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【143話】内政2

先日は間に合わなくてすみませんでした。


 今、とある煮卵入りラーメンを餌に、急ピッチで働かせている仕事がある。


 それは枕木と鉄棒だ。


 ちんたら歩いていると、砦の町ルネから、森の町ユタまで、5日もかかってしまう。


 大体120㎞って所だ。


 そして、森の町ユタから、新緑の町ナパまでは1日弱。


 20㎞を少し切ると見ていい。


 その距離を短く感じさせるため。


 レールを敷いて、トロッコで走らせる事にした。


 もちろん、僕が一から思いついた訳じゃなく、ナパの町にレールの一部があったからだ。



 先人の知恵者さん、この知識使わせて貰いますね。



 レールの下地になる枕木については、ユタの町の民が、防虫処理と防腐処理のやり方を知っていたので、そいつに任せる事にした。


 今は、原料の木を目の前にしている。


 ベルデタルの剣士と共に。


「ようし、闘気が練れたら始めるぞ。かけ声はこうだ! 『王力斧奥義、正』」


「はいっ! 王力斧奥義、正!」

「はい! 王力斧奥義、正!!」


 ベルデタルの剣士に王神流戦斧術を教えている。


 開墾、修行、材料調達の、一挙三得のスゴ技だ。


 ここに来て、ベルデタルの剣士100名は、面白いくらい便利に働いている。


 中には、数日も経てば、本当に戦斧術の奥義を使える者が出るだろう。



「できた……使徒様、出来ました。奥義を使えましたぁ!!」


 なにっ、もうか?


