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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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25/31

25.神獣テンコと、二人きりのカツサンド・パーティ

 そんなこんなありましてー、私たちはエヴァシマの外に居ましたー。


 なんで?


 いろいろあったんですよぉ。

 

「まさか、獣人さんたちにあっという間に噂が広がってしまうなんてね……」


 エヴァシマ外、野外活動車キャンピングカーの中。

 私は一人ため息をつく。


 一方、テンコは床暖房に背中をこすりつけながら、尋ねる。


『なぜわらわが、こんな隠れてこそこそしないといけないのでしょう? 街が目前にあるのに、街の外で野営なんて』


「おまえのせいじゃい!」


『? わらわの? わらわは何も悪くないですよ』


「あんたのせいで、聖女ってばれちゃったんでしょうがっ!」


 経緯を説明しよう。

 城を出た、私たち。魔物の買い取り査定はまかせ、さぁて宿にでもとまるっかなーって思っていた。


 しかし! そこへ押し寄せる、獣人達。

 そして皆が口々に言うのだ。聖女様、聖女様、と。


 なぜって?

 神獣てんこを連れてるからだよ!


「あんたのせいで聖女ってばれちゃったんでしょうが……」


『どうしてですか?』


「なんか、神獣を連れていけるのって、聖女様だけなんだってさ」


 神獣を連れた女→聖女なのでは?→聖女に違いない!→聖女だ!


 と、大騒ぎになってしまったのだ。

 せっかく女王さまが、聖女であることを、黙ってくれようとしたのによぉ~。


 で、街を追われた私たちは、外でこうして野営している次第。


 ここは街からちょいと離れてる。だから、人が寄ってこないのだ。外は魔物が出るからね。


「てか、あんた。そのデカい図体、なんとかできないわけ?」


 こーんなでっかい、いかにも特別な獣です、みたいなのを連れてるから、目立つのだ。


「ネット小説だとさぁ~。しゃべる神獣って、大抵、人間の姿になるじゃん? あんたそういうのできないの?」


『フッ……愚かな人の子よ。貴方に一つ知恵を授けてあげましょう』


 ナチュラルに上から目線であーはらたつのり。


『神獣が人の姿を獲得するのには、長い長い年月が必要なのです。わらわはまだそこまで老いてないのです』


 それは知ってる。ガキだって事は。


『神獣が人に成る方法は、他にも、人と従魔契約を交わすというものもあります』


「ほーん? 従魔になると人になれるん?」


『ええ。従魔は、主人にもっとも仕えやすい姿を獲得するのです。主人が人なら、人の姿を』


 なるほどー。


「あんたとは従魔契約を交わしてないから、人になれないってことね」


『そういうことです。一つ、賢くなりましたね。わらわのおかげです』


 たしかに、ネット小説だと、契約を結んだ後に人間の姿になっていたよーな。(例外もあるけども)

 でも、私はテンコと、そう言う契約は結んでいない。


 あくまで対等な友人関係だ。


『無論、スミコが本当に嫌がってるのであれば……従魔の契約を交わすことも、やぶさかではありませんが……』


 まったく、そんな嫌そうな顔で言うんじゃあないよ。

 多分テンコは、主従よりも、友達で居たいんだろう。


 やれやれ。しょうがない。スミコ姉さんは、大人ですからね。

 

「やーよ。あんたと従魔契約なんて。めんどくさそう」


『! め、めんどくさいとはどういうことですかっ!』


「主人には従僕を食べさせる義務があるー、とかぬかすんでしょ? こんな食いしん坊を? 無理無理。そんなのごめんだね」


『スミコ……』


「あんたは友達。それ以上でもそれ以下でもない」


 テンコのせいで目立ってしまうのは、まあ、しょうがない。それを選んだ私の責任だ。

 それに、もとより一カ所に長居しないって方針で旅してるんだ。


 だから、別に良いよ。多少の不便は、がまんしようじゃあないか。

 この幼くも、可愛い狐さんのためにね。


『ふ、ふふ~……♡』


 ずりずり、とテンコが近付いてくる。そして、ぴったり寄り添ってきた。


 もふっ。


「おっふ……」


 思わず、口からそんな声がもれてしまう。

 な、なんだこのモフモフ感。やわらかすぎる。


 まるで羽毛布団だ。しかも、お日様のもとでよーく天日干しをしたやつっ。

 柔らかいのはもちろんのこと、このお日様の匂いがする。


『人の子スミコよ』


「……ぐぅ」


『スミコよ』


「はっ。ねむってしまうところだった……。なに?」


『そんなところで寝ると風邪を引きます』


「…………」


『なんですか?』


「いや、あんたに人を思いやる気持ちがあるんだなって」


『ふん。当然。そこらの畜生と違い、わらわは知性ありし神聖なる獣。友を思いやる気持ちくらいあります』


「さいで。あんがとモフモフ」


 しゃべり方は偉そうだけど、中身は優しい女の子。それがテンコ、だと私は思ってる。

 良い子だわ。


「ご飯にする? お風呂にする?」


『馳走を用意せよ……!』


「はいはい」


 どんだけ食うのよ。全くこの子は本当に食いしん坊なんだからさーもー。


 私は立ち上がって、台所に立つ。


『ふむ、いつものようにぶつくさ文句を言うのかと思いましたよ。人の子スミコよ。今日はやけに素直に馳走を用意するではありませんか』


「おなか空かせてる子どもに、ご飯を作ってあげなきゃってね」


 といっても、今からまた料理を一から作るのはめんどくさい。

 今日はいろいろあって、疲れたし。


 さくっとご飯を作って、さっさと風呂入って寝ちゃおう。


「まずはパンを焼きます」


 トースターに食パン(KAmizonで購入)をセット。

 その間に、アイテムボックスからキャベツを取り出す。


 KAmizonで購入した新鮮なキャベツを、ストトトンっ、と千切りにする。


『人の子よ……。草は嫌いです』


「草っていうな。野菜じゃ。あとなんでもたべないと……」


 おっきくなれないよ、とそういうだろう。だがもうこの子は十二分におっきいか。

 いや、待て。子どもでこのサイズってことは、大人になるともっと。

 

 そのとき、脳裏に、食費君が駆けていった。

 週を重ねるごとに、食費君が増えていく。

 やがて脳内を、無数の食費君がかけていたので。


 私は考えるのを辞めた。


 それより食事の準備っしょぉ!

