【129話】ランディ、復讐の機会を得る
そうだ、この違和感の正体は、普段戦闘中に感じるものに近い。
まさか、この日を狙ってくるとは、完全にしてやられた。
手遅れに、なっていなければいいけど。
独り先に走っていると、人の気配を感じた。
それは、ベルデタルの剣士団と傭兵っぽいのが、争っていた。
「使徒様!?」
「使徒ランディ様!」
「!? 今だっ、逃げろっ!」
僕がやって来たせいで、ベルデタル剣士の動きが止まり、代わりに賊2人が僕めがけてやって来た。
人質にでもするつもりかな?
「第2レベル呪文……オグルパワー」
この付近での僕は、そこそこ有名だ。
ここが子爵邸である事を知って襲えるとは、相手は手練れで、なおかつバックに伯爵以上の存在が控えていると見た。
だから、少年と油断して突っ込んでくる、手練れの賊に容赦しないで、攻撃した。
……
…………
騙された。
いくら本気で攻撃したからって、一撃死するとは思わなかった。
もう1人は、うまく生かして捕らえる事が出来た。
「流石は使徒様」
「いくらホネがあると言っても、所詮ただの賊……ランディ様の前ではゴミ同然ですな」
「だれか、この状況を説明できる人いる?」
ベルデタルの剣士たちの表情がとたんに引き締まる。
何か、怒られると勘違いしているのかな。
「はっ、私は後から来たので、冒頭の出来事はわかりませんが、約20名の賊が突如、ランディ様の住まう邸宅に侵入。殆どの者を返り討ちにしたのですが……」
「ですが?」
ちょっぴり嫌な予感がするんだけど……
「賊がかなりの手練れ揃いで、妹君のアリサ様が……」
この言葉を聞いた瞬間、生き残りの股間を踏み潰して、神速をつかい、屋敷に入った。
だから、剣士の話の続きを聞き洩らした。
◆
◇
◆
時は少し遡り、ランディ不在のライトグラム邸は、レジーナクッキングの試食会となっていた。
「ぼっちゃまに『パーティの食事より、レジーナの料理の方が断然旨いわね。結婚してくれ』と言わせますわ。さあ、これを食べて改良点を洗い出しましょう」
「ふう、しょうがないなぁお母さんは……まぁ、ランディが喜ぶなら手伝ってあげるけど、何でも食べるわりには、舌が肥えてるからねぇ」
「ボンは、塩焼きが大好物だが、貴族でも滅多に食べないようなモンを次々と持ってくる。アレに勝てるのか?」
レジーナ、アリサ、セナリースの順に語っている、食堂には、ダナム、ドロワット、ゴーシュと、ベルデタルの剣士5名を招待して、会食していた。
その時『キャァァァァァ!!』
使用人の悲鳴が聞こえた。
悲鳴がしたその数秒後、食堂の扉が蹴破られ、15人の賊が侵入して襲ってきた。
レジーナ側にも、11人いるとはいえ、丸腰の状態で手練れの賊を相手にしなければならない。
目に見えて不利な状況だった。
「男は殺せ、女は情報を聞き出してからだ。こちらの証拠は残すな」
賊は号令に頷いて、分散して襲いかかってきた。
「はぁぁっ!!」
賊の一番密集している場所に大きなテーブルが投げ込まれた。
竜神の加護を持つダナムが、肉体強化魔法を全開にして大テーブルを思いきり投げつけた。
ドロワットとゴーシュの実力は、アルカディアの騎士で計ると、王宮騎士の上位に位置する強さを持っている。
フォークを持って、倍する数の賊を圧倒していた。
「えい、えい、えいっ」
「えっ? 母さん!?」
剣を装備していない、ベルデタルの剣士達は、ちょっと強いオッサン程度だ。
殺られるのも、時間の問題かと思われるが、レジーナの飛ぶ生活魔法が、邪魔をする。
レジーナは種火を相手の目の前に発火させて、怯ませたり、鼻や耳に水を発生させて、バランスを崩していた。
「お母さん……何それ?」
「ふふっ、ぼっちゃま仕込みの護身術よ。少量の火種や水でも効果があるのよ」
アリサは生活魔法を護身術に使う事と、突然襲ってきた賊を冷静に対処していた事に、驚くより呆れた。
この、人数で圧倒しきれない賊は、戦法を変えた。
「ここは、もういい。1人も生かすな!」
賊はレジーナに向かって、剣を振りかぶった。
「キャア」
「お母さんっ!」
ザシュ!
