08.キャンピングカーの規格外っぷりに驚く冒険者さん
冒険者リダケンさんたち一行に、食事を提供した (代金はきちんともらうことを約束してる) 。
翌朝、私はパッチリと目を覚ます。
「ふぁー……よくねたぁ~……」
えー、ここで私の居る場所をご説明しましょう。
私が居るのはどこのご家庭にでもある、キャンピングカー。
そしてどこのキャンピングカーにも搭載されている、【2階部分】です。
……。
…………。
………………うん。
何を言ってるのかわからないだろう。
キャンピングカーの2階って何って……。
私にもわからん (真顔) 。
経緯を説明しよう。
リダケンさんたちは、カレーを食べた後、すぐに倒れてしまったのだ。
緊張の糸が切れてしまったのだろう。彼らには、毛布を提供し、床でねむってもらうことにした。
で、問題は私がどこで寝るか、だ。
さすがに男の人がいるところで、私も一緒に寝るのは躊躇われた。
どこで寝ようかなと、愛しのキャンピーの中を探していたところ……。
天井に、謎の蓋を発見。
蓋を開けると、なんと2階へ続く階段が、折りたたまれて入っていたのだ。
階段を上ると、そこにはもう一部屋あった。でっかいベッドのお部屋で、ちょうど寝室っぽい感じだった。
……もう、訳わからん!
キャンピングカーに2階ってなに!? この空間はなんなのっ?
答えてキャンピー!
……はい、私の相棒が答えてくれることはありませんね。生き物じゃあないですからね。
まあ、キャンピーこと、野外活動車内は異空間になっているって書いてあった。
だから通常ではあり得ない、内部構造にすることも可能なんだろう (どう見てもこのキャンピングカーに2階部分なんて、外から見てあるように見えない) 。
私は2階部分で寝た。いろいろあって疲れたし、爆睡しましたわ。
で、今に至るわけ。
「…………コーヒーでも飲も」
私は朝起きると必ずコーヒーを飲む。それは、大学生くらいの時からのくせだ。
私は静かに2階部分から1階部分へと降りる。
リダケンさん達はまだ毛布にくるまってねむっていた。
……私が調理してたら、その音で彼らを起こしてしまうな。
私はキャンプ用品を棚から取り出して、キャンピーの外に出る。
「んー……良い朝」
ぱっと見た感じ、周りに魔物は居なかった。
昨日は大灰狼だの、黒猪だのと、魔物が沢山襲ってきたのにね。
なぜだか、今朝は魔物の姿が見えなかった。
「妙に静かだね、キャンピー」
おっと、またキャンピングカーに話しかけてしまった。
まあでも、この世界において私とキャンピーだけが同郷だからね。仲間意識から、こうして話しかけちゃうわけだ。
あーあ、キャンピーが話せたらなぁ。
まあ、便利すぎるチートキャンピングカーだけど、さすがに話す機能はくっついてないか。さすがにさすがに。
さて。
私はキャンプ用の折りたたみ椅子とテーブルを広げる。
「コーヒーの準備っと。じゃん、小型バーナー&鍋」
ホムセンで買ったキャンプ用品を取り出す。
水道水を鍋になみなみ注ぐ。そんで、バーナーであぶる。
その間に、コーヒーミル&豆を取り出す。
「ゴリゴリっと」
豆をひいて、マグカップの上にセット。ちょうどお湯ができたので、中に入れる。
ぽたぽた……と液体がカップに満たされる。
「どれ……ずずず……うん、うまい」
現実世界で散々のんだコーヒーだ。味は大して変わらないはず。
だのに……なんだかとっても美味しかった。
早朝の森の中ってシチュエーションだからかも。マイナスイオン的なものがでているから……みたいな。なんてね。
「おはようございます……スミさん」
「あ、リダケンさん。おはよございます」
朝っぱらから、リダケンさんはバッチリ鎧を着込んで、抜き身の剣まで持っていた。
……今更だけど、風呂に入ってもらえばよかったな。
キャンピーの中に風呂……あるかなぁ。まあ、あるだろう。あって欲しい。
