29.猛吹雪が発生しましたが、キャンピングカーなら余裕です
あったかい車内で、ポテチ&コーラのコンボを堪能してる、私たち。
「蒼銀竜山って、どこら辺にあるんすか?」
『ネログーマのはずれ、隣国、ゲータ・ニィガに跨がっております』
ゲータ・ニィガって、私が最初居た場所じゃん。
行って帰ってくるみたいな感じになるんか。
「国境付近ですので、馬車だと数日かかりますね。また、神竜様は、山の頂上におります。頂上までは徒歩でさらに数日かかります」
普通に行くと、十日はかかる行程ってことらしい。
「へいキャンピー、山まであとどんくらーい」
しーん。
「ですよねー。しゃべれないもんね」
『ふむ。【あと数時間で到着だよ】だそうです』
あー、そういえば、テンコはキャンピーの声が聞こえるんだった。
「前から気になってたんだけど、テンコって心を読めるの、なんでなん?」
『風読み、というスキルがあるからです。これがあると、他者の心の声が、風に乗って聞こえてくるのです』
ほぉん、便利~。
『時折スミコが、人の子の分際で、この神獣天狐を馬鹿にしていることも、わかっているんですよ?』
あらー。そうだったのかー。
「いやぁ、失敬失敬」
『ふんっ。まあ良いでしょう。ただの人の子でしたら、不敬罪で首をはねておりました。が、スミコは特別な人間……なにせ我が唯一の友ですからね。特別に許してあげるのです。感謝なさい』
「キャンピーありがと~。あと数時間がんばって~」
『無視はよろしくないのではっ? 妾を無視するなんて、ふ、不敬ですよっ! 不敬!』
かまって欲しいみたいだ。可愛いやつよのぅ。
「ま、あと数時間で着くみたいなんで」
「すごいですわ……。数時間の移動ですむだなんて。それに……この馬車の乗り心地、最高ですわ」
「そうです?」
「ええ。馬車と言えば、揺れて当たり前のもの。ですが、この鉄馬車は一切揺れない。しかも、中はトテモ暖かい。こんな馬車初めてです……さすが聖女様……」
キャンピーべた褒めされてる。
ぷっぷ~♪
ご機嫌なのか、キャンピーがクラクションを鳴らしていた。
ぷっぷ~♪ ぷー! ぷー!
「……ん? なんか違和感……」
さっきまでのご機嫌なクラクションと違った感じを受けた。
私は急いで、運転席に戻って。
「な、なんじゃこりゃー!」
『ふむ……吹雪いておりますね』
そう、猛吹雪。フロントガラスを覆い尽くすほどの、雪だ。
ワイパーで雪を払っても、すぐさま、視界が真っ白に染まってしまう。
キャンピーはどうやら、この猛吹雪を前に、警告していたんだろう。
このまま進むとヤバいぞと。
「さすがキャンピー。賢い」
【(〃'▽'〃)】
カーナビにキャンピーの絵文字。うーん、可愛い。
「そんな……! たしかに今は冬ですが。しかし、雪は年を越したくらいに降るくらいです。まして、こんな猛吹雪がふくなんて……異常ですわ!」
なるほど。この時期、この地方特有の現象ってわけじゃあなさそう。
ってことは、考えてしまうよね。どうしても。
「こりゃ、神竜に何かあったんですかね」
「……可能性は、大、ですわ」
シュナウザー様が額に汗をかく。さっきまでは、神竜に何かあった【かも】しれない、だった。
でも、この猛吹雪によって、何かあった、という確信に変わったのだろう。
カーナビを見ると、どうやら、ここは蒼銀竜山まであと少しのところらしい。
つまりは、国はずれの場所だ。
今は、端っこで猛吹雪が起きてるだけですんでいる。
しかし、ほっとけば、国全体を覆う可能性だってあった。
早めに、対処しないとね。
「急ぎましょう」
「ええ。ですが……聖女様。この猛吹雪で、馬車を出すのは危険だと思います」
「それはそうですね。ただ……うちのキャンピーを、ただの鉄馬車と侮っちゃあいけませんよ。ね?」
【b^ー°)】
うちの子もやる気だ。
私は、CPを使う!
この野外活動車は、ポイントを消費することで、新しい機能を搭載可能なのだっ!
一覧表の中を見ていると、あった。
「【雪上走行】スキル……!」
文字通り、雪道を安全に走るスキルのようだ。
『【雪上走行】スキルを、獲得しますか?』
もちろん、YES。
すると、シュオンッ! という音が聞こえる。
フロントガラスに積もっていた雪が、消えた!
そして、フロントガラスの正面、キャンピーが進むべき道にも、雪が消えていた。
「「はぁ……!?」」
な、なんだこりゃー!?
いや、雪上走行っていうから、てっきりスタッドレスタイヤとか、タイヤチェーンが巻かれて、雪の上を走りやすくなるだけ、だと思っていた。
でも、進むべき道が、雪が消え、さらに道も綺麗に整備されている。
普通、雪が降ったら、それをどけても、地面はぐっちゃぐっちゃになってるはず。
ここは異世界だ。アスファルト舗装なんてされていない。なおのこと、こっちの道は水分に(雪に)弱いはずなのにっ。
しかも、だ。
キャンピーが進もうとしている道にだけ、雪が、かかっていない。
外からの猛吹雪も、その道を避けていた。
「まるで、透明な結界が、道を保護してるようですわ……!」
なるほど。雪上走行を使うと、キャンピー、そして進行方向に簡易結界が展開。
その結果として、道が進みやすくなる、と。
「いやキャンピーさぁ~……」
【((((;゜Д゜)))))))】
「最高かよぉ~」
【(*゜▽゜*)】
キャンピーってば、一瞬怒られるのかもって思ったらしい。
でも、褒められて喜んでいるようだ。おー、かわE~。
「とりあえず、キャンピーのおかげで、雪道も大丈夫そうです」
「すごいですわっ、キャンピー!」
【ヽ(´▽`)/】
両手挙げてばんざーいしてらっしゃった。うちの子可愛い、かわかわいい~。
で、もう一人のうちの子はというと。
『ふが……しゅぴ~……ふがふが……しゅぴぴ~……むにゃあ……』
床暖房の上で、あほ面さらして、眠っておったわい。
ったくよぉ~、こいつはよぉ~。
「それにしても、外がこんなに猛吹雪で、寒いだろうに、中はとっても暖かいですね」
「そりゃ寒さ対策バッチリなんで」
エアコンに床暖房が付いてるからね。
極寒の中だろうと、中は天国のように暖かいのである。
「……ああ、偉大なる創造神ノアール様。貴方様のおかげですわ」
急に、祈りだしたぞ、この人。
「我が国のピンチに、このような救世の聖女様を、派遣なさっていただき、誠に感謝ですわ……」
「……。あ、私のこと!? いや大げさな……」
「いいえ。まさに、この問題を解決するのに、最適な聖女様が、我が国にこんなタイミング良くやってくるなんて。やはり、神の思し召し……偉大なる神ノアール様のお導きなのですわっ! ああ、感謝しないと……」
どーやら信心深い人のようだ。
別に単なる偶然なんすけどね。
「ま、とりあえず、山へレッツらゴーしましょう」
「はいっ!」
キャンピーは雪上走行スキルを使って、蒼銀竜山へと向かうのだった。
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