30.雪崩に埋まった村を発見しました
乗鞍澄子。
ただいま、女王様を乗っけて、野外活動車を走らせている。
目的は、蒼銀竜山。
ここにすむという、蒼銀竜に、何らかのトラブルが起きてるらしい。
蒼銀竜は、ネログーマと深い関わりがある。
竜に何かがあったときは、王族が助ける。国に何かがあったときは、竜が助ける。
そういう互助的な関係を築いてきて、現代に至る、そうだ。
「しかし外は猛吹雪ねー」
私、シュナウザー女王、そして天狐のテンコは、キャンピーのリビングスペースに居る。
エアコン&床暖房のおかげで、とてつもなく快適だ。
窓の外は、猛吹雪だっていうのにね。
『人の子よ、スミコよ』
テンコが私に話しかけてきた。
「ごはん?」
『ふふん』
なに、ふふん、って。もしかして、「いつもいつもご飯を要求するばかりではないんですよ?」的な、そういうことか?
『やっとスミコも、妾の飯係としての意識が芽生えてきたようですね。その通り、腹が減りました。馳走を用意しなさい』
「…………」
ほんっとによぉ~。
予想を裏切らないよねえ、この狐様はよぉ~。
ついさっきご飯食べたばっかりでしょうが、ったく。
『馳走を、早く』
「はいはい……」
何か暖かいものでも作るか。
そういえば、そろそろ正午だ。お昼ご飯、暖かいもの。
と、そのときである。
ぷっぷっぷー♪
「キャンピーだ。どうしたんだろう」
『人の子よ……! どこへ行くのですっ! 昼餉の準備はどうしたのですかっ?』
「そんなことより、キャンピーが心配でしょうが」
『むー! キャンピーと妾の食事っt、どっちが大切「余裕でキャンピー」まだ妾がセリフを言い終えてないっ……!』
私は運転席へと移動した。
「どうしたの、キャンピー? 何かあった?」
車が停止している。多分何かあったんだろう。
カーナビ上の目的地に、村が、設定されていた。
蒼銀竜山の、麓の村である。
「村……? 村がどうしたの?」
【((((;゜Д゜)))))))】
「わからん……へいテンコ~。通訳……」
するとテンコが、丸まって、お尻をこっちに向けていた。
なんだあれ?
遠目に見ると、毛玉にしか見えん。
『人の子が妾をないがしろにした……。人の子の分際でっ。寿命の短い、はかない存在のくせにっ。か弱く神獣が守らればならない尊い存在のくせにっ!』
どういう感情から発せられたセリフなんだよ。
まあすねてることはわかった。
「あとでちゃんとご飯作るから」
『ふんだ』
ふんだって。あんた神獣じゃあないの? 神秘性のかけらもないんだけど。
まあ、もとよりテンコは子どもだしね。
子どもが大人ぶって、偉そうな態度取ってるだけだからね。
「ごめんって。別にないがしろにしてないから、あんたのこと」
『……ほんとですか?』
「もちろん。あんたは友達だもん。ないがしろになんてしませんよ」
すると、むくり、とテンコが起き上がる。
そして、つん、と鼻を上に向けて、すまし顔で言う。
『キャピーはどうやら、村を発見したそうです。その村が、どうやら雪崩に巻き込まれて、ピンチだそうです』
「はよ! 言え……! 馬鹿!」
『なっ、なっ、なぁ~~~~~~~! 馬鹿って言った! 馬鹿って言った方が馬鹿なんですからねっ!』
ったくこの食いしん坊狐ぇえええええええ。
ヤバいときになにぼけてんだよっ。
「聖女様……」
蒼銀竜山の麓の村、ということは、そこにはネログーマの国民が住んでいることになる。
王族としては、国民の安否が気になるのだろう。
仕事として、彼女を山まで送り届けることを、受けた。
ならば、それだけやれば何にも問題ない、けど、けどなぁ。
それでほんとに、依頼達成かってならない?
