【144話】内政3
荒れ地でも育つ僅かな農作物、危険を覚悟で手にした、森の資源。
そして、ユタの町からわずかに届く素材を加工して、何とか食いつないでいた砦の町ルネ。
現在は人口が、移住で半分以下になっている。
いずれは大多数が移住するのだが、ユタから届く素材が大量に入荷して、そちらの仕事が10倍に増えていた。
人口500人に満たない砦の町が活気で湧いている。
食料も、猛獣の肉と、森で取れた木の実が、カロリーメ○トと一緒に運ばれ、飢える人は皆無となった。
騒ぎにならない程度の安酒を、水で薄めて提供出来るようにもした。
僕は、その酒を飲むふりをして、水を飲んでいる。
ディテクトエネミー、そう敵対者感知の呪文を使うまでもない敵意をビシビシ感じてる最中だ。
だから、酔ったふりして人気のないところに移動して襲われて見ようと思う。
僕に向かって、これだけの敵意を向けるのは、ここの民にはいない。
一部の民からは『鬼』『人でなし』『化け物』とか言われる事もあるが、敵意は全く感じないしね。
そして、5人の傭兵に囲まれた。
1対5なら、かなりの人数差だ。
5人全員が特務隊の幹部ならば、負けてしまう人数だった。
あいつら、かなりの強さだからな。
「よう、坊っちゃん。少し聞きたいことがある」
「素直に、しゃべってくれれば、痛い思いをしないで、死んでいけるぜ」
「だけど、簡単にしゃべられても困るな、遊べない」
「とりあえず、手足の1、2本切り落としてから聞き出そうぜ」
「そんなわけで悪いな、お前の命は今日までだ」
この、傭兵は知っているのかな?
人を殺そうとするものは、殺される権利が付いてくるって。
知ってるなら、腕や脚をなくしてから死ぬ覚悟があるはず。
今回の傭兵は、笑えそうもないから助けないよ。
「えっと、傭兵さん? お願いがあるんだ。命乞いはみっともないから、やめてくれよ?」
弱いくせに、油断していた傭兵の1人は喉を潰した。
死ぬのは時間の問題。
情けない事に、今ので動きを止めてしまったから、2人目は首を200度捻って落とした。
たぶん死んだ。
3人目は、金○まを内臓にめり込むほど蹴りあげた。
たぶん生きてる、泡を吹いてるから。
4人目は手足の関節を外して転がす。
舌でも噛まなければ、絶対に生きてるだろう。
逃げる5人目は、回復の逆呪文で大怪我をさせた。
じきに、出血多量で死ぬだろう。
僕は、生きていて会話ができる傭兵から。
情報を聞き出した。
特に、拷問とかしないで話してくれたから、助かった。
拷問は得意じゃないし、好きでもないから。
裸に剥いて、鳥の餌を塗りたくるくらいしか、思い付かない。
サイレンスの呪文を使い、無音空間を作り出し、僕の殺害命令を出した男を捕まえた。
サイレンスは僕の衣類に使ったから、効果が切れるまで、報復ビンタをして時間を潰した。
「フガフガ、キハマ、ホンハヘトヲシヘ、ハハヘフムハホ、ホホフハホ?」
(クソっ、キサマ、こんなことをして、ただで済むと、思うなよ?)
顔をパンパンに膨らませて喋る姿が面白い。
不味い殺意が薄れる。
「お前んとこの傭兵には消えてもらった。おまえも死にたくなければ、大人しく逃げ帰るんだな」
「モガモガ!? フヒノヒョウハイヲヒヒランノハ? ハノキャンフルヒフトホウヒャクハキハノ、ハレナンハーハフハフノホイヘハル、モフナンハーハマハ、ハッフニフイヘルンハホ!」
(なんだと!? 俺の商会を知らんのか? あのキャンブルビクト侯爵が麾下の、ダレナンダー伯爵の甥である、モブナンダー様がバックについているんだぞ!)
