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【本編完結】食に固執する腹黒令嬢は、愛されても気付かない  作者: いか人参
番外編

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【バレンタイン特別編】チョコな話①


「クリスタ様、セレナ様がお見えになっていますよ。」


「え、師匠がっ!?」


学園から帰宅後、ハンナにセレナの来訪を伝えられたクリスタは一直線に客間に向かおうとしたが、制服姿の自分を思い出して足を止めた。



「おっと…こんな格好で出向いたらなんて何を言われるか…」


慌てて自室へと戻り、失礼にも嫌味にもならない程度のワンピースに着替える。

先日、フランツから贈られた王都で今流行りのデザインのものだ。


無い襟を正すと淑女の佇まいでセレナの元に姿を現したクリスタ。

相変わらず黙って動くだけなら完璧な美少女の貴族令嬢である。その姿は男女問わず惹きつけ儚げな魅力で溢れていた。




「師匠、ご無沙汰しておりますわ。」


部屋に入るなり、カーテシーで優雅に挨拶をしたクリスタ。

彼女の可愛らしい雰囲気といつもの師匠呼びは似ても似つかないほどの違和感であったが、もう是正出来ないと諦めたセレナは目を瞑ることにしていた。



「クリスタ様」


怒気を孕んだ機嫌の悪い声音に、クリスタが思わず身構える。


怖いもの知らずの彼女であったが、セレナとの特訓の日々はまだまだ記憶に新しく、彼女に対する畏怖が消えない。

クリスタの中で絶対的な強者として君臨するセレナに対してはどうしても強く出られないのだ。



「な、なんでございましょう…」


「結婚なさったからといって、愛される努力を怠ってはございませんか?まさかとは思いますが、相手の優しさにつけ込み、自身の願い事ばかりねだってはいませんか?そんな女、すぐに愛想を尽かされて捨てられますわよ。」


「そんなことは、」


…………いや、あるな。フランツのこと、願い事叶えてくれるマシーンの如く使っていた、かも。え…これってかなりマズイんじゃ…この世界でバツイチとか絶対にあり得ない。フランツに捨てられたら私の人生は完全に詰む。

それこそ、修道院に行くしかなくなる。あんな場所、水と硬いパンしか与えられないよ…それだけは無理。ひもじい思いをするのはもう絶対にいやっ!!美味しいものがない世界でなんて生きてたまるかっ!!




「し、師匠っ!!私はどうしたら良いでしょうか?」


自身の現状を正しく認識したクリスタは、軽々しくテーブルの上を飛び越えると、ソファーに座るセレナの足元に縋り付いた。


淑女以前に、この歳の人間としてどうかと思う振る舞いであったが、セレナは女神のような微笑みで彼女のことを寛容に受け入れた。



「ご安心なさって、クリスタ様。本日はそのために参りましたのよ。この時期、極東にある国では好いた男性にカカオ豆を使った手作りのお菓子を贈る慣習がありましてね、今ちょうど王都でも流行り始めたところですの。きっとクリスタ様からプレゼントされたら、喜ぶこと間違いなしですわ。お相手を喜ばせれば喜ばせるほどクリスタ様への愛は一層深くなり、お財布の紐と緩むというものです。」


「ぜ、ぜひ、そのやり方をわたくしにもお与え下さいませっ!!」


「もちろんですわ。これであのフランツ様を虜にして差し上げなさい。さぁ、始めますわよ。」


両手を広げて教祖のように大仰な笑みを浮かべるセレナと、それを請うような瞳で見つめ返すクリスタ。

怪しい雰囲気の二人に、お茶を淹れにきたハンナは見ないふりをして足早に退出していった。




***




翌日、セレナ監修クリスタ作のトリュフを小さな赤い箱に詰めその上から淡いピンクのリボンを掛けたものをそっと鞄に忍ばせた。


セレナが買ってきたチョコを溶かしてミルクを加えて固めるという至極簡単なものであったが、そこに一滴だけブランデーを垂らしたセレナの自信はかなりのものであった。



『カカオを媚薬の材料とも言われており、それに加えて気分を高揚させるアルコールも入っていますから効果は抜群ですわ!』


そう言って自信満々のセレナから渡された箱。

そして、自分が今手にしているそれをじっと疑いの目で見つめるクリスタ。



ほんとかなぁ…本当にこんなのを渡しただけでフランツに効果あるのかな?そもそも、甘いもの食べていたイメージもないんだけど…というかこれ、いつ渡したら良いんだろう。。。。朝の馬車の中ではそんなタイミングはなくて、かといってここだと人の目もあるから余計に渡しにくいっ!!


もうっ。ちゃっちゃと渡して早く効果を知りたいのに…こんなことなら、渡し方までちゃんと師匠に聞いておくんだった…




「クリスタ、どうかしたか?」


気付いたら自分の席の目の前にフランツが立っていた。

相変わらず、クリスタの一挙一動に不安そうに瞳を揺らしている。



「あ、えっとその…今日のランチは何にしようかなって考え事をしていましたの。ふふふ。」


「本当に俺の妻は可愛い人だな。…だが、嘘はよく無い。何か俺に隠しているだろう?」


フランツは、クリスタの頬をするりと人撫でした。

気遣わしげに見つめてくるその瞳はやけに熱っぽく、彼女しか映していない。

クリスタに視線を固定したまま、フランツは箱を掴んでいた彼女の手に触れる。



「これと何か関係でも?」


フランツにしては珍しく、ほんの僅かに苛立ちを含んだ声音であった。

懸命に今抱いている感情を押し殺したつもりだったが、消しきれなかった己の不甲斐なさについため息が漏れ出る。



「フランツ?」


普段と違う彼の姿に、今度はクリスタが不安そうな瞳で見返した。



「悪い。ちょっと二人きりになりたい。」


「え?」


余裕のない顔をしたフランツは、クリスタの意思を確認することなく彼女の細い手首を力強く掴んだ。




彼に手を引っ張られるまま辿り着いたのは、人気のないカフェテリアへと続く渡り廊下であった。まだ朝のこの時間帯、この場所を訪れる者はいない。

誰もいない二人だけの廊下で、フランツはクリスタに詰め寄る。



「ちょ、ちょっと!フランツ??いきなり、どうして…」


壁際まで追い込んだクリスタに、鼻先がくっつきそうになるほど顔を近づけてきた。彼女の顔のすぐそばに手をつき、逃げられないように囲ってくる。


動揺して焦った声を出すクリスタだったが、彼の反応はない。

フランツは黙ったまま無表情にクリスタのことを見下ろす。



「好きな奴でも出来たのか?」


これまでに聞いたことのない、低く冷え切った声音で尋ねてきたフランツ。

感情の読めない無機質な瞳を向けてくる目の前の彼は、クリスタが良く知る彼とは全くの別人であった。


見たことのない彼の姿に、クリスタは思わず息を呑んだ。



バレンタインデーなので甘い番外編をと思ったらなんだか雲行きが怪しいです(・_・;

長くなってしまったので、前編後編に分かれます!

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