【172話】冥王
2話前の謎(?)解きをしました。
冥王エリュシオンが、僕たちを冥界に引き込んだ。
「なるほど、俺様たち4人が一斉に気を抜く瞬間を狙ったのか。で、まさか単独で戦うなんてバカなことは考えてないだろ? ヒヨコ共はどうした?」
そうか、ガルたちは冥王と面識があったのか。
『くくっ、あやつ等はやることがあって現世に置いてきた。貴様等には素晴らしい敵を用意してあるぞ。さあ、眠りについた旧友よ! 目を覚ませ、人神、竜神、魔神』
冥王が叫ぶと同時に地響きが鳴り、地面が小規模で3ヶ所陥没する。
陥没した穴から、以前に戦った竜神、魔神、人神が出現した。
『もう、300年経過したのか?』
『バファイムしかと見よ、ここは冥界だ。我らを起こしたのはエリュシオンだ』
『エルドラドこそ、よく見たほうがよい。エリュシオンと忌々しいあの人間共が、冥界にきているぞ』
なるほど、4対4で戦おうってことなのか。
まさか、死んだ神々を呼び起こすとは。
さすが冥王、侮れねぇ。
冥王は、三神の近くにゆっくりと歩み寄り、ニヤリと口元を上げる。
『冥界での我は、地上とは比べ物にならぬぞ? ただ、お主等の強さは我に近いと解っている。なので、確実な勝利を得るため三柱に協力してもらおうぞ』
『くくく、エリュシオンよ、この人間共は生かしてはおけない。喜んで力を貸そう』
『だが、エリュシオンよ、いかに己に利があるとはいえ、よく我らを復活させたの? なにか考えがあるのだろ』
『そうじゃ。人間共を始末したら、我の名を元に戻してもらうぞ【冥神エリュシオン】と』
『よかろう。我ら四柱が戦えば、人間共は確実に死ぬだろう。冥界での死は【消滅】を意味するゆえ、だが油断すれば思わぬ手傷を負う』
なんか、勝利を確信してるのか解らんけど、饒舌になってるな。
『すでに、我等の勝ちは決まっておるが、それだけでは気がすまぬのでな。余興を用意してある』
冥王は、空中に浮かぶ巨大モニターに手をかざす。
巨大なモニターには、先程までいたナパの町が映し出されていた。
『我の従者が、お前らの親しき者共を虐殺する姿、じっくり見ながら滅びゆくがいい。下手な希望を与える前に言っておくが、お前らの兵士が集まる前には『アプレンティスの衛兵』2000体と『マスターの衛兵』が2体も到着する。親しき者共が蹂躙される様を見て、まともに戦えるかな?』
この性悪女神、なんて事を思い付くんだ。
だけど、卑怯とは言わないよ。
戦いの前に準備するのは、大事なことだからね。
僕だってかなりの準備をしてるしね。
「ではこの世界の神々よ、戦闘開始の合図を、現世の戦いで合計2名、戦闘不能または死亡にしませんか? 盛り上がりますよ」
カーズの言葉に、冥王が『想定外』だと言う顔をしている。
さすがカーズ、言葉使いは丁寧だけと、嫌がらせをさせれば、ガルより上手い。
『くくくっ、エリュシオンよ、構わぬではないか。その強気な態度どこまで続けられるのか楽しみだの』
『バファイム……』
「えっ、もうかよ!? もう少し引っ張れよなあ、ダメじゃんランディ」
ガルはモニターを見ながら、僕をけなす。
モニター越しに見える世界は、僕たちが消えて動揺しているところに、冥王の従者らしき者が、何かしらの話をしていたのだろう。
みんなの狼狽えた様子が、モニターを通して見ても判る。
なら、頃合いだろ?
そう、ガルが文句を言ったのは、ローブの男が正体をバラしたからだ。
そう、もう1人の僕が……
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どうして、僕がもう1人いるか説明しよう。
「兄さん、この世界で、楽しかったこと、嬉しかったこと、強い感情を覚えたことを強く思い出して下さい」
カーズの言葉に従い、今までこの世界で暮らして来たことに思いを込める。
「その思いを右腕に集めるようにして、力を入れて下さい」
カーズの言う通りにする。
「アーサー、オッケーだぜ」
「フン!!」
ガルの合図でアーサーがラグナロクブレードを振り抜く。
ゆっくりと落ちる僕の右腕。
その右腕に向かって、呪文を使う。
「第5レベル呪文……ドッペルゲンガー!」
「兄さん、順番が間違ってますよ。第8レベル呪文……パーマネント」
右腕の切断面がメチャクチャ痛い。
言われた通り、使う呪文の順番間違えちゃった。
「だ、第5レベル呪文……シリアスリジェネレイト」
右腕の再生完了。
こうして、この世界に思いをのせた僕が誕生した。
僕の使った呪文『ドッペルゲンガー』は、一定時間で消えてしまうが、カーズが『永続化』の呪文を使ったから、呪文の効果が永遠に続く。
と言っても、右腕から生まれた自分には、寿命がある。
呪文を併用しても、200年は生きられないだろう。
「キターッ! カーズさんとランディさんのトンデモ呪文コーナー!! こんなんだから、神様たちに命を狙われるんっすよ? こんなの見てたら死者復活が可愛く見えるっす。ねぇねぇガルさぁん、カーズさんとランディさんは前科何犯くらいっすか?」
「さあ? だけど、キンジの出身地の日本にはカーズのクローンが3人いるぞ。本体のカーズに近いレベルのマジックユーザーがいれば『ディスペルマジック』でイチコロだけど、日本に高レベルのマジックユーザーなんているかなぁ」
「聞きたくない事実発覚!? で、このランディさんをこの世界に残すってことっすね?」
僕の代わりに、もう1人の僕が答えた。
「そうだ。僕には頼りない父さんと母さんがいる。レジーナ、アリサ、ドリアさんもほとんど家族のようなものだ。香織ちゃんたちのことは、本体に任せる。ガル、しばらく正体を隠したいから、服をくれ」
「にはは、とりあえずこのローブを着てくれ。絶好のタイミングで驚かせてくれよ」
ガルからローブを手渡され、僕ともう1人の僕はニヤリと笑った。
カーズは僕を2人にすることで、見事に難題を解決したんだ。
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そう、力半分とは言え、僕がサポートしているんだ。
並の相手では、心配するまでもない。
驚きの隠せない冥王を横目に、前哨戦を見学することにした。
キンジ「ランディさんのドッぺルゲンガー来ましたァ!! 因みにランディさんは髪の毛でも分身できますが、アーサーさんと違って中身が綿のみたいな人形になるんすよ。ランディさんの等身大人形は要りませんかぁ? あっ次週はランディさんの分身体が主役っす」




