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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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29/31

29.猛吹雪が発生しましたが、キャンピングカーなら余裕です

 あったかい車内で、ポテチ&コーラのコンボを堪能してる、私たち。


「蒼銀竜山って、どこら辺にあるんすか?」


『ネログーマのはずれ、隣国、ゲータ・ニィガに跨がっております』


 ゲータ・ニィガって、私が最初居た場所じゃん。

 行って帰ってくるみたいな感じになるんか。


「国境付近ですので、馬車だと数日かかりますね。また、神竜様は、山の頂上におります。頂上までは徒歩でさらに数日かかります」


 普通に行くと、十日はかかる行程ってことらしい。


「へいキャンピー、山まであとどんくらーい」


 しーん。


「ですよねー。しゃべれないもんね」


『ふむ。【あと数時間で到着だよ】だそうです』


 あー、そういえば、テンコはキャンピーの声が聞こえるんだった。


「前から気になってたんだけど、テンコって心を読めるの、なんでなん?」


『風読み、というスキルがあるからです。これがあると、他者の心の声が、風に乗って聞こえてくるのです』


 ほぉん、便利~。


『時折スミコが、人の子の分際で、この神獣天狐を馬鹿にしていることも、わかっているんですよ?』


 あらー。そうだったのかー。


「いやぁ、失敬失敬」


『ふんっ。まあ良いでしょう。ただの人の子でしたら、不敬罪で首をはねておりました。が、スミコは特別な人間……なにせ我が唯一の友ですからね。特別に許してあげるのです。感謝なさい』


「キャンピーありがと~。あと数時間がんばって~」


『無視はよろしくないのではっ? わらわを無視するなんて、ふ、不敬ですよっ! 不敬!』


 かまって欲しいみたいだ。可愛いやつよのぅ。


「ま、あと数時間で着くみたいなんで」


「すごいですわ……。数時間の移動ですむだなんて。それに……この馬車の乗り心地、最高ですわ」


「そうです?」


「ええ。馬車と言えば、揺れて当たり前のもの。ですが、この鉄馬車は一切揺れない。しかも、中はトテモ暖かい。こんな馬車初めてです……さすが聖女様……」


 キャンピーべた褒めされてる。


 ぷっぷ~♪


 ご機嫌なのか、キャンピーがクラクションを鳴らしていた。


 ぷっぷ~♪ ぷー! ぷー!


「……ん? なんか違和感……」


 さっきまでのご機嫌なクラクションと違った感じを受けた。

 私は急いで、運転席に戻って。


「な、なんじゃこりゃー!」


『ふむ……吹雪いておりますね』


 そう、猛吹雪。フロントガラスを覆い尽くすほどの、雪だ。

 ワイパーで雪を払っても、すぐさま、視界が真っ白に染まってしまう。


 キャンピーはどうやら、この猛吹雪を前に、警告していたんだろう。

 このまま進むとヤバいぞと。


「さすがキャンピー。賢い」


【(〃'▽'〃)】


 カーナビにキャンピーの絵文字。うーん、可愛い。


「そんな……! たしかに今は冬ですが。しかし、雪は年を越したくらいに降るくらいです。まして、こんな猛吹雪がふくなんて……異常ですわ!」


 なるほど。この時期、この地方特有の現象ってわけじゃあなさそう。

 ってことは、考えてしまうよね。どうしても。


「こりゃ、神竜に何かあったんですかね」


「……可能性は、大、ですわ」


 シュナウザー様が額に汗をかく。さっきまでは、神竜に何かあった【かも】しれない、だった。

 でも、この猛吹雪によって、何かあった、という確信に変わったのだろう。


 カーナビを見ると、どうやら、ここは蒼銀竜山まであと少しのところらしい。

 つまりは、国はずれの場所だ。


 今は、端っこで猛吹雪が起きてるだけですんでいる。

 しかし、ほっとけば、国全体を覆う可能性だってあった。


 早めに、対処しないとね。


「急ぎましょう」


「ええ。ですが……聖女様。この猛吹雪で、馬車を出すのは危険だと思います」


「それはそうですね。ただ……うちのキャンピーを、ただの鉄馬車と侮っちゃあいけませんよ。ね?」


【b^ー°)】


 うちの子もやる気だ。

 私は、CPキャンピング・ポイントを使う!


