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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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20/31

20.スキル【エコカー】を獲得しました。 ~「燃費が良い」わけではなく、「壊れた自然環境を神の力で再生する」という意味でした~

 私、乗鞍のりくら澄子。

 異世界に無理矢理連れてこられ、スキルがハズレってせいで、追い出された。


 しかーし、私には便利なスキルと可愛い相棒キャンピーがいたので、ちょー余裕で生き残れた。


 あと最近、偉そうな狐、天狐のテンコが仲間に加わったのだった。


 一人旅か? って突っ込みが聞こえてきそうだけど、いやいや。


 ひとりは、キャンピングカー(車)。

 そしてもうひとりは、ペット


 ほら! 一人旅! 人は一人! ね……!


 さて。


「リダケンさん、これからどうしましょうか」


 私たちはネログーマの森、聖域に来ている。

 ここに暴れてる化け狐の退治、それが、リダケンさんたちS級冒険者の仕事だった。

 

「とりあえず報告と、あと被害状況確認ですかね」


 冒険者リダケンさんが言う。なるほど、被害状況の確認か。


「テンコ。あんたどれくらい【おいた】しちゃったの? 周りに迷惑かけちゃだめでしょ」


わらわは周りに迷惑なんてかけておりません。憶測で物を語るなど、愚者のすることですよ、スミコ』


 目を閉じ、つんっ、と鼻を上に向けるテンコ。

 あ、そ。


「まあ一応現場の確認しちゃいましょうか」


『スミコ……! そなた、わらわの言ってること信じてませんね!?』


「うん。全く」


 子どもは、自分にとって都合の悪いことは、お母さんに黙っておくもんだ。

 このテンコという神獣は、偉そうな態度、そしてしゃべり方をしてる。


 が、態度を見ればわかる。

 まだ年若い神獣なのだろう。


『キャンピー。主は選びましょう。あんなのよりもっと優しい主人はおりますよ?』


「…………」ふるふる。


『なに、【おねえちゃんは誰よりも優しい?】キャンピー、それはちょっと狭いもののみかたというものです』


 キャンピーかーわーいーいー。愛してるぜ。

 ってか軽くディスりやがって、テンコのやつめ。


 で、だ。

 私たちは聖域を少し見て回ることにした。


「うわっちゃー……こりゃひどい……」


 私たちがいるのは、森の中……のはず。

 だが、そこにはまともな木が一本も生えていないのだ。


「全部枯れちゃってますね……」


 リダケンさんが口元を、手で押さえる。たしかに、ちょっと臭い……。


「ねえ、テンコ。これってまさか……フェンリル・ゾンビとやらのせい?」


『そんなの見ればわかるじゃあないですか。見てわからないのですか?』


 いちいちむかつく言い方しよる……。


『フェンリル・ゾンビは呪毒を吐いてました』


「なるほど、それをかけられて、あんたも、この森も毒に冒されちゃったのね」


 うーん、どーっすかな。

 でもなぁ、見ちゃった以上ほっとくわけにはいかんしなー。


「キャンピー、浄化の水を散水して」


「…………」ぐっ。


 キャンピーは野外活動車キャンピングカーへと変化。

 テンコにそうしたように、浄化の水を振りまく。


 しゅうぅううう……。

 毒々しい色をしていた地面は、治っていく。だが……。


 だが、森の木々が、つんつるてんだ。

 そらそうだ。毒を抜いただけなんだから。樹が再生するわけない。


「テンコ、森を再生するスキルとか、魔法とかないわけ?」


『ふふん、無知なるスミコに教えてあげましょう』


 むかっ腹たつぜえ……。

 でも、この言い方だと、テンコのやつ、森を再生する力があるのかもしれない。


『壊れた物を再生するスキルや魔法というものは、存在します。しかし、どちらも神の力なのです』


「神の力……?」


『神にのみ使用を許可された力。おいそれと、一般人が使えないのです』


「ほーん……。なるほど。だから神獣は使えるってことね」


『何を言ってるのですか? 使えませんよ、わらわは』


 おいいいいいいいいいいいい。


「使えないのかいっ。この流れでっ」


『一度たりとも、再生の力をわらわが使えるなんて言ってませんよ? 耳が悪いのですか?』


 こんのっ……! はぁ……。おこってもしょうがないな。子ども相手に。


 それにしても……森、どうしよう。

 このままってわけにはいかないし。


 かといって、再生の力は、神の力っていうし……。うーん。

 困ったときは、キャンピーだより。


「キャンピー。君に、再生の力とか、ないよねー?」


「…………」ぐっ。


 サムズアップする、キャンピー。


『キャンピーには、あるそうですよ』


「あるんかい!」


『正確に言えば、CPキャンピング・ポイントとやらを消費すれば、いけるらしいですよ』


 あ、そっか。そういえばそんなものもあったね。

 我が野外活動車キャンピングカーは、ポイントを消費することで、新しいスキルを獲得できるのだ。


「でも人化でポイント全部使っちゃったような……」


~~~~~~

所有CPキャンピング・ポイント

→5000

~~~~~~


 また増えてる……!?

