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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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09.キャンピングカーが美少女に進化した!?


 私たちは朝食後のコーヒーを飲んでいる。


「そーいや、街まであとどれくらいなんです?」


 私はリダケンさんに問うてみる。

 

「もうちょっとですよ。森を抜けましたし。こっから馬車で1時間なので……もっと速くつくかと」


「あ、そうなんだ」


「はい……ぐす……」


 リダケンさん含めた、【黄昏の竜】 (パーティ名) の面々が涙ぐむ。


「ど、どうしたんですか……?」


「いや……ほんとうに、スミさんに出会えて、幸運でした」


「はぁ……幸運?」


「はい、おれら、森で迷子になって、食糧も尽きてて、もう駄目だ……森で魔物に食われて死ぬんだ……って覚悟していたんです」


 たしかに、リダケンさん達、出会ったときヘロヘロだった。

 かなり極限状態だったみたいだ。


「貴女はおれたちにとって、まさに救世主でした。ここまで運んでくれたこともそうですし、毎食美味しい食事まで……。本当に、感謝してもしきれません」


「そりゃあどうも」


 彼らを助けたのは、お金のためってのもあるけど、半分くらいは善意だ。

 自分が困ってるとき、誰かに助けてもらいたいもんね。


「やっと森を抜けられる……」


「もう森はこりごりだ……」


「でもスミさんのあの馬車に乗れるなら、野営も悪くないよねー」


「ああ、あの馬車は寝心地最高だからなぁ~……」


 【黄昏の竜】の皆が、我が相棒キャンピーを褒める。ふふん、そうでしょう。最高でしょう?


「…………」


 振り返ると、キャンピーが無言でたたずんでいる。

 私は……なんだかキャンピーが寂しそうにしているように、見えた。


「ちょっと失礼」


 私は立ち上がり、相棒のもとへ向かう。

 フロントガラスをなでてあげる。


「そう、寂しそうな顔しないの」


 なーんて、キャンピーがしゃべるわけ無いんだけども。

 でも……そうかぁ。


「君とはしばらくお別れか」


 キャンピーこと、野外活動車キャンピングカーは、野外でのみ使用可能。

 これから街に入る。つまり……キャンピーは使用できなくなる。会えなくなるのだ。


 どれくらい街にとどまってるかしらない。

 まあそこまで長居はしないつもりだ。けど……。


 私が街で買い物やら何やらしてる間、キャンピーがひとりぼっちなのは……なんかかわいそうである。


「どうにかできないもんかね……」


 どうにかこうにか……。キャンピーに何か新しい……。

 って、そうだ。


「ステータス」


 私は自分のステータスを開く。そして、発見する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

CP:5000

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「これだっ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【名称】CPキャンピング・ポイント

【効果】使用することで、野外活動車キャンピングカーに新しい機能・スキルを搭載できる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 前にちらっ、と見たのだ。CP。

 キャンピーに新しい機能を搭載できる。これに、町中でもどうにか使えるようになる、的機能があるかもしれない。


 CPをタップ。

 すると、半透明な板の上に……ずらずら、と新機能が並ぶ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【壁面走行】【飛行】【サイズ縮小】【マックス500Km】【燃費向上】……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 いろんな新機能がついてる。


「サイズ縮小、いいじゃあない?」


 手のひらキャンピー。これならポケットに入れて持ち運べるかも……。


 いや、待て。そもそも野外活動車キャンピングカーが町中じゃあ使えないし……サイズを変えても意味ないか……。


「うーん……何かいいもの……ん?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

変形トランス・フォーム

→人に成れる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 いや、いやいやいやいや。


変形トランス・フォームって……! あれか、トランスフォ○マーか? オプティマ○プライム的なことができるってか?」


 でも、人に変形トランス・フォームできたとしても、やっぱ野外活動車キャンピングカーなら中に入れないんじゃ……。

 いやでも、人に成るって書いてあるし。野外活動車キャンピングカーじゃあなくなるなら……入れる……か?


