【134話】ユタ
改稿の報告です。
時間が出来次第、クレリック呪文の
『レベルサーチ』を『ランクサーチ』に、
『ディテクトイービル』を『ディテクトエネミー』
に改稿していきます。
なお『ランクサーチ』は今回の話で登場いたします。
辺りの様子を盗み聞きする限りだと、この町で一番強い戦士は、東のトウセンと西のサイセン。
どうも名前に意味がありそうで、変な感じがするが、今は忘れよう。
町長の2人をポイ捨てして、叫ぶ。
僕の目的のために、慣れない事をする。
「この2人と闘って、お前らが勝ったら、とりあえず税金2倍はなしだ。負けたら、この町丸ごと俺様の奴隷だ。いいな?」
またしても、罵声が飛び交うが、サイセンがそれをとめる。
「やめろ! こんなふざけたガキ、このサイセンが始末をつける!!」
サイセンを応援する声が凄い。
「ふんっ、貴様は引っ込んでろ。トウドウさんの仇を討つのは、このトウセンだ!」
今度は、今まで叫んでなかった町の人が『トウセン』『トウセン』と歓声をあげる。
「さて、勝敗は簡単だ。トウセンとサイセンが俺様と闘って、負けを認めたら決着だ。もちろん気絶しても負けだし、しばらく待って、立てなければ負けだ」
「おまえ、このサイセンを舐めてるのか? 以前、3人がかりで、このサイセン1人に負けたのを知らないのか?」
「ふっ、何だったらこのトウセンが、ガキとサイセンまとめて、叩き潰してもいいぞ」
「何だと!!」
黙ってると、この2人が喧嘩を始めそうだから、動くとしよう。
「舐めてなんかないよ。あの3人を、たった1人で倒したんでしょ? それがなかったら『20人まとめてかかってこい』って言ったよ。お前ら、力の差がすぐ判別出来ないから、魔獣に殺されるんじゃないの?」
「うるせぇっ!!」
「黙れぇぇっ!」
2人は素手で殴りかかってきた。
サイセンの攻撃が速い。
恐らく、人神のギフト持ちだろう。
なるべく素人っぽくよけながら、腕を掴み背負い投げをする。
その時にも気を使い、地面には叩きつけないで放り投げる。
「次は俺だぁ!」
トウセンは、細かくショートパンチをいくつも繰り出す。
ボクシングで言うジャブに近いパンチだ。
細かく刻んでくるパンチの割りに、やたらと重い衝撃が僕に伝わる。
トウセンは竜神のギフトを持っているのだろう。
今度は苦し紛れに出した脚が、トウセンを引っ掛けて、転ばせたように見せる。
「なんだ、拍子抜けだな、2人まとめてかかって来いよ」
「うるせぇっ!」
「1人で充分だぁ!」
トウセンとサイセンが攻めてくる度、あしらい、反撃して転がしたり投げたりする。
徐々に力の差を見せつけるが、相手の心を折らないように痛めつける。
「いいかげん、2人で仲良く来たらどうだ? 眠くなってきたぞ」
「まだまだぁ!」
「負けるかぁ!」
2人に罵声を浴びせながら、痛めつける。
代わりに見物している町の人から数倍のヤジが飛ぶ。
「なあ、南の農村に引っ越したらどうだ? そこなら傭兵として口利きしてやるぞ?」
痛め付けても、転ばせても、向かってくるトウセンとサイセンに声援や応援が集まり出していた。
もう少しだ。
まだまだ、折れるなよ。
だけど、まだ連携してまでは闘ってこない。
偶然、2人の攻撃が重なった瞬間、足を滑らせて大きく体勢を崩した。
「殺れー! サイセン、トウセン! ユタの底力を見せてやれ!」
「そうだ、2人であの悪徳貴族を、追い出すんだ」
「トウセン、サイセン、その調子だぁ」
やった、町の人が1つになり始めた。
「こなくそぉぉぉ!」
「どりゃぁぁぁぁ!」
いい加減、独りじゃ歯が立たないのは、理解したよな。