 なんで!?


『どうやら、走行距離に応じて、ポイントがたまるそうですよ』


「あ、あんたよく知ってるね……」


『キャンピーがそう言ってます。まったく、スミコはもっと対話をするべきですよ。相棒と』


 グッ……正論を……。

 しかし……あれだな。テンコがいると、楽だな。


 しゃべれないキャンピーの通訳してくれるし。

 第三者視点で指摘してくれるのも、地味に助かる。


「で、えっと……スキルスキルっと」


 スキル一覧を見ている。

 よーく探してみると……あった!


~~~~~~

環境再生車エコ・カー

→壊れた自然・環境を、神の力で再生する

~~~~~~


「エコカーってそういう意味じゃあねえから……!」


 環境に優しい車をエコカーっていうのにっ。

 なにっ? 壊れた自然環境を再生するって……!

 車の範疇超えてんだろ……!


「す、スミーさん……どうしたんですか?」


「あ、いや……。えっと、とりあえずキャンピーが直せるみたいです」


「な……!? な、何でもありすぎないですか!?」


 ほんとそれな……。


「て、帝国式の、最新鉄馬車は、その……再生までやってくれるんです!」


 この言い訳いつまで通用するかなぁ~……。


『スミコは何を馬鹿なことを言ってるのですか? ただの馬車が神の力なんて使えるわけないじゃあないですか』


 そうだけど、あんたちょっと黙ってて……!


【仕方ありませんね】


 !? な、なにこれ……頭の中に、直接テンコの声が響く……。


【神獣の能力の一つ、念話です。信頼のおく相手に限り、思念を送りあうことができるんです】


 テレパシーっていうことか。


【こう?】

【ええ、それで大丈夫です】


 神獣ってほんとすごいな……相手に心の声を届かせ、相手の心の声を聞けるなんて……。


【フッ……当然です。しかもわらわは偉大なる山の神ミカデス様に力を貰ってるのですからね!】


 はいはい……。

 まあ、テンコに念話能力があることが判明したけど、それは今本題じゃあない。


「と、とにかく。うちのキャンピーが、壊れた環境を……治します!」


「…………」てーん。


 キャンピーが腰に手を当てて、胸を張ってる。あらやだ可愛い。


「えっと……じゃあ、どうぞ」


「よし! キャンピー、環境再生車エコ・カー!」


 エコカーを、まさか必殺技のように叫ぶ日がくるとは……。ちょ、ちょっとはずい~。


 キャンピーはというと……。


「…………」カッ……!


 キャンピーは野外活動車キャンピングカーへと、変形トランス・フォーム

 荷台の部分の明かりが、窓から漏れている。

 室内からの光が、徐々に強くなっていき、周囲に広がっていく……!

 ま、まぶしいぃい!


 その光に照らされた部分、つまり毒によって枯れた木々や、草花たちが、光り出す。


 やがてその光が収まると、そこには……。


「も、戻ってる!? 破壊された自然が……再生されてるぅ!?」


 リダケンさんが腰を抜かしていた。

 私は……唖然とするほかない。


「まじかい……」


 すごいな……。完全に元通りだ。しかも、見渡す限りの森の緑が、戻っている。

 広範囲の、再生能力……。


「これが……環境再生車エコ・カー。す、すごい……」


 リダケンさんが戦慄の表情でつぶやく。


 いやまあ、たしかにキャンピーの力は凄かったけどさ……。


「別に環境再生車エコ・カーが凄いってわけじゃあないんすけど……」


環境再生車エコ・カーってやばいのね」「ああ、まさか完璧に自然環境を治すなんて、環境再生車エコ・カーぱねえ」「環境再生車エコ・カーってとんでもないわ……」


 ああ、環境再生車エコ・カーが、間違った意味で、異世界に広がっていくよぅ……


【作者からお願いがあります】


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