【番外編】
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
これは、まだテンコがスミコと出会う前。
彼女がまだ「小さき狐」だった頃の、少し昔の物語。
◇
極寒の霊峰。
一年中、吹雪が吹き荒れる神域の奥深く。
そこに、一人の「神」が住んでいた。
見た目は、透き通るような肌を持つ人間の女性。
だが、その左右には、山のように巨大な銀狼『フェンリル』と、空を覆うほどの巨体を誇る『蒼銀竜フブキ』を従えている。
この山を統べる、絶対的な上位存在だ。
ある雪の日。
散歩をしていた山の神は、雪原に埋もれる「白い毛玉」を見つけた。
「あー、なんか落ちてる」
神は足を止めた。
隣のフェンリルが、ふんふんと鼻を鳴らす。
『主よ、狐の幼体のようです。親とはぐれたのでしょう』
「ふーん。……ま、拾っとくか。フェルマァ、くわえて」
『御意』
神は軽いノリで言った。
威厳も慈悲深さもない。まるでコンビニで落とし物を拾うような感覚で、その毛玉――幼き日のテンコを拾い上げた。
それが、全ての始まりだった。
◇
拾われた子狐は、神域ですくすくと育った。
神気あふれる環境と、神様が与える極上の料理。
それらを食べて育ったテンコは、メキメキと頭角を現した。
主に、「胃袋」の頭角を。
「……ねえ、テンコ」
だいたい100年後。
山の神は、げっそりとした顔でテンコを見ていた。
目の前には、巨大な猪(の骨)が転がっている。
さっきまで、丸焼きだったはずのものだ。
『おかわりです! 師匠、足りませぬ!』
少し大きくなったテンコが、つぶらな瞳で尻尾を振っている。
可愛い。
可愛いが、その足元には、フェンリルとフブキが食べるはずだった一週間分の食料の残骸が散らばっていた。
「あんたさぁ……。さっき食べたじゃん。私の晩酌用の干し肉も食べたじゃん」
『育ち盛りゆえ!』
「いや、育ちすぎでしょ。100年食い続けてまだ育ち盛り? フェンリルより食ってるよ?」
神は頭を抱えた。
この神域の食料事情は、決して無限ではない。
狩れる獲物にも限りがあるし、冬越しのための備蓄も必要だ。
しかし、テンコが来てからというもの、貯蔵庫の減りが異常だった。
エンゲル係数が爆発している。
このままでは、神である自分が、まさかの餓死という笑えない最期を迎えるかもしれない。
(……やばい。このままじゃ私が干からびる)
神は危機感を抱いた。
そして、ある決断を下した。
◇
翌日。
神は、神殿の広間にテンコを呼び出した。
背後には、どこかホッとした顔のフェンリルと蒼銀竜フブキが控えている。
「テンコ。座んなさい」
『はっ!』
テンコはピシッと正座した。
その目はキラキラと輝いている。
ついに師匠から、究極奥義を授けられる時が来たのかと期待しているのだ。
神はコホン、と咳払いをして、重々しく告げた。
「あんたも、そろそろ独り立ちしなさい」
『……えっ?』
テンコの耳がペタリと垂れた。
「世界は広い。こんな雪山に100年も引きこもってないで、ここより広い世界を見てくるのよ」
『し、師匠……! 私はまだ若輩者! まだ学びたいことが山ほどあります!』
テンコが縋り付く。
食いっぱぐれる……じゃなかった、師匠と離れるのが寂しいのだ。
『もしや、これは……私への「試練」なのですね!? 外の世界で修行し、より立派な神獣になって戻ってこいという!』
テンコが勝手にポジティブな解釈を始めた。
神は一瞬、「あ、うん、それでいいや」という顔をして、大きく頷いた。
「そう! 試練! これは偉大なる試練だから! 今すぐ行け!」
『し、師匠ぉぉぉ……!』
テンコは感涙にむせび泣いている。
そんな愛弟子に、神は早口で付け加えた。
「いや、勘違いしないでね? これは決して、あんたがいると食費がヤバいとか、私の隠しお菓子まで食い尽くされそうだから追い出すとか、そーゆーんじゃあないからね? マジだからね?」
目が泳ぎまくっていた。
完全に「食費削減」のためのリストラだった。
しかし、純粋なテンコは気づかない。
『わかりました……! 私、必ずや立派な神獣となり、ここへ戻ってまいります!』
「うんうん。戻ってこなくていいからね。達者でな」
『行ってまいります!』
テンコは涙を拭い、決意を胸に雪山を駆け下りていった。
見送る神と二匹の獣は、深く安堵の息を吐いたという。
「ふぅ……これで今年の冬は越せるな……」と。
◇
そして、下界に降りてからしばらくが経過した。
意気揚々と山を降りたテンコだったが、現実は厳しかった。
『お腹……すきました……』
しばらくは一人で頑張っていたのだが、ついに行き倒れかけていた。
下界の魔物は不味いし、人間たちの食べ物は量が少ない。
空腹でフラフラになりながら、森を彷徨うこと数日。
その時だった。
フワァ……。
風に乗って、とんでもない匂いが漂ってきた。
スパイスの刺激。
肉の焼ける暴力的な旨味。
野菜の甘い香り。
それは、テンコの神獣としての本能をダイレクトに殴りつける「運命の匂い」だった。
『クンクン……! こ、この匂いは……!?』
テンコの目がカッと見開かれた。
ヨダレが滝のように溢れ出る。
『そこに……そこに私の「主」がいる気がします! ご飯的な意味で!』
テンコは大地を蹴った。
空腹も忘れ、猛ダッシュで匂いの元へと向かう。
その先で、変な鉄の箱の前に座り、カレーを煮込んでいる一人の「悪役顔の聖女」と出会うのは、ほんの数分後のことである。
【おしらせ】
※1/30(金)
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『奈落の【魔法杖職人】が、自分の作る杖は神話級魔道具だと気付くまで~「魔力ゼロの役立たず」と森に捨てられた元聖女、廃工房で物作りしてたら、いつの間にか世界中の英雄から神職人として崇拝されてた~』
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