ここで「そんなことより、竜の元へいきましょう」って、この人達を見捨てて、それでいいわけってね。
見捨てたら、確実に、この女王さんは深く悲しむだろう。
そんな彼女を山頂まで送り届けて、ミッションコンプリート、はいさいならー、ってされるだろうか。
できないねえ。寝覚めが悪い。
「村によってみましょう」
「! よ、よろしいのですか……?」
「もちろんですよ。クライアントがそれをお望みなら、かなえてあげるのが一流の社会人ってもんです」
「聖女様っ! ありがとうございますっ!」
まー、背後から「飯はよ飯」オーラを、バシバシ感じるけど。無視無視。
ちょっと食べなくても死にはしないっての。
で、だ。
私はキャンピーを山の麓の村へと走らせる。
ほどなくして。
「な、なんもない……」
一面の、雪景色が広がっているばかりだ。
カーナビ上ではここに村がある。
(……今更だけど、GPSってどうなってんだろうね。衛星なんてこっちとんでないだろうに……神が、神パワー使って、この世界の情報を飛ばしてるのかな……?)
「…………」
すでに、雪崩が、村を飲み込んでしまった後、なのではないか。
そうなるとヤバい!
「そんな……」
落ち込む、女王様。慰める時間はない。
「キャンピー! 雪上走行! 村のど真ん中を突っ走って!」
ブロロロロオォオオオオ!
「ま、待ってくださいまし! まだ生きてる人がいるかもしれないです! 通り過ぎないで!」
「もちろん、素通りなんてしませんよ」
「え……?」
キャンピーが村のど真ん中を突っ切る。
すると、村を覆っていたドカ雪が、シュォオオオ! と消えていく。
「雪が消えた!? どうして!?」
「雪上走行スキルを応用した、除雪作業をしたんですよ」
雪上走行スキルは、進行方向、およびその周囲の雪を、消す。
村のど真ん中を通れば、村を覆っていた雪を、消せるって寸法だ。
若干屁理屈感はある。が、できたんだから、いいじゃん。結果オーライよ。
『人の子らが倒れてますね。みな、負傷してます。死んではいないようですが』
「!? わかるの!?」
『ええ。風の加護を受けてる妾です。彼らの【生きてると発する音】を聞き分けることなど容易いこと』
なるほど、心臓、呼吸音など、人は生きてると様々な音を発する。
それらの音を、風を使って、拾ってきているのだろう。
「よし! じゃあテンコ。負傷者を、風を使って全員キャンピーの中に集めて……!」
外は極寒だ。ソンナ中、救助活動は困難を極めるだろう。
『しかしこの狭いキャンピーのなかに、村人全員を入れることなど不可能……』
「キャンピー! リビングスペースをいじって! でっかくしてちょうだい!」
すると、リビングスペースが、ぐぐぐぐ、と拡張していく。
キャンピーには、空間魔法が掛かっている。
自在に、空間をカスタム可能なのだ。
ならば、このスペースを、めちゃくちゃ広げることも可能。それこそ、避難所として使えるくらいに、広くすることはできるのだ。
体育館くらい、広いスペースが、キャンピーの中にできあがる。
『なんという、自由な発想……』
「感心してないでさっさと負傷者運んで」
『フッ……仕方在りません。美味しい馳走のためです』
どこまでマジで言ってるのか、わからんな。
まあでも、この子は思ったより良い子だって知ってる。
なぜって?
飯炊き係の私に出会う前から、フェンリル・ゾンビに襲われた人達を、助けるみたいなことをしているからね。
馳走のためとかぬかしてるけど、まあ、普通に善意の行動だろう。
可愛い奴め。
『なんですかっ、その温かい目はっ。やめなさいっ。妾は神獣ですよっ!』
文句ブーブー垂れながらも、テンコは村人を、中に運んでくる。
風にのって、たくさんの人達が、この避難所へと運び込まれていく。
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