24.女王様に「聖女」だとバレました
ホブゴブリンたちを、やっつけちゃった! リダケンさん達がね! リダケンさん達の手柄ね!
私は何もしてませんからっ!(責任逃れ)
で、だ。
私たちは、ネログーマのエヴァシマってところにいた。
で、エヴァシマって、どうやら王都だったらしいの。
で、エヴァシマの王城に、私たちは登城させられてた。
あ、アイエエエエエエエエエエ!
何で!? 王城なんで!?
『何をうろついてるのですか、人の子スミコよ』
私の隣には、どでかいモフモフが座っている。
名をテンコという。天狐だからテンコ。安直極まりない名前だが、しかし山の神からもらった素敵なお名前、ってことで、本人はちょー気に入ってるそーな。わは、わはは。
はぁ。
『この妾を無視するなんて、良い度胸です。友でなければ首をはねていたところでしょう』
だーっとれ。ったくもぉ~。
しかし、なーんで王城になんて、呼び出されちゃったんだろうか。
私何かやっちゃいました?
「シュナウザー女王陛下のおーなーりー」
女王陛下ぁ?
入ってきたのは、可愛い、犬耳の美女だった。
灰色の髪と瞳。愁いを帯びた表情。なんとも美人な獣人さんだ。
この人が、シュナウザー様が、この国の女王。トップ。まじか。
シュナウザー様が椅子に座る。
え、え、な、なに、私、なにされるの?
「そうかしこまらないでください。今日はただ、貴方にお礼がしたいだけですなの。聖女スミコ・ノリクラ様」
「!?」
え、え、えー!?
なんで、この人、私が聖女だってわかっちゃったのっ!?
あばばばっ。何かミスった!?
「すみません、スミコ様。ズルをしました」
「は、はぁ……? ズルとは……?」
「昔、貴方によく似た聖女と会ったことがあるのです」
「私に……?」
「はい。聖なる獣を引き連れ、見たことのない力を使う、そんな聖女が」
おいいいいいいいい。
だれだよっ! その聖なる獣を引き連れた聖女とやら!
あんたのせいで、私が聖女だって、バレちゃったじゃあないかっ!
「貴方が聖女であること、そして、それを他者にバレたくないことは、承知しました。それを口外する気は毛頭ございませんし。国で利用しようなどとも考えておりません」
まじかなぁ。
【ほんとですよ】
と、テンコが脳内で話しかけてきた。
【どゆこと?】
【貴方はもう忘れたのですか? 妾、テンコは風の神獣。敵の嘘を見破れるのです】
【! そ、そっか……心読めるんだったね】
【その通り。妾は風を司る。嘘をついたものからは、嘘の風が噴くのです。妾はそれを感じ取れる】
す、すげえええええ。
テンコさんまじすげええ!
ごめんよ、今までただの、食いしん坊わがままガールもふもふだと思っていた。
【とんでもない侮辱……! スミコでなかったら首をはねておりましたよっ!】
がるるるう、とうなるテンコさん。まじごめんって。
それにしても、テンコってもしかして、ちょー凄い?
【そなたはっ、妾が神獣であることを忘れすぎですっ!】
さーせんって。
それにしても、良かった。このシュナウザーっていう女王さん、私を利用したり、聖女であることを口外しないようだ。
た、たすかったぁ~。それがバレたら、ちょーめんどくさいもんね。
「このたびは、二つの危機を、すくってくださり、ありがとうございました。聖女様」
「いやいや……って、二つ? ってなんです?」
「フェンリル・ゾンビ。そして……ホブゴブリンのモンスターパレード」
ああ、なるほど。リダケンさんから、報告はあがってるのか。
って、リダケンさんからの報告を受けてるのに、なんで私がやらかしたってわかるんだろう。
「そんな不思議な顔をなさらないで。聖女が起こす奇蹟がなければ、どれも解決困難な事態でした。そこに、聖女が居合わせ。それつまり、貴方様のおかげで救われた。そう考えるのが自然です」
「そ、そーゆーもんですか……」
「ええ。本当にありがとう、スミコ様」
深々と、女王様が頭を下げてくる。悪い気はしない。まあそれも、裏がないってわかってるから、素直に受け止められるんだけどさ。
うん、やっぱテンコが居て良かった。
【な、なんですかっ。わ、妾がその程度の雑な賛辞で、喜ぶとでも思ってるのですかっ。見くびるんじゃあないですよ、人の子よ!】
わっさわっさ、とテンコのおしっぽさま、嬉しそうに揺れていらっしゃった。かわよ。
「それで、謝礼金についてですか……」
「へ……? 謝礼金……?」
「ええ。フェンリル・ゾンビおよび聖域の件、そして、ホブゴブリン討伐。それらの謝礼を……」
「いやいや、大きな金は、国から貰えないっすよ!」
ぜったい面倒なことになるしっ!