周囲の応援の言葉に、2人の動きに変化が出てきた。
「おっ? 今のは、まぁまぁだったか?」
手抜きがバレないように、気を使って苦戦を演じる。
だが、この程度では負けてやれない。
町民のみんなは、罵声から応援一色に変わった。
今、2人はめちゃくちゃに痛め付けたせいか、余計な事を考えず連携して、僕を攻める。
もう少しだ、もう少し。
そして、僕でも回避困難な攻撃が来た。
僕は大袈裟に吹き飛び、倒れる。
「どうだ、貴族様この一撃は? 」
「やったなトウセン」
「ああ、だがサイセンがいなかったら、かすりもしなかった」
「……」
さて、2人に仮でも友情が芽生えたら、僕の目的は完了だ。
「よっ」
体を動かす反動だけで立ち上がる。
「なっ!?」
「何だと!?」
周りも僕の動きに、静まり返る。
「うん、なかなか良い攻撃を受けたな」
「そ、そんな渾身の一撃だったぞ」
「まさか、トウセンの攻撃に合わせて飛んだ? いやそんな素振りはなかった」
「その前に1つ……」
人差し指を立てて、話を続ける。
「この戦い、トウセンとサイセンの勝ちだ。増税はとりあえずなしな」
「バカな」
「ダメージをほとんど受けてねぇだろ!」
「あれ、言わなかった? この闘いのルール『勝敗は負けを認めたら決着だ』って言ったよね? 僕は負けを認めた。納得いかないのは分かるけど、ルールだからね」
「なんで」
「負けを認めた?」
2人の言葉が上手く繋がる。
なんだ、チームワーク良いじゃん。
「初めから、いい一撃を貰ったら、負けだと決めていた。悪いけどトウセンとサイセンが巧い連携攻撃をしなければ、負けない自信はあったよ。僕の敗因はこの町が1つになった事だ」
僕の言葉に、ようやく東西の民が顔を見合せ、複雑そうな顔をしている。
そして、トウセンとサイセンが手を取り合おうとした時。
「騙されるなっ! 西側の連中は卑怯者に決まってる! でなければ、俺の妹が死ぬわけがない!!」
空気の読めない、兄ちゃんが出現した。
しかし、こいつの登場は予想済み、タイミングは予想外だったけど、対処法は練習した。
「お前は、バカなのか? この周りの状況を見て、まだ、西側の人たちが卑怯者だと言いたいのか?」
「うるさい、うるさい、うるさい! 俺は見たんだっ。 妹が西側の人間と一緒に殺されていたのをっ。こっちの人間にそんな卑怯者はいないっ。だから、西側のにんベホラッ!?」
「だから、バカなのかと聞いたんだ。昨晩から覗き見、盗み聞きを繰り返し、さらにはトウセン、サイセンと闘ってみた。貧しい以外は、いい町じゃないか。たしかお前は『トラジ』だったな?」
「なんで俺の名前を?」
ほっ、良かった。
名前、合ってた。
「そんな事はどうでもいい。町の様子を見て確信した。僕がこの町の民を殺した犯人を見つけ出す!」
最初の関門はクリアした。
次は犯人探しだ。
◇
◆
◇
「ククク……バハムアーク様の封印がもうすぐ解ける。あと1人か2人だ……待ち遠しい。贄を……早く贄を。我は求める対象の力を……ランクサーチ。ククク。愚かにもいるじゃないか、間抜けな贄が、ククク2人もいる、クハハハハハハッ!」
バカ王子「なんか寂しいな」
イケメン「そうですね」
弟子「師匠は今ごろどうしてるのでしょか」
信者「主殿は今ごろ手前の砦にとうしゃくして、東西の不仲対策をしていることでしょう」
バカ王子「それより、ランディ商会の跡地が廃墟になってんだが?」
イケメン「ええ、ランディ商会の従業員で他の貴族にや商会に買収された人々は、たいして使えなかったみたいですから」
弟子「話が違うと、暴動が起きたようです」
信者「有能な従業員、みんな、一緒に引っ越した」




