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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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17/31

17.瀕死の天狐を、ウォッシャー液で洗車(浄化)してしまいました

【感想欄の開放につきまして】


停止しておりました感想欄ですが、本日より開放いたしました。

閉鎖に至りました経緯につきましては、諸般の事情をご賢察いただけますと幸いです。

 聖域にいる、化け狐退治に来た……私たち。

 しかし現場にいたのは、天狐と呼ばれる、くそでかい狐だった。

 そんで、呪毒とやらを受けて、瀕死の重体だった。


「……どう、しましょう」


「どう、しましょうかね……これ」


 私、そしてリダケンさんが顔を見合わせる。

 倒れ伏す、巨大な狐……天狐を、改めて私たちは見やる。


 灰色の体毛をした、大きな狐だ。

 体毛はベタッとしている。まるで、泥水でも浴びたかのように、汚い。

 長いしっぽは、濡れた雑巾のようにしなっとしてる。


 一言で言えば、汚い野生の狐(ただし馬鹿でかい)。

 それが……私の、天狐に抱いたイメージだ。


「これ……ほっといても死にます……よね」


 と、リダケンさん。

 そらそうだ。


~~~~~~

呪毒

魔族や、特別な魔物が使う、呪いによる毒のこと。

大抵の場合致死性を持つ。

聖女による浄化でしか、呪いを解除できない

~~~~~~


 ほっとけば死にそうだ。

 現に天狐は、私たちの前に来てから、さらに体調悪そうにしてる。

 倒れ伏した状態で、ぴくりともしない。浅い呼吸だけを繰り返していた。


「討伐の手間が省けた……ってかんじですかね」

 

 リダケンさんは助ける気はなさそうだ。

 まあ、私も会ったばかりの天狐に、同情するなんて……できない。

 それにこいつは、ネログーマの聖域を荒らした張本人だし。

 たーだぁ……。


「こいつ、助けようと思います」


「!? そ、それはどうして? ネログーマの平和を脅かしていた、悪い狐なんですよ?」


「と、思うじゃん?」


「違うんですか……?」


「多分ね」


 私は自分の推理を、端的に述べる。


「こいつの毒は、呪毒。自然にかかる毒じゃあありません。誰かがこいつに、呪いをかけた」


「っ! つまり……スミーさんは、この天狐に呪いをかけた、第三者がいると?」


「ええ。そいつの情報を、私たちは知らない」


 話を聞いて、情報を得た方がいいと、思ったんだ。


「……しかし報告によると、天狐がネログーマ聖域で暴れていたと」


「それも正しいかどうかわからんでしょう?」


「それは……」


「私は治す。で、話を聞く。その上で、悪い奴なら……キャンピーに処理して貰う」


 キャンピーには魔物を絶対に殺す、魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)があるのだ。

 最悪、治して、本当に天狐が悪い奴なら、ビームで処理できる。生殺与奪の権は、こっちにあるんだ。


「私の責任で治します。いざとなれば殺しますので」


「ま、まあ……スミーさんがそうおっしゃるなら」


 ……まあ、かっこつけたけど、ほんとは……まあ、ちょっぴりかわいそうだなって思っちゃったんだよね。

 だってさー……。


「…………」ぎゅー。


 キャンピーがさぁ、ずっと私の手を握って、天狐を心配そうに見てる訳よー。

 大丈夫かなーって、不安そうにさー。

 ねー、ほっとけないでしょ?

 だから治します。


「で、どうやって?」


「…………」


 リダケンさんに問われて、私は……空を見上げる。さて……。

 どー……すっかな!

 なーんも考えてなかったや。そもそも呪毒って治せるわけ~……?


 うーん……。私の手札を確認。

 【鑑定】、【アイテムボックス】。

 固有スキルは【野外活動アウトドア】、そんで、【野外活動車キャンピングカー】。


 私のカード……少なっ。

 よくこれで毒を治そうとか言えましたねぇ……! 誰ですかそんなこと言ったアホは!

 私ですねすんませんね……。

 まあ、私のスペックがカスなのは、今に始まったわけじゃあない。


「キャンピー。なんとかしたって」


「…………」ドンッ。


 キャンピーが自分の胸を叩く。

 この子も、天狐を治したいって思っていたんだ。


 キャンピーが、カッ……! と光り輝く……。

 そして、野外活動車キャンピングカーが出現する。


「……何度見ても人が馬車になるの、どういう理屈なのかわからないわぁ……」


 と、魔女さん。


「シッ! 静かに!」


 と、リダケンさんがたしなめる。いちおうシリアスな場面なんでね……。

 あと野外活動車キャンピングカーは入ってこれないから、ヒトガタで来たんじゃないの? って突っ込みは受け付けてませんのであしからず。


「キャンピー、どうして野外活動車キャンピングカーモードになったの?」


「…………」


 車姿なので、ジェスチャーもできやしなかった……。

 えっと……。


「あ、【鑑定】」


 私はキャンピーを鑑定する。

 所有スキルのなかに、それはあった。


~~~~~~

浄化(野外活動車キャンピングカー

野外活動車キャンピングカーを用いた浄化


治癒(野外活動車キャンピングカー

野外活動車キャンピングカーを用いた治癒

~~~~~~


 うん! 意味不明……!