◇
◆
◇
屋敷の中に入り、人の気配がたくさんする場所に向かった。
そこには、血塗れのアリサがいた。
そう、他人の返り血でまみれていたアリサが立っていた。
「あっ、ランディお帰り。いま大変な事になってるから、事後処理よろしく」
あれ? どういうこと?
「セナリース、状況は? どうなってんの?」
アリサの近くにセナリースもいたから、聞いてみた。
「ボン、アリサといい、レジーナといい何しやがったんだ?」
逆に聞かれてしまった。
巨乳のレジーナには痴漢対策として『目』『鼻』『耳』に火や水を出すといいと教えていた。
アリサはレジーナを庇った直後、本気を出して『ゴールデンタイム』を発動した。
ゴールデンタイムとは、限界を超える肉体強化魔法とヒーリングを重ね掛けする技で、雑魚なら圧倒出来るくらいに強くなる戦法だ。
使用人達は、後で拷問して色々聞き出すつもりだったのか、全員怪我をしていたが、生きていた。
ドロワットとゴーシュが強すぎて敵を倒すたびに、剣が手に入り、ベルデタルの剣士も、敵の剣を使って反撃してからは圧倒的だったらしい。
「なあ、ボン。アリサでアレなら、ここで一番弱いのは、オレとダンナじゃねぇのか?」
それは、言いすぎだと思うが。
「さて、賊の正体を調べないとね」
「……それなら、判ってる」
さっきから大人しかったダナムが、話してきた。
「捕らえた賊の殆どは、口を割らずに自害したが、死んだやつの中に、知ってる顔があった」
なにっ!?
ダナムがその続きを話す。
「3人ほどマツヤ家専属の傭兵がいた。犯人はオヤジだ」
ガン!
床を叩きつけるダナム。
僕はパーティ会場のでの出来事を思い出した。
そうか、プリウス伯爵か……
ふっ、ふふふ。
我慢していたのに、こんな機会を作ってくれるなんて、転生してからは大人しくしていたけど、善悪で分けるなら、僕は極悪だぞ。
そんな僕に喧嘩を売って、生きていけると思うなよプリウス。
「ダナム、ありがとう。お前はここで休んでいろ。セナリースとアリサも待機な。犯人の正体は判明している。ドロワット、ゴーシュ、ベルデタルの剣士達よ参加は自由だ。これから反撃に出る……敵はプリウス伯爵とマツヤ男爵。貴族と知ってついてきてくれるものはいるか!」
僕独りでも行くけど、一応聞いてみた。
「ドリア様がいない今は」
「我々が、ランディ様の剣」
おおっ、喋った!?
普通に話せるじゃんか。
「おおっぉぉぉぉ!! 殺るぞ!! 使徒様に刃を、向けたんだ。敵は全員死刑!!」
「使徒ランディ様の敵だ、命なんて惜しんでいる馬鹿者はおるまいな?」
「当たり前だ。使徒様の役にたてる!」
「修業の成果を見せてやりましょうぞ!」
ベルデタルの剣士が、全員集合してなくて良かった。
100人近くいるからな。
「ランディ、待ってくれ」
ダナムが僕を呼び止めた。
ベルデタルの剣士「賊が、かなりの手練れで、妹君のアリサ様が…………本気を出されました。あれ?」
レジーナ「アリサ、あなた変態だったの? 血塗れで笑いながら敵を倒してたわよね?」
アリサ「……お母さんに変態で語られたくない」