 この野外活動車キャンピングカーは、ポイントを消費することで、新しい機能スキルを搭載可能なのだっ!


 一覧表の中を見ていると、あった。


「【雪上走行】スキル……!」


 文字通り、雪道を安全に走るスキルのようだ。


『【雪上走行】スキルを、獲得しますか?』


 もちろん、YES。

 すると、シュオンッ! という音が聞こえる。


 フロントガラスに積もっていた雪が、消えた!

 そして、フロントガラスの正面、キャンピーが進むべき道にも、雪が消えていた。


「「はぁ……!?」」


 な、なんだこりゃー!?

 いや、雪上走行っていうから、てっきりスタッドレスタイヤとか、タイヤチェーンが巻かれて、雪の上を走りやすくなるだけ、だと思っていた。


 でも、進むべき道が、雪が消え、さらに道も綺麗に整備されている。

 普通、雪が降ったら、それをどけても、地面はぐっちゃぐっちゃになってるはず。


 ここは異世界だ。アスファルト舗装なんてされていない。なおのこと、こっちの道は水分に(雪に)弱いはずなのにっ。


 しかも、だ。

 キャンピーが進もうとしている道にだけ、雪が、かかっていない。

 外からの猛吹雪も、その道を避けていた。


「まるで、透明な結界が、道を保護してるようですわ……!」


 なるほど。雪上走行を使うと、キャンピー、そして進行方向に簡易結界が展開。


 その結果として、道が進みやすくなる、と。


「いやキャンピーさぁ~……」


【((((;゜Д゜)))))))】


「最高かよぉ~」


【(*゜▽゜*)】


 キャンピーってば、一瞬怒られるのかもって思ったらしい。

 でも、褒められて喜んでいるようだ。おー、かわE~。


「とりあえず、キャンピーのおかげで、雪道も大丈夫そうです」


「すごいですわっ、キャンピー!」


【ヽ(´▽`)/】


 両手挙げてばんざーいしてらっしゃった。うちの子可愛い、かわかわいい~。

 で、もう一人のうちの子はというと。


『ふが……しゅぴ~……ふがふが……しゅぴぴ~……むにゃあ……』


 床暖房の上で、あほ面さらして、眠っておったわい。

 ったくよぉ~、こいつはよぉ~。


「それにしても、外がこんなに猛吹雪で、寒いだろうに、中はとっても暖かいですね」


「そりゃ寒さ対策バッチリなんで」


 エアコンに床暖房が付いてるからね。

 極寒の中だろうと、中は天国のように暖かいのである。


「……ああ、偉大なる創造神ノアール様。貴方様のおかげですわ」


 急に、祈りだしたぞ、この人。


「我が国のピンチに、このような救世の聖女様を、派遣なさっていただき、誠に感謝ですわ……」


「……。あ、私のこと!? いや大げさな……」


「いいえ。まさに、この問題を解決するのに、最適な聖女様が、我が国にこんなタイミング良くやってくるなんて。やはり、神の思し召し……偉大なる神ノアール様のお導きなのですわっ! ああ、感謝しないと……」


 どーやら信心深い人のようだ。

 別に単なる偶然なんすけどね。


「ま、とりあえず、山へレッツらゴーしましょう」


「はいっ!」


 キャンピーは雪上走行スキルを使って、蒼銀竜山へと向かうのだった。


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>やはり、神の思し召し……偉大なる神ノアール様のお導きなのですわっ! ああ、感謝しないと……」 ノワール「知らん……何それ……怖……」
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