 なんだよっ、野外活動車キャンピングカーを用いた浄化と治癒ってさー。


 でも、まあ【結界(野外活動車キャンピングカー)】を使ったとき、野外活動車キャンピングカーを中心とした結界が展開していた。

 浄化と治癒も、同じように、野外活動車キャンピングカーから、なんか不思議パワーが出て、呪毒を治してくれるんじゃあないかって期待しちゃうわけ。


「やっちゃえ、キャンピー! 浄化!」


 しーん……。


「あ、あれ? キャンピー? どうしたの……?」

 

 ゴゴゴゴゴゴ……! 

 野外活動車キャンピングカーが、突如として揺れ出した。

 え? やだやだ、自爆とかやーよ!?

 うぃいいん……。


「ワイパーが……移動した……? 一体何が……」


 ブシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 キャンピーの、ワイパーの付け根部分……。

 そう、窓ガラスを洗うときの、ウォッシャー液噴射口から……。

 なんか、水が、出た……!

 ウォッシャー液だ!


『ゴボボボボボボボボボボボ……!!!!!』


 キャンピーから発射されたウォッシャー液が、天狐の全身を濡らす!


『ぶはっ! そなたらぁ……!』


 天狐は起き上がると、かーっ! と牙を剥く。


『偉大なる山の神から力を授かりし、この妾、天狐の顔に、水をぶっかけるとはなんたる無礼な! 死万死に値しますよ!!』


 妾って。古風な狐だな……。

 てゆーか。


「元気になってるじゃん」


『なんですって……? ! 本当だ!』


 それに、なんか天狐の毛皮がきらっきらになっていた。

 さっきまで、床を拭いた雑巾みたいに、きったねえ毛皮だったのに。

 今はふわっふわだ。しっぽももっふもふである。正直触りたい……。


『そなたたち……一体何をしたのですか……?』


「浄化スキルを使った」


『浄化……? あのような浄化は、初めて見ました。一体あれはなんなのです、答えなさい』


「さぁ……?」


『なぜ使ったそなたがわからないのですか……。さてはそなたは阿呆なのですね?』


 むかつくわー。


「命救ってやったんだから、お礼の一つでもあってもいいんじゃあないすかね?」


『ふむ……それもそうですね』


 天狐は私……をスルーして、キャンピーの前へとやってきた。


『そなた。名を名乗るがよいです』


「…………」


『妾を無視するとは、良い度胸ですね』


「あー、この子シャイなのよ。この子はキャンピー。私は澄子」


『なるほど、スミコにキャンピーですか。妾は天狐。命を救ってくれたこと、感謝してあげましょう』


 あ、ちゃんとお礼はする感じなのね。

 悪い狐じゃあ……ないように思えた。


『しかしキャンピーとやら、そなた変わった見た目をしてますね。そなたは何者なのですか……?』


「その子は………………馬車」


『……妾を愚弄してるのです?』


「いやそういう訳じゃあないけどさ……」


 なーんて説明したらいいんですかね。

 令和の世界で作られてる、キャンピングカーなんすよって言って通じるだろうか……。


「「「「…………」」」」


 って、あれ? リダケンさん達、なんか私をじーっと見つめてる。


「どうしたんですか、皆さん」


「あ、いや……そんな恐ろしい化け物……うおほんっ、その化け狐と、よく普通に会話できるなと」


 化け狐……か。

 普通に、でっかい狐にしか見えない。

 それに、悪い奴じゃあないように思える。

 本当に悪い魔物なら、問答無用に襲ってくるだろうし。

 それこそ、人面樹トレントみたいにさ。


『なんです、そこの男どもは』


「あー……」


 いやー、あんたを殺しに来た人達なんすよー☆ なーんて言えるわけがない。

 

「この森に調査に来た人達よ。なんか、悪い奴が暴れてるって聞いてさ。あんたなんか知らない?」


『当然、知ってますよ。悪い奴でしょう……?』


「うん。教えて」


『教えてやってもよいです……が、一つ条件が』


「条件?」


 魂くれとか、ギャルのパンティーをおくれー、とかだったらどうしよう。

 いやん、パンツは渡したくないよー。……なーんてね。アラサーOLですよ、えーえ-、わかってますよ。

 クワッ、と天狐が目を大きく見開く。


『妾は……おなかがすきました! 馳走を、用意しなさい……!』


「馳走……ご飯って事」


『そうです。全力でこの妾の腹を満たしなさい。でなければ、妾は一言も語りませんよ? そなたらが知りたいことを』


 こ、こいつ……なんて偉そうな……。

 しかしまあ、食事ね。ちょうど、小腹も空いていたし……。


「いいよ。ご飯にしよっか。キャンプご飯よ」



【おしらせ】


※現在連載中の『捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる』の、


王子視点による外伝ショートストーリーを投稿しました。


『君を追放した、愚かな私』


▼澄子を追い出した王太子が、その後ざまぁされる話となってます。


https://book1.adouzi.eu.org/n1545lm/


(※ワンクリックで飛べます)


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きになったところ。 ○スキルをずっとつかってるからレベルがあがったという考えに一直線にいってるとこ。魔物を倒してレベルアップがわりとメジャーで、スキル使用で飛躍的にレベルが上がるってのはあまりみない…
こんばんは。 強い存在は腹ペコ…昨今のファンタジーものあるあるですねww
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