全く言葉が理解できないけど、僕を脅しているのは解った。
こいつ、どうしようか。
とりあえず、ライトグラム伯爵の殺害容疑で捕まえて、面倒じゃないところにつき出す事にした。
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カツ丼が保護者をしている、子供たちが仕事を要求してきた。
確かに、大きい子は働いても不思議じゃない年齢に達している。
僕は、やる気のある人なら子供でも使う。
ただ危険な事は、なるべくさせないけど。
ユタの民とナパの民にも、気になった数名を集めて、僕の弟子を作る事にした。
そう、クレリックになって貰うんだ。
崇める神は2択なんだが、1つは絶対に教えたくないから『暗黒女神カレアス』を信仰して貰う事になる。
カレアスの下でクレリックになるには、本人を含め2人の信徒が必要になる。
一次面接をパスした者に、クレリックになるための説明をしている。
「では、これから二次面接を始めます。僕と同じ職業を得るためには、2つの戒律を守らなければいけません。1つ目はクレリックの戒律。食事以外での刃物の使用は厳禁です。ただし食べる準備に使う刃物は、お祈りをしてから使用してください。2つ目は信仰する神『暗黒女神カレアス』の戒律。彼女の戒律は、食事以外の同族未成年殺しを行ってはならない。それ以外は自由」
この戒律は簡単そうだけど、実は楽じゃない。
大きな権力を持つと、殺さなければいけない邪魔者は増えるし、戦争になれば人を選り好みして戦う事はかかなり難しい。
「領主様、戒律を破った場合のペナルティーはどのようなものなんでしょう?」
そこ、大事だよね。
「確実に訪れるのは、クレリック呪文が使えなくなること。後、確実ではないけど、上位クレリックの抹殺者がやってくる。今なら、たぶん僕が選ばれるだろう。だから、この戒律は絶対に守ってくれ」
「……」
「ゴキュ」
「……」
「ゴクリ」
一部、冷や汗を流していたけど、結局クレリックになるための修行を全員が選んだ。
ふふっ数ヵ月後が楽しみですねぇ。
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これから発展させるにあたって、足りないと思うのは職人と道具だ。
簡単な道具はクリエイトアイテムで出せるが、それに頼りきりなのは良くない。
しかし、砦の町ルネには職人の卵がたくさんいたのだった。
150年前の技術を、完璧ではないけど語り継いで、残してあった。
それは『染め物』『塗り物』『機織り』『接ぎ木技術』と、植物や木材を使った技術が多かったが、きっと役に立ってくれる。
僕の役目は、働きやすいように、民が望む物を用意する事。
実際、彼等は僕の、日本人としての曖昧な知識をもとに、技術を昇華させていった。
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◇
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次に着手したのは、子供用の教育機関だ。
いわゆる学校だ。
この世界は、貴族と金持ちしかまともな教育を受けられない。
しかも、その教育機関も11歳から5年間がこの国の常識になっている。
傭兵ならば、それでいいけど、遊びを混ぜた教育をもっと幼い時代に経験させたい。
そんな訳で、子供に勉強をして貰う教室をユタの町とナパの町に設置する事にした。
先生不足だけど、先生募集を王都にいる特務隊に依頼しようと思う。
とりあえず、僕と一緒にエスパルまで来た人たちに臨時先生をやって貰う事にした。
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◇
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今いる人材の中で、更なる労働力の確保をはかる。
着目したのは、じいさんばあさんだ。
足腰にガタがきたり、古傷などでまともに動けなくなった、引退した者たち。
一件一件、丁寧にリサーチしては『ライトキュア』『シリアスキュア』『ライトリジェレネイト』で治していく。
ただ数名、この呪文で治らなかった民が居た。
骨折して、正しい応急処置をしないまま骨がくっついたパターンだ。
「領主様、俺の事は気にしないでくれ。他の皆が働けているから満足だ」
こう言ってくれた。
「なぁに、気にするな。それに今は労働力不足なんだから。おりゃあ!!」
身体の悪い部分を掴んで骨をへし折る。
「うぎゃあぁ!? りょ領主様何を、へぎゃぁ!! や、やめぴぎゃあっ!」
「第1レベル呪文……ライトヒール」
「何するんじゃ、このクソ領主!」
男から切れのあるパンチが飛んできた。
「おっ、うまく治ったな」
「えっ? あっ! か身体が思い通りに動いた!?」
「荒療治だけど、大成功」
「……領主様、感謝するけど、今日だけは思いっきり殴っていいか?」
いいとも、全て受け止めてやる。
民の感謝の拳は、手のひらで全て受け止めてあげた。
こうして、一筋縄では行かない怪我人を数名治した。
しかし、その数名に本気で追いかけられる事になった。
僕の内政作戦が軌道に乗った頃、僕は16歳になった。
※ランディ 十六歳
※ギフト 暗黒女神の愛
※魔法の種別 回復系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』『グランヒーリング』『アルテミットヒーリング』『デトックスA~F』『ニュートラライズポイズン』『キュアディシーズ』
※魔力総量 4721
※クレリック呪文 第1レベル 35回
※クレリック呪文 第2レベル 32回
※クレリック呪文 第3レベル 28回
※クレリック呪文 第4レベル 24回
※クレリック呪文 第5レベル 20回
※クレリック呪文 第6レベル 18回
※クレリック呪文 第7レベル 15回
※特技『神速』
※アリサ 十六歳
※ギフト 無し
※魔法の種別 回復系 肉体強化系 生活系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』『グランヒーリング』『アルテミットヒーリング』
※魔力総量 1880
※特技『ゴールデンタイム』
キンジ「マジックユーザキンジの質問コーナー!! 今回は暗殺嫌いの暗殺者ガルさんに来ていただきました」
ガル「何でも聞いてくれ」
キンジ「早速、疑問があります。ランディさんがクレリック呪文を教えるのに、信仰する神が二択だっていいましたが、暗黒女神カレアスの他に何がいるんすか?」
ガル「ランディは嫌がるんだけど、カレアスの従属神扱いで『ヴェルランデイヤ』ってのがある。まっ結局カレアスとあまり変わらない制約になってる」
キンジ「えっ、それってランディさんの名前じゃ……」




