【147話】双子の美姉妹
キャンブルビクト領から僅かに南下した場所に、小さな町を治める、クロウニン子爵がいる。
そのクロウニン子爵の双子の娘は、美人ながらも、二十歳にして独身であった。
その原因は勝ち気な性格と、その性格を押し通せる腕っぷしの強さにあった。
見るに見かねたクロウニン子爵は、キャンブルビクト領内にいる。ドゲッスー伯爵の次男と三男に縁談を持ちかけた。
しかし2人は、その次男と三男のセクハラに耐えかね、ぼこぼこにして、倒してしまった。
怒ったドゲッスー伯爵だが、キャンブルビクト侯爵の提案で、姉『ソルティナ・クロウニン』妹『シュガーナ・クロウニン』を辺境に追放すると言う形で収める事になった。
そして……
「ふん、本当にド田舎なのね」
「でも、辺境にしては活気があるわ」
2人はユタの町を眺めながら歩いていた。
ユタの町には、旅人が多く来るようになってはいたが、移住するには、2人の町長と領主の許可が必要な、閉鎖的なルールを適用している。
代わりに、ナパの町に移住するのは、多数いる町の有力者の内、1人でも認めれば移住出来てしまう。
ソルティナとシュガーナは、領主を探すため、ユタの町長の場所に向かっている最中だった。
子供たちが、はしゃぎ走り回る。
食用の獣を捕まえて、捌く準備をしていたり、ユタは活気に溢れていた。
そんな時……
「今度こそ捕まえてやる」
「ふふふっ、出来るかな? もし僕を捕まえる事が出来たら、晩御飯は好きなものをリクエストするがいい」
「ふう、いい加減諦めたらいいものを」
「手加減をしてるから、ついつい諦めきれないんだろう」
追いかける男は、少年の足払いに躓きかける。
「うわっ? っととと、ぬおっ、あっ」
しかし、何度も堪えたが、結局バランスを保てず転倒してしまう。
男がとっさに掴んだ物は、旅行く美女の履き物……いわゆるスカートだった。
◆
◇
◆
今、ユタの民の1人であるトラジを、修行と称して遊んでいる。
言い訳をしておくが、僕は遊んでいても、トラジには立派な修行になっているからな。
トラジは、食べ物に釣られるタイプらしく『さきいか』を報酬にしたら、メキメキと実力を伸ばしていった。
単純すぎて、死んだ妹に申し訳ないよな。
しかし、それでもベルデタルの剣士や、本気のアリサには届かない。
うまいタイミングで、トラジの足を引っ掛けたら、片足でバランスを取りながら、観光で来たっぽい女性2人の方まで、進んで行った。
そして、最後にバランスを崩して倒れる。
「あっ」
そして、倒れ際に女性の服にしがみつき、見事美尻を露出させることに成功した。
2人同時に偶然を装って脱がすなんて、狙っても簡単に出来ることじゃない。
いつの間にそんな高等なスキルを身に付けたんだ?
だが、今は褒めよう。
やったなトラジ、今日は多目に『さきいか』をプレゼントしましょう。
ダナムもテスターも、驚きつつ、顔を若干背けるが、眼球は女尻を確実にとらえている。
トラジは慌てつつも、斜め下と言う絶好の角度から2つの女尻を堪能している。
あまりにも自然な流れで、事を起こすトラジに驚く。
さては隠れて練習していたな。
あっ……
2人の美人から、恐ろしいまでの怒気が。
グシャァ!
顔を真っ赤にしながら、慌ててショーツとスカートを履きなおすと同時に、トラジの頭部を地面にめり込ませる。
その1秒後、もうひとつの足がトラジの股間に吸い込まれた。
グシャァッ!!