「しかしお礼をしなければ、こちらは気が済みません」
「え~……」
どうしようかなぁ。
あ。
「そうだ。じゃあ、買い取りお願いできますか?」
「買い取り?」
「ええ。そこの神獣が、はりきって魔物を倒しまくってしまったんです。でもそれを換金するとなると目立つし……。だから、魔物を引き取ってほしくって」
お礼として(※ただで)、金を貰うと角が立つ。
でも、こうしてこっちの素材を提供し、その金を貰うのであれば、余計な恨みを買わずに済むって寸法。
「その程度のことでよろしいのですか?」
「はい。それ以上を望みません」
てゆーか、それでもけっこーなお金手に入るだろうし。
普通には売れなかっただろうし。アイテムボックスに塩漬けになるくらいなら、売って金にした方が良い。
「……やはり、聖女様は素晴らしいです」
「いやそんな素晴らしい存在じゃあないっすよ」
私が考えてるのは自己保身だけだ。全く素晴らしくはない。
「わたくしの知ってる聖女様も、心清らかで、トテモ優しいおかたでした。貴方様も」
「い、いやぁ……やめてくださいよぉ~……」
照れちゃうじゃあないかぁ。
「承知しました。では、魔物はこちらで売っておきます」
「助かります」
「他に何か望みは?」
「ないない! もう十分ですって!」
あんま良くして貰いすぎると、また恨みを買いそうだしなぁ、いらんとこから。
「わかりました。話は以上です。本当に、ありがとうございました。そして……良き旅を」
女王様はそういって、退出していった。ふぅい~。つかれたぁ~。
『何を緊張してたのですか』
「そらするでしょ……。相手王族なんだし」
『なれば、妾に対しても、もう少しかしこまった態度をとるといいです。なにせ、妾は神獣……王より上の神なのですからっ』
「へいへい。それにしても……助かったよ、テンコ」
『む? なんです急に』
「相手の心を読んでくれたじゃん? 助かったよ」
風を読む力を持ったテンコがいなかったら、私はもっと、相手のない腹を読もうとしていただろう。
もっと、ビクビクしていたと思う。
『ふ、ふふっ♡ 人の子スミコよぉ~。そうそう、それですよ~♡ そういう態度をとってくれないと~♡ 普段から~♡』
ぶぉんぶぉん、と九尾が揺れる。
まー、よろこんでやんの。しっぽが広がってますし~。
「さ、帰ろっか。キャンピーも」
「…………」こくんっ。
あ、ずっと描写されてなかったけど、ちゃんとキャンピーも人間姿で、一緒にいますよ。
無口だから、描写カットされていただけ。
「一仕事終えて、臨時収入も入ってきそうだし。買い物したら次の街へいこーか」
『思ったのですが、人の子スミコ。ネログーマに移住もよいのではないですか?』
「ほぉん……なんで?」
『ここの女王は、スミコが聖女であること、そしてそれを隠そうとしてることを、ちゃんとわかっているのでしょう? なら、ここは住みやすいのでは?』
なるほど。王家が後ろ盾になってくれるから、いろいろと楽できそう。
テンコはそう言いたいらしい。が。
「駄目」
『むぅ、どうしてですか?』
「トラブルの火だねが3つもあるからね」
1つ! 召喚聖女。
2つ! 神獣狐。
3つ! なぞの車。
どれもヤバいもんだし、これらを巡ってトラブルが絶対に起きる。
私が困るだけならまだしも、他の人に迷惑掛かっちゃうのはね。よろしくないざんす。
「だから、まあ、一カ所に移住しないほうがいいのよ」
最終的に、どういう選択を取るのかはわからないけど、私が(永住するか、帰還するか)。
でも、当面はふらふら旅していたい。
「私には、最強の移動要塞があるし。ずっと野宿でも大丈夫だからね」
メイド姿のキャンピーの頭を、よしよしとなでる。
「…………♡」えへへっ。
あら可愛い。はにかむ君もまた可愛い。
『まあ妾はご飯が食べられるのであれば、永住だろうが野営だろうがどうでもいいです。スミコの選択に従ってあげましょう。友ですからね』
【作者からお願いがあります】
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