21.神獣さん、食費を稼ぐために「雑魚」を狩ってきました
環境再生車パワーで、フェンリル・ゾンビのせいで傷ついた森を、再生したぜ……!
【スミコ。聞こえますか、人の子よ】
頭の中に、天狐のテンコの声が響く。
【なんじゃい】
【キャンピーが腹を空かせております。馳走を用意なさい】
野外活動車姿のキャンピーを見やる。
表情筋なんてないので、おなか空いてるのかどうかはわからない。
けど、まあキャンピーの声がわかるテンコが、そう言ってるんだ。多分まじの話なんだろう。
それにしても、テンコ加入は助かるな。
キャンピー、あんま思ってること、表に出さない子だし。良い子だから、我慢とかしちゃうから。
【早くなさい。とろくさいですよ】
……多少失礼でも、こうしてずけずけと、本当のことを言ってくれるやつが、そばにいると助かる。
失礼だけども。
私はKAmizonを使って、燃料を購入。
改めてだけど、KAmizonはこの野外活動車ってスキルに付随するスキルね。
現実世界から、こっちのお金を使って、現実の品物を取り寄せるんだ。
当然、ガソリンも購入できる。
購入すると、給油ノズルが伸びてくる。
その先端を、キャンピーに挿入(※エロい意味じゃあないよ。残念だったなぁ……!)
ガソリンを注入。
【答えるがよいです、スミコ。それは何をしてるのですか……?】
【キャンピーにご飯あげてるの】
念話で話してきたな、テンコのやつ。
【というか、なんで念話?】
【この賢い神、ミカデス様に力と教養を授かった妾は、わかっているのです。貴方が、召喚者であることに】
召喚者……。たしか、異世界から召喚された者……だっけか。
【……よくわかったね】
【よく、幼い頃から天狐は賢いねといわれ、育ったので。まあ、当然ですね】
なるほど甘やかされて育ったクソガキなんだな。
【むー! こほん……心を読めることをお忘れ無きように】
そーいやそうだったわ。
【そう、私召喚者なの。それ、黙っといて。周りには。キャンピーの正体についてもね】
【ふふん、人の子に言われずとも、賢い妾は、理解っているのです】
えらそーに……。
【なるほど、キャンピーのご飯は液体なのですね】
【そーだよ】
【ということで、妾に馳走を用意なさい】
【いやなんでだよ……】
【キャンピーがご飯を食べてるというのに、妾にご飯がないのはオカシイとは思わないのですか?】
思わないです☆
【馳走を! 馳走を用意なさい! 馳走! 腹が減っているのです……!】
【なんでやねん……】
【最近まともなご飯を食べていないのです……山の神のもとを去ってからは……】
あー、美食(自称)だから、生魚とか、野草が食えないんだっけ……。
【馳走を早く用意なさい】
【友達にごはんたかるの、どうかと思うよ? 品位を疑うっていうか】
【む……。なるほど、つまり、スミコはこう言いたいのですね。自分の食い扶持は、自分で稼ぐようにと】
言ってねえよ……。いや、でもまあそうかも。
KAmizonで燃料などを購入すると、当然、金が掛かる。
そしてペットが一匹増えたことで、さらにお金はかかるだろう。
……ゆえに、テンコの言うとおり、自分の食い扶持は自分で稼いで欲しいものだ。
『フッ……。いいでしょう。給油している間に、用事は済ませてきます!』
びょおぉお! と突風が吹くと、テンコが居なくなってしまった……。
「なんだったんだ今の……」
「それにしても、凄いですね。スミーさん」
リダケンさんが近付いてきた。
「まさか、風の神獣・天狐を従魔にしてしまうなんて……」
風の神獣……。ああ、だから今突風が吹いたのか。
テンコは、風に乗って飛んでいったみたい。
てか。
「リダケンさん、違いますよ。従魔契約は結んでないです」
「な!? そうなんですか!? でも……だとしたら余計にオカシイですよ」
「と、言うと?」
「天狐のような、神獣は、通常人の言うことを聞かないのです。言うことを聞かせるためには、従魔契約を結ぶしかない」
「へー……」
まあ言うことを聞かないっていうのは、正しい。現にあいつあんま人の言うこときかないし。勝手なやつだし。
「従魔契約を結ばず、神獣を使うのは……ほんとに凄い」
「使ってないですよー。あいつほんと言うこと聞かないんで」
「そうですか? でも大人しくしてるように見えましたけど」
あれがぁ~?
