表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/195

【141話】闇の公園(エスクリダオ・パルキ)浄化

 思いの外、柩の数が多く、バハムアークの完全消滅に手こずっている。

 しかし、吸血鬼の特性上、1度破壊した後は割りと無力だ。

 棺から動けない吸血鬼の残された手段は、魔眼によるチャームだけど、僕くらいになると、ほとんど効かない。



 今では毎回、真剣に命乞いする始末のバハムアーク。

 気が変わらない内に、滅ぼしたいな。


「まて、本当に待ってくれ、我は食事をしていただけなんだ。人間だって生き物くらいは食べるだろ? 創造主の封印のせいで、飢えていたんだ」



 そう言われると納得してしまう。

 これは、融合前のランデイヤの深層意識のせいだろうか。


「そうだな……ランディとしては、そう言われると問題ないかな」


「ほんとか」

(た、助かった、これが最後の柩なのは、創造主の話で解っている。本当に助かった)


「だけどね、ユタの民をたくさん殺したのは、領主であるライトグラム伯爵としては、許せない。しかもやり方が卑怯だから、やっぱりランディとしても許さない」


「そんな屁理屈あるかぁ! それに毎回、魔眼のチャームパーソンを仕掛けているのになぜ効かない?」


「いや、チャームはちょっと効いてるぞ。ジックリと、ねぶるように殺そうと思ってるのに、楽に殺しちゃおっかなぁって、思ったりするし。あっ、そうだ。冥土の土産に、ためになる話をしてあげよう。お前の創造主の事は知らんが、僕を怒らせたリッチ『ディアブロス』は、もう存在していない。その意味は冥土で考えてみな。第6レベル呪文……レイズデッドLVⅡ」


「ま、まさか、我はとんでもない、化け物に喧嘩を売ったのかぁぁぁぁぁぁ…………」


 いつもは塵となって消えていたバハムアークだけど、今回は違った。


 塵の一つ一つが、輝きだして渦を巻く。

 そして、渦が1つになった時、爆発するかの様に膨張して、消えていった。




 その瞬間、いくつもの映像が頭の中を通りすぎて行った。


 バハムアークの創造主ゾルディアークが、嫌がらせで、創作吸血鬼を置いて行った事。


 地下城の誤動作で、アンデッドモンスターが溢れだし、バハムアークの意識が戻った事。


 バハムアークの復活には、強者または若者の血液を大地に吸わせる必要があり、途中まで造られていたキメラ、カマドーマを血液採集に使った事。


 当時、人口の多かったナパの町は、アンデッドモンスターが徘徊していたせいで、一足先に滅んだ事。


 そのせいで、標的がユタの町になり、東西を仲違いさせ、それに納得のいかない若者を、時間をかけて殺して、バハムアークの復活をしようとしていた事。


 そんな、記録的映像が頭の中をよぎった。




 こんな消滅の仕方は初めて見たな。


 念のため『人物捜索』をもう一度使ったが、バハムアークの反応は、なかった。


「終わったかな。とりあえず帰りますか。7日くらい費やしてしまったから、心配されるだろうな」


 この場から直接外に出るため、出口を探した。


 外に出ると、物凄い景色が僕の視界に入った。


「こ、これは!?」



 ◆

 ◇

 ◆


 ユタの町は、全体が通夜のように静まり返っていた。


 トウドウ、サイドウ、トウセン、サイセンの4人を逃がしたランディは、7日経過しても戻らなかったからだ。


 最初は『あの化け物が死ぬはずがない。おおかた迷子になっているのだろう』と、待っていたのだが、日を追う毎に、楽観した考えが消え、負の感情は町中に伝染していった。


 そんな時、ランディの両親率いる大部隊が、ユタの町に到着した。


 それだけでなく、砦にいたナパの町の子孫が数名、混じっていた。


 それは、ランディがたった2日で100年以上続いたユタの町を2分した、いざこざを解決したと聞いて、確認しに同行していたのだった。


 トウドウ、サイドウたちは、事情を説明するのだったが、ほとんどの者がランディが死んだと信じておらず、閉じ込められたか、迷子になったかのどちらかだと、真剣に取り合ってくれなかった。



