚』と一年間半近く前書いた短編『現代ダンジョン』もの連載版に手をだします。


詳しくは、夜に書こうと思ってる活動報告まで。


もう少しだけ、オラに元気をわけてくれ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