 トーストに、アイテムボックスから取り出したとんかつをはさみ、キャベツ、そしてソースをかけてサンドする。


「よっし、できたよー」


『人の子スミコよ……! 遅い、遅すぎますよ!』


「はいはいすんませんね」


 リビングへと、移動。お皿にのっているのは、大量のサンドである。


『……ただのサンドイッチですか』


 今更だけどさ、サンドイッチってこっちに概念が存在するんだ。

 あれって元ネタは、現実世界の人の名前じゃあなかったっけ?


 なんでこっちに。まあ異世界だから、何でもありなのか?


「ただのサンドイッチじゃあございません。カツサンドよ」


『かつさんど……。ほぅ……どれ』


 ぬぅ、とテンコがカツサンドに顔を近づける。

 むしゃりっ。


『ぬほっ♡ こ、これは……!』


 くわっ、とそのおっきなまなざしを、さらに大きく見開く。


『な、なんということっ! 美味! 美味すぎる!』


 まーた貧弱語彙。


『なんと……むしゃ……しゃく……びみ♡ びみ~♡』


 ぶぉんぶぉん、とテンコがしっぽを激しく揺らす。


『ただのとんかつより、美味ですよっ! なんか……こう……美味!』


「はいはい、どーも。私も食おっかな」


 たくさんおいてある、カツサンドの一つを、私は手に取る。

 

 サクッ! もぐもぐ。うん!


「うっま」


 カツは、あげたてをアイテムボックスにいれておいた。

 この中は時間が停止してる。つまり、揚げたてを維持できてるってことだ。


 野菜もそうだ。新鮮な状態をたもったままのキャベツを使われてる。しゃきしゃきでちょーうめえ。


 カツはサクサク。野菜はみずみずしい。

 とろりとかけた、甘塩っぱいソースと、カツの肉汁が合わさり、それらをパンと一緒に食べる!


 さくっ、じゅわっ! しゃきしゃきっ!

 そして、パンの甘みも加わって、うますぎる!


『人の子よ、スミコよ……そなたはほんとに、料理の天才ですね』


 むしゃむしゃ、とテンコがカツサンドを頬張りながら言う。


「大げさな」


『このわらわを、少量の料理で満足させているのですから。たいしたものです』


 少量って。前も思ったけど。結構私作ってますよ、量。

 まーでも、この子の体格から考えると、これっぽっちってなっちゃうのかな。


 ま、いずれにせよ、カツサンド喜んでくれたようで何よりである。


「私はこれにちょい足ししよ……」


 チューブのからしを、少しだけカツサンドに塗る。

 そして、食べる。


 サクッ!


「ん~っ。ぴりっと辛いのがくわわって、ソースとカツパンの甘みうま味が際立つ~」


『人の子よ! わらわにもその黄色いのをつけるのですっ!』


「えー、辛いよ? 大丈夫? 舌お子ちゃまなのに」


『ふんっ。問題ありません。それにわらわはお子ちゃまではぬぅあい!』


 いや子どもだと思うけど。

 まあ本人が良いって言うならね。


 ねりからしを、ほんのちょっぴり、カツサンドに塗る。


『どれ……。!?!?!?!?!?!?!?』


 テンコはごろんごろんっとその場を行ったり来たりする。やめい。


「ね、辛いでしょ?」


『くぅん……くぅぅん……くぉおおん……』


 辛そうだ。私は冷蔵庫から、牛乳を取ってくる。

 大皿に牛乳をそそぎ、彼女の前に置いてあげる。


「ほら、飲みな」


 テンコはお皿に顔を付けて、ぺちゃぺちゃと牛乳をなめる。


『うむ……この液体も美味……! パンで失った水分が戻っていきます……! なんですかこれは?』


「牛の乳だよ」


『ばかな……牛の乳が、こんなに濃厚な味をしてるわけがないですっ』


 そら現実の、品種改良された、乳牛様のおちちだからね。

 しかも北海道産を、KAmizonでお取り寄せしたのである。


 どれ私もカツサンド、ぱくっ。

 そして牛乳で流し込む、ごくん。うん。


 サクサクカツサンドに、牛乳がしみこんで、実に美味しい。


「あー……うまいっすわー」

『スミコよ。わらわにもっと牛の乳を、あの美味なる乳を!』


 そんな風に、二人で夕飯を食べたのだった。なんか結構楽しかった。二人の食事も悪くない。


【^ω^】


 って、は! ごめんキャンピー! 別に仲間はずれにしたわけじゃあないよっ。


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― 新着の感想 ―
こんばんは。 牛乳は北海道産のが旨い…分かります。北海道は若い頃に一度行って飲んだこと有りますが、明らかに地元のより濃かったですからね。 あれからだいぶ時が流れましたが、今も濃いんだろうか…。
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