【番外編2】
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
これは、ソーちゃんがまだ「卵」だった頃。
母である私、蒼銀竜フブキの視点で語られる、運命の日の記録だ。
◇
霊峰の頂、神々の住まう神殿。
ここには、偉大なる山の神と、その眷属たちが暮らしている。
私、フブキもその一柱だ。
かつて世界を救い、魔神すら退けた伝説の英雄――それが、我が主「山の神」の正体である。
しかし、平和になった今の彼女は……。
「あー、だーるい。マジだっる。育成ゲーってまじレベル上げるのちょーだるーい」
ジャージ姿で寝転がり、ポテチ(うすしお味)を貪りながらゲームに興じる、ただの「干物神」に成り下がっていた。
そんなある日のこと。
私は主に、大切な報告をした。
『主よ。私のお腹に、新しい命が宿りました』
「んー? お、マジ? 誰の子?」
主はゲーム画面から目を離さずに言った。
『同郷の竜との間に』
「竜? ってあんた狐じゃん……あ、変身できるんだっけ。メタ●ンじゃんね」
主は適当なことを言うが、仕方ないのだ。
同種は少ないし、それに、愛した男が竜だったのもある。
『……次代を担う、立派な竜に育て上げねばなりません』
「そっかー。大変だねぇ育児」
主はニカッと笑い、恐ろしい提案をしてきた。
「私が手伝ってやろっか? 英才教育してやるよ。『働いたら負け』っていう真理と、効率的なレベル上げ(寄生)の方法を」
ゾッとした。
私の脳裏に、こたつに入って一日中ネット掲示板を荒らすニートドラゴンの姿が浮かぶ。
『……いえ!!』
私は食い気味に叫んだ。
『お気遣いなく! 旦那と二人で頑張ります! 立派な、社会の役に立つ竜にしますので!』
「えー。信用ないなー。ちぇっ」
危ないところだった。
我が子は絶対に、この「駄女神」の影響を受けさせてはならない。
そう、固く誓ったはずだった。
◇
そして、数ヶ月後。
私は蒼銀竜山の山頂にいた。
『うぐっ……! あぁ……!』
激痛が走る。
予定よりも早い産卵だ。
旦那は遠くへ狩りに出かけていて不在。
しかも……難産だった。
『で、出ない……! 卵が……詰まって……!』
脂汗が流れる。
意識が遠のく。
魔力も尽きかけていた。
このままでは、私も、お腹の子も……。
『誰か……助けて……』
薄れゆく意識の中で祈る。
だが、こんな深山に人が来るはずがない。
絶望しかけた、その時だった。
ガサガサッ!
ブォォォォン……!
奇妙な駆動音と共に、草むらをかき分けて「鉄の箱」が現れた。
そこから、一人の人間の女が降りてくる。
黒髪の、目つきの悪い女だ。
『な、なぜ……こんなところに人間が……?』
あり得ない。
ここは人間が立ち入るような場所ではない。
あまりに都合が良すぎる。
まるで、最初から私がここにいると知っていたかのように――。
(……あの方か)
私は悟った。
あの自堕落な主。
普段はサボってばかりだが、腐っても「元・英雄」であり「神」だ。
私の危機を察知し、因果を捻じ曲げて、この人間をここへ誘導したに違いない。
面倒くさいから自分では来ずに、代理を寄越したのだ。
「うわっ、デカっ! ドラゴン!?」
女――スミコは私を見て驚いたが、すぐに私の異変に気づいたようだ。
「……苦しそうだな。まさか、産まれるのか?」
『た、助け……て……』
「ったく、しょうがねぇな! キャンピー、緊急オペだ!」
スミコはテキパキと動き出した。
見たこともない道具を取り出し、私のお腹に手を当てる。
「逆子……じゃないな、卵が引っかかってる。帝王切開するぞ!」
『て、ていおう……?』
何をされるのか分からない。
刃物を向けられる恐怖。
だが、不思議と嫌な予感はしなかった。
この女の目は、真剣そのものだったからだ。
(大丈夫……少なくとも、あのニート神に任せるよりは、マシなはず……)
私はスミコに全てを委ね、意識を手放した。
◇
『……はっ』
私が目を覚ますと、そこは夕暮れの森だった。
体の痛みは引いている。
傷口もきれいに塞がっていた。
「お、気がついた?」
焚き火のそばで、スミコが汗を拭っていた。
そして、その手には――。
白く輝く、大きな卵が抱えられていた。
「無事よ。元気な卵だ」
『あぁ……』
よかった。
産まれたのだ。
スミコは愛おしそうに卵を撫で、タオルで汚れを拭き取っている。
その顔は、先程までの悪人面が嘘のように、慈愛に満ちていた。
(……いい顔をする)
私は確信した。
この女なら、任せられる。
あの山の神に預ければ、間違いなく「引きこもりドラゴン」になるだろう。
だが、この女なら――きっと、たくましく、生きる力を持った子に育ててくれるはずだ。
――こうして、我が子はスミコの元へ預けられた。
後に「ソーちゃん」と名付けられ、パンケーキを頬張る姿を見ることになるのは、もう少し先の話である。
【おしらせ】
※2/2(月)
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