07.作ったカレーを絶賛される
テーブルの上には、包丁、まな板が置いてある。
あと、アイテムボックス内に保存しておいた野菜とお肉。
食料はキャンピングカーの冷蔵庫を使うよりも、アイテムボックスに入れておいたほうがいい(ボックス内の時間が止まるので)。
「材料はにんじん、タマネギ、ジャガイモ、そんで……黒猪のお肉。さて、何を作るでしょう、キャンピー? 正解はCMの後で」
とおふざけしつつ、ちゃちゃっと調理。
まずは野菜を切る。そんで、皮を包丁で剥いていく。
私は皮が多少残っていても気にしない派だ。
続いて寸胴鍋(キャンプ用品)にお野菜とお肉を入れて、油で炒める。
で、水を入れて沸騰させ、15分。
アク取りをちゃんと行い……。
そして取り出したるは、魔法のスパイス。
ホムセンで購入した、キャンプのオトモといっていいものを割って、鍋の中に入れる。
あとはぐつぐつ煮込めば……。
「すげ……」
「いいかおり~……」
「腹減ったぁ~……」
「うまそぉ~」
キャンピングカーの中に、スパイシーな香りが漂っている。
「す、スミさんっ。これ……一体なんでしょうか?」
「カレーという、故郷の料理です」
「カレー……」
ジュルリ、とリダケンさんたちがよだれを垂らしてる。
ちょうど、無洗米が炊けた(高速炊飯。キャンピーについていた炊飯器)。
お皿の上に米を盛り、そこにカレーのルーをかける。
リビングスペースへと移動。鍋、そして炊飯器、食器を置く。
「さ、どーぞどーぞ。ご飯食べちゃってくださいな」
「「「「いただきまーす!」」」」
彼らはよっぽどおなか空いていたのか、いきなりカレーにがっつく。
ライスとルーを混ぜる……という文化を知らない彼らは、ルーだけを掬って口に入れる。
「うんまぁあい!」「なんじゃこりゃああ!」
「辛くてっ、でもうまくって、新感覚ぅ!」
「食べる手が止まらねえ……!」
ガッガッガッ、とリダケンさんたちがカレーを食べていく。
なんという豪快な食べっぷりだ。こっちとしては、そんな風においしそうに食べてもらえるとうれしい。作った甲斐があるってものだ。
「おかわりは置いときますので、みなさんで勝手にどうぞ」
「スミさんは食べないんですか?」
「私は後でいいんで。ちょっと馬車を運転しますね」
「?????」
リダケンさんが首をかしげる。
「馬車を……え、この馬車を動かすんですか? こんな夜中に……?」
今、辺りは完全に日が落ちている。キャンピーの外には暗い森が広がっていた。
「こんな中移動するなんて、自殺行為ですよ……? 野営して、朝に移動した方が」
とはいえ、だ。カーナビのディスプレイを見ると、まだ19時だ。
19時。まだ全然夜じゃあない。
「大丈夫です。見たでしょう? この馬車、すっごい頑丈だったこと。それに、夜道も走れるように、その……光の魔法もまた施されてるんです」
「…………」
リダケンさんが疑いの目を向けてくる。
まあ、見た方が早いか。
私はみんなを残して、一人運転席へと向かう。
キャンピングカーの良いところ。食事と移動を、同時に行える。
しかも我らがキャンピーには結界機能が搭載されてる。
それゆえ、魔物が出るような森でも安心・安全に移動できるってわけ。
「さ、いくぞキャンピー。君のすごさを見せつけてやるんだ!」
私はイグニッションキーを回す。
ブルルンッ、と軽快なエンジン音。
まるで私に応えるかのようだった。かわゆすなぁ。
私はハンドルを握って、アクセルを踏む。
素晴らしく静かにキャンピーが動き出す。
「す、すげえ!」「まじで動いてる……!」「しかもかなり……いやめちゃくちゃ速いぞ!」
冒険者さんたちは、窓の外を見て目を丸くしていた。
めちゃくちゃ速い……?
「さっきまで居た場所が、あんなに遠くにいるぜ!」
「まじ速いわ……なんだこりゃ……」
「こんな馬車みたことない!」
あ、そっか。こっちの基本の移動手段って、馬車だ。
馬車ってようは、荷台を引く馬。
馬はどう考えても自動車よりも遅いもんね。
「ささ、ごはんちゃちゃっと食べちゃってください」
「「「「…………」」」」
……なんでみんなこっちめっちゃ見てるんすかね……。そんな珍獣を見るような目を向けてこないでくださいよ……。
「……おいスミさんって、ひょっとしてもの凄い商人なんじゃ」
「……こんな凄い馬車に、こんなめちゃ上手い飯まで用意できるし……」
「……どうするリーダー。金払えるの?」
「……だ、大丈夫だ。街に戻れば、貯蓄もあるし」
……なーんか背後でひそひそ話してる。
が、まあ気にしないでおこう。
私はキャンピーをひたすらに走らせる。
夜だろうと昼だろうと、いつでも走らせられる。それがキャンピングカーのいいところよねー。