「昨日はよく眠れましたか?」
「ええ……ぐっすりと。森の中で、ここまで熟睡できたのは、初めてです」
「そりゃよかったです」
「それと……すみませんでした!」
え……? 何をいきなり謝ってるんだろう……。
「昨晩は、泊めてもらってる分際で、夜の番もせずに全員寝てしまって……!」
「? えっと……別に気にしてないですよ。皆さん疲れてましたし。それに見張りなんて必要ないですよ。馬車の中にいれば安全ですし」
キャンピーには結界が張られてるしね。
「それでも……。迷惑かけっぱなしで、すみません」
「いえ、気にしないでください。これはビジネス。ちゃんと代金はいただく約束になってますし」
対価に対するサービスを提供してるだけだ。
そこまで恐縮される必要はない。
「いま朝食作っちゃうんで、お仲間さんを起こして……って、どうしたんですか、リダケンさん?」
彼が、なんだか目をめっちゃくちゃ大きく見開いていた。
「あ、あの……スミさん……。お、おれの、多分見間違いだと思うんですが……」
「見間違い……?」
すっ……とリダケンさんが、目の前の……草原を指さす。
「奈落の森……抜けて、ないですか……?」
リダケンさんは声を震わせながら、私に問うてくる。
え……?
そんな……。
「何かおかしいですか?」
昨日、19時から車を飛ばして、今は6時くらい。
約十二時間も車を飛ばしたのだ。
奈落の森がいくら広かろうと、さすがに、12時間も走れば走破できる。
あ、ちなみにずっと私が運転したわけじゃあない。
途中で眠くなったので、自動運転に切り替えたのだ。いやぁ、異世界キャンピングカー、さすがよね。
自動で目的地まで、私たちを運んでくれるんだから。しかも、運転手や客が寝てても、送り届けてくれるんだもん。
我が相棒は優秀優秀。
「…………」
リダケンさんは、大きくため息をついて、しゃがみ込む……。
「え、ど、どうしたんですか?」
「いや……なんというか、スミさんの規格外っぷりに、驚かされてしまって……」
「規格外……?」
「……なんでもありません。仲間達を起こしてきます」
「あ、はい。お願いします……」
しかしなんだったんだろうね、彼。あんな驚いて……。
《リダケンSide》
……おれは、リダケン。Sランク冒険者パーティ、【黄昏の竜】のリーダーだ。
おれらは、奈落の森の調査依頼にいった。だが、途中で迷子になってしまった。
死を覚悟したとき……見るからに怪しい女と遭遇。
そして……その女の力を借りて、おれたちは、森を抜けることができたのだ。
……仲間達を起こし、おれは、現状を伝える。
「は……?」
「うそでしょ……?」
「しんじらんない……」
仲間達は、窓の外を見て、絶句していた。
奈落の森を、突破していたからだ。おかしい……。
「あたしたちって、奈落の森の中腹にたどり着くのに、半月以上かかったわよね……?」
仲間のひとりがおれに尋ねてくる。
「ああ……あの森は人を迷わす。さらに、途中で魔物と戦闘になったり、トラップにひっかかったりして、全然思うように進まなかった……」
でも、スミさんは、おれらが半月かかった距離を、一晩で突破してしまったのである。
「この馬車……やばすぎない? 寝ながら移動できるって……」
「ああ……しかも、ここに出てくる強い魔物たちの攻撃を受けても、全然びくともしなかった……」
「これがあれば移動はかなり楽になるし、たとえば今回みたいな調査に、スミさんが同行していれば、依頼も超絶楽に進められる……」
おれらは、みなスミさん、そして彼女が持つ馬車に……驚きを禁じ得なかった。そして……言う。
「「「「あの人、だいぶ……おかしいぞ」」」」
……悪い人ではない。決して。でも、やっぱり変だ。おかしすぎるだろっ。
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