 こいつは剣よりも斧に適正があったんだな。


 それにしても、嫉妬するくらいの才能だな。


 そいつで、憂さ晴らししよう。


「良くやった。これが終わったら直々に稽古してやる」


 ふっ思い上がった心をへし折ってやるわ。


「本当ですか!? やったぁ! おりゃおりゃ! 『正』! 出来たぁ」


 誤算だ……残念なことに、ラーメンより良いご褒美をあげてしまった様だ。



「うおおおおおおっ、あいつだけ狡い!」

「うりゃゃゃゃゃっ、俺も今日中に、奥義を体得して、使徒様に直接指導をしてもらうぞ!」

「そうだ! ベルデタルの底力を出すんだ!」

「「「「「正!」」」」」



 …………ふっ、計算通り。



 ベルデタルの剣士は、ラーメンより修行の褒美が効果的っと。



 ◆

 ◇

 ◆



 ここは、森の町ユタから北側の大森林。


 アンデッドモンスターの驚異がなくなり、危険のほとんどない森として様変わりしてしまった。


 ここで、内政チートの足掛かりを掴む。


「第3レベル呪文……ディテクトアイテム」


 対象は『ゴムの樹』にしていた。


 予想では、簡単に見つからない筈なのだが、1㎞以内にゴムの樹はかなりの本数で見つける事が出来た。


 これを使って、ゴム製品の製造が出来るようになった。


 王都の住居にも2本ほどゴムの樹があったから、それで加工製品の開発はやっていたので、量産体制さえ整えば、色々と便利な物が作れるようになる。


 日本人としての、知識を使った内政チートは、表面しか学んでなかったせいか、うまくいかない事ばかりだったが、僕はクレリック、特技を使って内政チートに挑もう。



 さあ、お次は……


「第3レベル呪文……ディテクトアイテム」


 次に選んだのは胡麻だ。


 そう、僕は胡麻油が欲しいんだ。

 僕のクリエイトウォーターでも、出すことが出来るけど、みんなで作り上げた胡麻油で美味しく食事をしたいんだ。


 残念な事に、1㎞以内に胡麻は存在しなかった。

 それならば。


「第6レベル呪文……ディテクトアイテムLVⅡ」


 見つけた。


 場所は、ユタの町から南の牧場(注意:猛獣の生息地)で胡麻を発見した。


 種を持ち帰り、ユタの町で育てる事にした。

 早く、たくさんの実にならないかな。


 胡麻は簡単に育つが、効率の良い種の収穫が面倒だ。


 胡麻が育ち始めたら、常に監視をして、一番下側の種が露出したら、収穫だ。


 無駄のないよう、その場で樽を用意して、その中で枝ごとふりふりして、胡麻を出しきる。


 乱暴にすると不純物も多く混じるが、気にしない。


 樽に胡麻がそこそこ入ると、ピンセットでゴミを除去する。


 これは、ユタの町の子供たちにやらせた。


 ご褒美は、お菓子だ。

 もちろん、鉄貨も月イチで支払う。


 子供たちには、働くありがたさと楽しさを実感してもらわないと。


 出来上がった胡麻は、軽く蒸して、高圧圧縮法で油を抽出する。


 カスはレジーナの弟子にあげて、料理の材料にさせた。


 出来上がった胡麻油で、ニクガクルガの肝臓を軽く炙って食べる。


 胡麻油の完成度は、イマイチの筈なんだけど涙が出るほど美味しく感じた。


 ただ、生産量に問題があって、今のところ、ユタの民しか供給出来ない。


 もっと頑張って量産するか。



 ディテクトアイテムを使うまでもなく、竹は見つかる。


 元々、水筒として使っていたから、量産して町中に普及させた。


 竹を半分に割って、即席弁当箱を作ったり、竹トンボを作って子供たちと遊んだ。



 次は、朴木(ホオノキ)を探した。


 使用目的は2つ、竹の弁当箱の下敷きにつかったり、お尻拭きに使用するためだ。



 今までは、木っ端や石ころ、場所によって水を使っていたけど、僕としては朴木の葉を使って、より良い生活にしたい。


 残念だけど紙はまだまだ高級品なのだよ。


 因みに王都では、ボロ布を使って再利用していた。



 ゴムの樹から、樹液を集めていた町の人が、バナナを発見して持ち帰ってくれた。


 しかし、食べてみたがほのかな甘さを遥かに上回る渋さがあるし、3割近くは種があって非常に食べにくい。

 しかし、生きるか死ぬかこの地方では大事な食料だったのだろう。

 突然変異を期待して、栽培はしておこうと思う。

 種のないバナナは突然変異で誕生したらしいからな。

 もちろん、詳しい事は知らない。

 しかし、この大森林の植物の生態を疑うが、都合が良いので、突っ込むのはやめよう。



 その後、ディテクトアイテムを使って『ニンニク』『ショウガ』『コショウ』『舞茸』『椎茸』『トリュフ』を見つけた。


 栽培や現地で収穫等は、ユタの民に任せて、穴場だけたくさん教えて、終わりにした。


 僕が稼いでも、意味がないんでね。



 ◆

 ◇

 ◆


 ある日、僕のところに相談を持ちかけに、トウドウ、サイドウ以外20名の民がやって来た。


 理由は、砦の町ルネに定期的にやって来る、商隊の対応についてだった。


 命を懸けて、手に入れた貴重な猛獣の素材を、塩との交換で不平等に仕入れさせられているらしい。


 もし、素材が大量にあると知れれば、もっと吹っ掛けて来るだろう。


 何とかならないかと、相談された。


 僕は身分を隠して、商談に乗り込んだ。



 ◆

 ◇

 ◆


 今の僕は、商隊から塩などの生活必需品を交換する、ただの代表者『タダノイ・ケメン』だ。


 第2案の『ランデイ・ケメン』もあったのだが、センスがない感じがするから没にした。



 猛獣の素材を、ここで加工して、例の商人から、塩等の生活必需品と通貨に交換する。




「査定が終わりました。今回は素晴らしい量を納品されましたね。それでですね、今回から『塩』の価格を適正価格に戻して販売させてもらいます」


 商人の書簡を受けとり値段を見る。


 うん、ざっと王都の5倍を超える値段で売り付けやがった。


 恐らく産地で買う値段の15倍だと見ていい。


 ならば、原価の30倍か?