トラジよ美尻2つの代償が、男の象徴とは……
いや、トラジの潰れた顔は満足しているようにも見えた。
そうか、トラジは満足して逝ったか。
さらに、踏みつけを続ける女性に、ダナムとテスターがさすがに止めようとした。
「まて、流石にそれ以上はやりすぎだ」
「そうだ、これ以上やったら死んでしまうぞ」
美女は頬を染めたまま、答える。
「大丈夫、手加減して踏んでいるからまだまだ死なない」
「それに、最低でも記憶喪失に、しておかないとダメよね」
仲裁しに行った、ダナムとテスターに、2人は言葉を放つ。
「あなたも、見たわよね?」
「ええ、記憶を消さないといけないわね。そして……」
「「最後は一番喜んでいた、エロガキ! お前は念入りに記憶を消してあげるわ」」
2人同時に言いがかりとは、仲の良い姉妹ですこと。
2人の美人も思いっきり暴れれば、スッキリして気がおさまるかも知れない。
「ダナム、テスター、相手になってあげて。蹴り方から察するとかなり強いかもよ」
「強いと言っても、この細腕じゃあな」
「ご令嬢を、なだめるだけだからな」
ダナムとテスターは、武器を放り投げて、渋々僕に従う。
なだめようとする、ダナムとテスター相手に、2人も武器を放して、構えをとった。
あれっ? その瞬間、2人の美女が強くなったような気がした。
1人がダナムに、あくびが出るようなパンチを繰り出す。
ダナムはため息を吐きながら、パンチを止める。
止めたと同時に、ダナムは手首を掴まれ、体を引っ張るような動きをしながら『トンッ』と言う感じでダナムを押す。
するとダナムは転倒する。
「なっ!?」
転んだダナムの頭に蹴りを放つが、ダナムはなんとか身を翻して避ける。
「チッ、姉さん、こいつ思ったよりやるわ」
「うん、こっちも……驚いたわ」
テスターもダナムと同様に転ばされていた。
あのぅ、テスターは一応王宮騎士なんですが。
男女で差別をしない、大人げないダナムが、攻撃を仕掛ける。
しかし、絶妙のタイミングで懐に入られて、指2本でダナムの動きを止める。
「なんだと!?」
ダナムが驚くのも、無理はない。
今のは合気技に似ている。
ダナムの呼吸を読み、動いて、最小の力でダナム止め体勢を崩す。
もう1人も、テスター相手に同じことをしているから、2人とも達人レベルで、合気を使いこなしていると思う。
ダナムの相手は蹴りだけは、お粗末だけどね。
「ぬおお! はぁっ!!」
ダナムが肉体強化を使った。
さすがダナム、男女差別しない男だ。
「へぇ、あれだけの腕力を持っていて、肉体強化も使えるの? うふっ、倒すのが楽しみになってきた」
ダナムの剛腕から繰り出される、殺人パンチを斜め上に弾いて、肘を心臓に叩き込む。
さらに斜め下から切れのある蹴りが、ダナムの頭部にヒットする。
なんだよ、良い蹴り技も持ってんじゃん。
「ぐがぁぁぁぁぁ!!」
完全に本気を出したダナムに、怯むことなく、相手をしている。
ダナムの攻撃は無効化され、最短の距離で蹴りが飛ぶ。
ダナムが冷静さを失うと、ダナムの力を丸々利用され、弾き飛ばされる。
ダナムの力を完全に封じていやがる。
天才だ、ペンタゴン級の天才がここにいるぞ。
だが、もっと問題なのは、もう1人の方だ。
ダナムより、力と戦闘技術のあるテスターも、一方的にやられている。
テスターはダナムと違い、取り乱していないのにだ。
テスターは僕をチラリと見て、良い蹴りを受けた。
だが、テスターはしばらくは持つだろう。
ダナムの方は…………多分、気を失うまで、闘い続けそうだ。
すごい、片手でダナムの怪力を止め、状況によって、残りの手で転がすか、蹴りを入れている。
ダナムが熱くなればなるほど、相手に余裕ができている。
しばらく見学していたら、ダナムは負けた。
しっかりと気絶までさせて。
「意外に呆気なかったわね。姉さんは?」
「うん、この相手は強いわよ」
すると、今まで返し技ばかり使っていた、テスターの相手が攻勢に出た。
テスターの避ける動きを利用して、関節を極めようとしている。
強引に反撃しようとしたテスターの力を利用して、カウンターで蹴りを喰らわす。
どうやら、姉さんの方が少し強い様だ。
「姉さんに先手を使わせるなんて、すごい。あっちが当たりだったか」
妹の方は、バトルマニアかも知れないな。
テスターは気を失う前に、降参して僕の隣にやって来た。
「ランディ、素手なら俺より強い。なんなんだあの姉妹は!?」
そうだね、素手ならかなりの腕前だね。
降参して逃げたテスターに、文句を言いたそうな姉。
「一応、あの出来事を忘れてもらうまで殴るはずだったのに」
思い出したせいか、ちょっと顔が紅い。
「姉さん、最後のエロガキは私にやらせて。こいつとエロガキは念入り、記憶を消さないと」
倒れてるトラジと僕に指を向ける。
僕はともかく、トラジは気絶してるよ?
「そうね。でも、気を付けて。このエロガキは眼力がすごいから、闘いながらスカートを覗くかも」
「ふっ、そうなったら数年分の記憶を飛ばしてあげるわ、エロガキ、覚悟なさい!」
「僕の名前は、ランディなんだけど。しかもここの法律は見るのはオッケーだよ?」
「そんなわけないでしょ!」
「そんな事ないでしょ!」
「はじめて聞いたぞ!?」
なんてこったい、テスターが裏切って、向こうの味方に付いてしまった。
僕も、棍を立て掛け、向こうの土俵で闘えるように、僕から仕掛ける事にした。
意外にも、ワクワクする闘いは、素敵なお尻を見せてくれた美女2人とする事になった。