 ただ、ランディを迎えに行くと、多くの人間(のうきん)たちが動きだし、100名近い捜索隊が編成された。


 捜索隊が魔の森北側に入り、最初のグールと遭遇した時、事が起こった。


 旧ナパの町がある北方から、巨大な光の柱が出現した。


 その光の柱は、どんどん光度を上げ、遠くからでも直視出来ないくらい輝いた瞬間、柱は弾け消えていった。


 その、衝撃は『魔の大森林』全体を包み込み、薄暗く瘴気すら漂っていた森の空気を一変させた。


 先程まで居たはずのグールは、姿形さえなく、今まで北側で見ることがなかった、小鳥の姿を確認する事が出来た。


「お、お、おおおおお……」

「この情景は、じいさんの、それまたじいさんの、さらにじいさんから伝え聞いていた、ナパの平和な森じゃないのか!?」

「神だ、神様が降臨なさったのか!?」


 ナパの町の子孫は、手を合わせ、膝を地に付け、涙を流しながら、感謝の意を表していた。



「こんなあり得ない現象の裏側にいる人物、俺様は1人しか思い浮かばない」

「ダナム殿、その考えは正しいと思う。ドリア殿から聞いたあの方の活躍は、人のそれを超えている」


 ランディ捜索隊に、参加していたダナムとペンタゴンが、異変の犯人を断定していた。



「これは……まさか、使徒様がついに神となったか!」

「そうだ! ランディ様だ、ランディ神様の誕生かも知れない!」

「だとしたら、早くその御尊顔を拝まなくては!」


 暴走したベルデタルの剣士たちは、後に本人からきついお仕置きを受ける事になった。


 そして、北西部の洞窟から進路を変え、ナパの町があった場所に向かった。



 ◆

 ◇

 ◆


 スゲー、スゲーよ。


 この無人の町が、綺麗な状態のまま僕の視界に写っていた。



 たぶん、たぶんだけど『ゾルディアーク』のスイッチングマジックだと思う。


 状態復帰又は、状態回帰の高度な呪文を使ったと見た。


 広々とした町に、聳え立つ中央の建物。

 なんか、気合い入れて造った学校みたいだ。


 その、周囲には2階建てや3階建ての建物が沢山、規則的に並んでいる。


 方向感覚から判断するに、ここが150年前に滅んだ町『ナパ』だろう。


 じっくり見学するのは、後回しにして先ずは、ユタに帰らなければ。


 ナパを真っ直ぐ南下すればユタの町に着くなら、ここは北側のアンデッドモンスターが、徘徊する森のはずなんだが、なんだこの心地よさは。


 まるで、新築の森林公園を思わせる、爽やかな雰囲気だ。


 ゾルディアークの奴、廃棄物を浄化することで、大森林全体を浄化する呪文を組み上げていたようだ。



 しばらく歩いていると、前方から物凄い人数の気配がしてきた。


 ユタの町にも、異変が判ったのかも知れない。


 前方の集団は、ダナムやベルデタルの剣士、ナパの人々と100人近い、大人数だった。


「領主様!? 領主様だ!!」

「じゃあ、この森の異変はやはり」


「なっ、言ったろ? ペンタゴン」

「衣服が汚れているだけで、疲れた様子が感じ取れない。さすがはランディ殿」


「ライトグラム様の嘘つき……1年でナパを取り戻すって言ってたのに、10日と少ししか経ってないじゃんか」

「きっと、わし等のために、不眠不休で頑張ってくれたに違いない。おぉランディ様」


「ベルデタルの神ランディ!」

「やはり、使徒から神へ!?」

「ゴッドランディ、ゴッドランディばんざぁい!!」


 事情が飲み込めないけど、顔見知りのベルデタルの剣士は殴っておこう。



 ……

 …………


 何とか、騒がしい奴等を黙らせて、無事にユタの町に到着した。


 色々ともみくちゃに、されたけど。


 なんとか切り抜けて、今度はナパの町解放記念で、宴会を開く事にした。


 いやがる、トウセンとサイセン、ダナム、ペンタゴン、ベルデタルの剣士、ロイエン、セナリースを引き連れ、肉を調達しに、南側の大森林に突入した。



 5匹くらい倒した辺りで、確信した事がある。


 ニクガクルガ、ミートスタンプ、リビドーモンキーまでもが、以前戦った個体より弱くなっていたのだ。


「猛獣が弱くなってる!?」

「これなら、俺やトウセンでも、単独で倒せそうだ」


「確かに、弱くなった」

「ダナム殿、クラッシャージョー以外なら、楽勝ですな」


「なんだ、聞いていた情報より弱かったなセナリース」

「旦那、俺と2人がかりでなら怪我をしなくてすみそうだな」


 トウセン、サイセン、ダナム、ペンタゴン、ロイエン、セナリースの順に食材を捕らえた感想を述べている。


 これなら、回復役がいれば、僕がわざわざ参加しなくても大丈夫そうだ。



 ◆

 ◇

 ◆



 宴会も無事に終わって、数日が過ぎ、この地方を治める方針が決まった。


 先ずは、僕の呼び方。

『伯爵』『領主』『ランディ』『ライトグラム』『使徒』と様々だから、解りやすく無理矢理統一させた。


 ユタの民は『領主』に。

 ナパの民は『伯爵』に。

 ベルデタルの剣士は『使徒』に。

 他の一部はライトグラムに、親しくなってきた人はランディと呼ばせる事にした。


 ベルデタルの剣士にも、ライトグラムでごり押ししようとしたけど、僕が根負けして『使徒』のままになった。



 そして僕の住居。

 ナパとユタ、両方に僕の拠点を構える事にした。

 今は、ユタよりに居座るとして、ある程度落ち着いたら、ナパの学校みたいな建物を拠点とするつもりだ。


 続いて、生活面。

 南側の砦に居たナパの子孫たちは、大半がナパに移住する事か決定した。


 ごく1部は、ユタの町に住み込む事になりそうだが、ユタの町は狭くゆったりと暮らすには人口が2000人程度に収めなくてならない。


 まあ、開拓すればもっと暮らせるんだけど。


 ナパの町は、出来上がっている施設だけでも1万人の人間が暮らせそうだったから。


 移民のほとんどは、ナパに住んでもらう予定だ。


 あと、エスパル南端の砦には、物資の供給窓口として、改築しなければいけないな。

 そこは、あの3人組に任せよう。



 僕はこれから、ユタの民800人、ナパの民1000人、ベルデタルの剣士100人、その他100人。

 計2000人で、エスパル発展計画を実行するのだった。


キンジ「結局バハムアークって、もの凄く強いのに、性格が小者だったんすね。おれとは違うなぁ。次回から数話ほど内政の話になります」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