「ずいぶん高いですね」


 と、一応ごねる。


「それは仕方ないでしょう。こちらも利益を出さなければいけません。遠くから物資を運び、そして盗賊対策として、傭兵に高い給金を払っていますからね」



 こいつと面会する前、イルムナ・シオンに流通と物価について教えてもらった。

 物資を運び込む量にもよるが、遠距離だと原価の10倍くらいは簡単に上がるそうだ。


 少量だと、一度に稼げる利益が少ないし、大量だと、盗賊に狙われるリスクがあるから、傭兵をたくさんの雇うから、出費がバカにならないからだと。



 目の前のこいつは、今のところ極悪非道商人ではなく、普通のぼったくり野郎だ。


「わかりました。では、そちらの商会との取引はなしで」


「は?」


 どうやら、この商人は耳が遠いらしい。


「たしかに、ユタの町から素材が大量に運ばれてきましたが、いまだに財政は切迫しています。出来れば、直近の侯爵領とほぼ変わらない値段にしてほしいのですが?」


 すると、ピクリとこめかみが歪んだけど、すぐに笑顔になって話してくれた。


「キャンブルビクト侯爵領での、取引は利益の出ない厳しいものになっているのだ。悪いがその提案は受け入れない。それに良いのですか、我々が、塩や他の大事な物資を一手に引き受けて取引しているのを」


 たぶん、嘘だろうが僕は交渉が苦手だ。

 そう言われると、打開策がない。


 さらに、ちょっぴり脅してきた。



「そうですか……ではやはり、そちらの商会との取引はなかった事に。しかし、ただで帰す訳にもいかないので、自慢の料理でも食べていってください」


「……」


 文句ありありの表情だけど、有無を言わさず料理を持ってくる。


 2品目から、商人も様子がおかしいのに気づいた様だ。


 だって、食べ物もままならない砦の町で、まともな料理が出るとは、思ってなかっただろう。



 5品目のメニューを出して絶句させた後に、とどめを刺す。


 それは、豪華な装飾で飾られた塩を入れた小瓶だ。


「なっ!? こ、これは……」


 ふっ驚いたかい? 君が持ってきた灰色がかった塩じゃなくて、純白のきめ細かい塩を。


 青い顔をして唸る商人を前に、当たり前の様に塩をふり味を足す。



「今回は、薄めに作られているので、そちらの塩をつかって調節してください」


 性格悪いけど、この手の嫌がらせは大好きだ。


 こめかみに、筋を浮かべながら笑う商人を見ているのが楽しい。



 商談を破棄して、よりよい『塩』があるんだぞ?

 と、上から目線でアピールもした。


 後は、運任せだな。



 ◆

 ◇

 ◆



 商隊の頭を務める、アーゴはランディに対する殺意に満ち溢れていた。


 こちらが用意した物資が無くては生きていけない筈の辺境で何があったのか。


 わざわざ、こんな田舎まで足を運んで、収穫なしでは、アターマ商会の副商会長として面目が立たない。


「アーゴさん、どうしますか?」


 アーゴの様子を察して、傭兵の1人が指示を仰いできた。


「……殺せ。出来るならば、あの白い塩の出所を吐かせてからな。難しいなら、苦しめてから殺せ」


「任せてください、アーゴさん。うちの傭兵団は全員鍛えに鍛えた肉体強化魔法持ちです。のほほんと暮らしたギフト持ちより役に立ちます。散々いたぶって苦しめ、塩の在りかを吐かせてから、恥ずかしい死にかたをさせてやります。こんなクソ田舎で人を殺しても問題ないでしょう。相手の特徴と名前は?」


「タダノイ・ケメン。16歳程度の餓鬼だったが、もの凄く生意気な野郎だ」


 特徴を聞いた傭兵は、それなら直ぐに見つかると言って消えて行った。


 彼らは、タダノイ・ケメンが、ランディ・ライトグラム伯爵であることを未だ知らない。



キンジ「ランディさんのクリエイトフードって完璧反則チートっすよね? 現代の調味料を完全再現させるなんて。しかも日をまたげば、ほとんど無限に出しちゃうし」


カーズ「そんな事ありませんよ、キンジ。兄さんは、本気で困っている人いないと、クリエイトフードは使いませんよ」


キンジ「本当っすか?」


カーズ「あと、楽しいときは、バカスカだしちゃいますね」


キンジ「他には?」


カーズ「あと、お気に入りの人にねだられると、出しちゃうかもしれませんねぇ」


キンジ「ほとんど、やりたい放題じゃないっすか……」

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