「消費CPは……うわ、5000ポイントか!」


 そんな……。


「ちょーラッキーじゃんっ」


 ならもう躊躇いませんよ。これは何か運命的なものだね。

 私は野外活動車キャンピングカーに、新機能、変形トランス・フォームを組み込むことにした。


変形トランス・フォーム! キャンピー!」


 カッ……! と我が愛しのキャンピーが光り輝く。

 うぃーん、がっちょんがっちょん、といろんなパーツが折りたたんだり縮んだりして……。


「…………」


「わぁーお……なんて可愛い女の子……」


 そこに居たのは、10代くらいの、美少女だ。

 身長は低め。小学校低学年くらいの外見だ。


 ふわふわの金髪。蜂蜜色の、まんまるおめめ。


 ……なぜかメイド服を着て、耳の部分にはヘッドホン? のようなパーツがくっついてる。

 よくロボットメイドがつけてるようなやつだ。


「無骨なキャンピングカーがあらふしぎ、ロリロボメイドへ変形トランス・フォームしたよってか」


「…………」


 ロリロボもとい、キャンピーがたたずんでいる。

 人に成るって書いてあったとおり、本当に人の形にはなった。


 でも……さっきから一言も発していないのが気になる。


「もしかして……見た目だけ変わるだけ……なのかな……」


 だとしたらちょっと寂しいわ。

 私はキャンピーに近付いてみる。ほっぺたをつつく。おお、柔らかい。


「…………」


 てれっ。

 あ、あれ……? 頬を赤らめた……?


「もしかして……君、私の言ってること、わかる?」


「…………」


 こくん。

 やっぱし!

 人に成るってことは、見た目が変わるだけじゃあないんだ。

 ちゃんと、一人の人格が宿るってことなんだ!


「わぁ、キャンピー。初めて君とちゃんと会話できるね」


 私はしゃがみ込んで、キャンピーに話しかける。


「改めて、私は乗鞍のりくら 澄子すみこ。いつも君のおかげで助かってるよ。ありがと、キャンピー」


「…………」


 えへへっ。

 キャンピーがハニカンでいる。やだ可愛い。


「ぎゅーっとしても?」


「…………」


 こくこくっ。

 許可が出たので、キャンピーを抱っこしてみる。

 うぉ、やわっこい……。ロリロボメイドなのに、柔らかいぞ……!


 って、そうだ。


「ごめんね」


「…………?」


「勝手に、変形トランス・フォーム機能つけちゃってさ」


「…………」


「これから街に入るからさ、君をひとりぼっちにするわけにはいかなかったんだ」


 だから機能を付けたのである。


「私の身勝手な判断を許してくれる?」


「…………」


 こくんっ。


「ありがとう」


 ふふ……それにしても、キャンピーと会話できる日がくるなんて。

 いやぁ、さすが剣と魔法のファンタジー世界。


 魔法って何でもありなんですなぁ~。


「す、スミさん……?」


 振り返ると、リダケンさん達が、こっちに来ていた。


「馬車が……なんか、人に変わったようにみえたんですけど……」


「…………」


 やっば……どうしよう。いや、うん。そうだ!


「て、帝国式の最新馬車は、魔法で人に変形トランス・フォームできるんですよ!」


 困ったときの帝国。


「ほ、ほら変身の魔法ってあるじゃあない? あれ、それ! ね、キャンピー!」


「…………?」


 え、って顔しないの。可愛いけど。


「「「「…………」」」」


 う……! みんなが私に疑いの目を向けてきている!

 さすがに苦しい言い訳だったかな……。


「なるほどー……」


 とリダケンさんが言う。


「いやぁ、帝国の馬車はすごいですねえ!」


 っしゃ! 通った! ごね得、ごね得! ごねてないけどっ。


「え、でもリーダー……」


「帝国の馬車は凄い! それでいいだろう、みんな?」


 はっ、となんかみんな何か察したような顔に成ると、こくこくとうなずく。


 ふぅ……ごまかせた。さすが帝国。なんでも通るな。


 ……こうして、可愛い相棒が、もっともっと可愛い姿を、手に入れたのだった。

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リダケンさん、空気を読める気配りの達人。そこに痺れる憧れる!
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