大人しいぃ~?
えらっそうにぶーぶー文句たれまくっていたじゃあないか。どこが大人しいんだか。
真の大人しい子は、うちのキャンピーですよ。
ちゃんと見習って欲しいもんすわ。
『人の子よ、スミコよ』
びょおぉおおおおお!
突風にのって、テンコが現れた。
「何やってたの、あんた?」
『近くに居た雑魚を間引いてきてやりましたよ』
「へえ……。で、どこにいるの? その雑魚とやらは」
スッ……とテンコが頭上を見やる。
ドサッ……!
「へ? う、上から魔物が……ひぃい!?」
リダケンさんたちが、青い顔をして、頭上を見上げる。
……なんっじゃありゃああ!
ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサ!
大量の魔物が、空から降ってきたのだ!
「なーにやってんのよテンコぉ!」
『何をやってるって……まったくもうお忘れですか? そなたが申したのではないですか。自分の食い扶持は自分でかせげと。だから、一寸近くに飛んでいき、魔物を倒し、風で運んできたのです』
なーるほどねー。
「って、この大量の魔物を!?」
『この程度の雑魚を狩ることなど、偉大なる山の神ミカデス様から力を貰った、天狐にとっては朝飯前なのです。褒めなさい、人の子よ』
朝飯前って……。
私はこっそりと、テンコが狩ってきた魔物に、鑑定スキルを使う。
~~~~~~
オーク×20
【レベル】50
オークキング×1
【レベル】150
~~~~~~
「オーク……20匹に、オークキング1匹……」
しかもレベル結構高くない!?
……リダケンさんを見る。
「す、凄い……オークがこんなに。オーク1匹倒すのに、B級冒険者でも手こずるのに……しかもオークキングまで!? A級でも倒せないやつ普通にいるのに……!?」
……なるほど。レベル90000は、伊達じゃあないってことか……。
『どうです、人の子よ。妾の実力は』
「そうだね、すごいね。でもねテンコ……。こんなの一気に冒険者ギルドにもってったら、目立っちゃうよね……?」
『目立って何が悪いのですか?』
「目立つと面倒なことになるの。やっかまれるし。やりたくないことを頼まれるようになるし」
『それより食い扶持はとってきたのですから、馳走を用意しなさい』
あーもー、人のこと聞かないし~。はぁ……。
「す、スミーさん……その、そろそろ街へ戻りませんか? 報告しないとですし」
「そうですね。キャンピーのご飯も終わったことですし」
給油ノズルを回収。
「じゃ、皆さん乗ってください」
『ふむ……妾も』
テンコが野外活動車に乗り込もうとする。
ムギュ。
『人の子よ! 助けなさい!』
「あーあー、もー」
私は後ろから、テンコのお尻を押す。
『無理にねじ込もうとしないでください!』
「大丈夫大丈夫」
テンコをねじ込んだ。
その後に、リダケンさん達が続く。私も中に入る。
『おお……なんと広い。しかも快適ですね……』
テンコはくるくると、リビングスペースを物珍しそうに見て回っている。
リダケンさん達はびびって、部屋の隅にいる。
「キャンピー、街まで自動運転よろしくね」
ブロロロオ……と野外活動車が動き出す。
さて……。
『馳走を早く』
「はいはい作るよ、作ってあげますよ。感謝してよね」
『フッ……。食べてあげましょう。感謝なさい、人の子よ』
なーにに感謝しろってんだよ……まったくもー。
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