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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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16/31

16.化け狐討伐依頼、のはずがなぜか相手が毒で倒れてた

 黄昏の竜の面々を、隣国ネログーマとやらへ数時間で届けることができた。

 さすが、キャンピー。


 わはは! すごいぞー! かっこいいぞー!

 アルティメットには融合進化できずとも、いやすでに究極完全体ともいえるね、彼女は。

 んで、いったんネログーマのエヴァシマって街に行って、冒険者ギルドに顔を出す。


 私たちは街の外で待機。

 で、リダケンさんが帰ってきた。詳しい話を聞いてきたらしい。


「どうやら、謎の【化け狐】が、聖域の森で見かけられたそうです。それを討伐しろとのこと」


「ばけぎつね~?」


 螺旋の玉でも吐くんですかい……?


「正体については?」


「不明です。とにかく、大きくて凶暴。攻撃が一切通じず、困ってるんだそうです」


「へー……攻撃が通じない……。なんかバリア的なもんでも出てるんですかね?」


「それも、わからないそうです。とにかく、ネログーマの戦力では、その化け狐に勝てず、困ってるんだそうです」


「ふぅん……それ以上の情報は?」


 ふるふる、とリダケンさんが首を横に振る。

 ……敵が狐ってこと以外、なーんもわからないのかい……。

 大丈夫なんそれ……?


「スミーさん、ありがとうございました」


「え?」


「依頼は隣国までの輸送なんで。依頼達成です」


「あ、そっか……」


 いや、でも、なぁ……。

 う~~~~~~~~~ん。


 私は、別に聖人君子でも善人でもない。

 単なる元OLであって……正義のスーパーヒーローじゃあない。


 ない、けど……力は持ってる。

 彼らにご飯をあげたり、守ったり、魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)で魔物ぶっ殺すことも、できるわけだ。


 そんな力のある私から、か弱い彼らが、危ない橋を渡ろうとしてるのを見て……。

 はい、無関係~、とできるだろうか?


 楽しく、キャンピーと冒険できるだろうか?

 答えは……否だ。


「よろしければ、ついていきますよ? 私とキャンピー」


「「「え!?」」」


 ぎょっ、と彼らが目を剥く。なんでやねん……。


「ほら、敵は正体不明なんでしょ?」


「そ、そりゃそうですし……正直、スミーさんとキャンピーさんがいれば、とても心強いですけど……」


「でしょ? なら、ついてくよ」


「いやでも、スミーさん達は、我々の輸送がミッションであって」


「なるほど……でもね、リダケンさん。よく言うじゃあない?」


「?」


「遠足は、帰るまでが遠足だって」


 リダケンさんを聖地に送り、そして元いた街に送る……。そこまでやって、依頼達成と言える……。

 とまあ……詭弁だね。でも私は、同じ釜の飯を食べた彼らを、危ないところに放り出して、はいさいなら~はできんのである。


「スミーさんは……いい人ですね。まるで聖人……いや、聖女様だ」


「あ、あははは……そんなわけないじゃあないっすかぁ~」


 正っ解っ!(眉間指でトントン)


 ……あっぶなーい。私が聖女ってばれるところだったわ。

 なんでわかったんだろう……?


「と、とにかく、その化け狐ってやつんとこまで、送ってきます」


「でも……聖域は認められた【人】しか入れないそうです。スミーさんはともかく……キャンピーさんは……」


 カテゴリー的には車両だもんね。しかーし。


「問題ないよ。人間姿になれるから」


「そ、そっか……そうでしたね。じゃ……いきましょうか」


 ってことで、私たちは聖域とやらに、やってきたわけだ。

 直前まで野外活動車キャンピングカーで運んで貰い、そこから、キャンピーは人間にスーパー・ちぇえええんじ! する。


「…………」ぽんっ。


 可愛いろりっこメイドさん、キャンピーが出現する。


「はい、キャンピー。これから森に入るけど、大丈夫?」


「…………」ぐっ。


 キャンピーが力こぶを作る。うーん、かわいいよー。


魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)とかって出せるの?」


「…………」まるっ。


 両腕で〇を作る、キャンピーさん。あ、楽勝ですわ。

 私のレベルもどうやら515らしいし……。

 いや待て、移動してきたから、もっとレベル上がってるかも。

 まあキャンピーさんが居れば楽勝っしょ~。


「スミーさん。いきましょう」


「OK。いざゆかん」


 私たちは森の中を進んでいく。

 キャンピーは私の後ろを、まるでカルガモの子どもみたいに、えっちらおっちら歩いてくる。


 ピコンッ♪


「ん……? 何この音……?」


「どうしたんですか、スミーさん?」


「あ、いや。なんかピコンっ、て音がしなかった?」


「……?」


 リダケンさんが首を横に振る。

 お仲間さんたちも、不思議そうに首をかしげていた。ありー?

 私にしか聞こえない音なんかな?

 すると……。


 ガサガサッ……!


「!? 魔物だ!」


「まじか」


 茂みの奥から出てきたのは、顔の付いた樹だった。


人面樹トレントだ! しかも複数体いるぞ!」


 顔の付いた樹の魔物、人面樹トレントが、私たちを囲っている。


「キャンピー、いける?」


 魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)で蹴散らしてやる。 


「待ってください。スミーさんたちは力を温存してて。おれたちが、人面樹トレントをやっつけますので!」


 と、リダケンさん。なるほど、温存か。

 キャンピーの力……たとえば魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)って、何が原料になってるんだろう。ガソリン? 後で調べないと。


 ともあれ、たしかに無限に魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)を使えるとは限らない。

 その化け狐のために、力を温存しておくのは……悪くない選択だ。


「じゃあ、お願いします」


「はい! いくぞぉ!」


 リダケンさんたちが武器を手に取って、人面樹トレントに斬りかかる。


「ぜやぁ……!」


 スパーン!


「おお、やるぅ~」


「え!?」


 え……? ってなに、リダケンさん……。

 今、貴方が剣をもって、人面樹トレントをぶった斬りしたんじゃあなかったのん……?

 どうして驚いてるんだろう。


「どりゃぁ……!」


 狩人が、人面樹トレントの顔面をぶっ飛ばす。


火球ファイアー・ボール!」


 ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 魔女さんの魔法で、人面樹トレントが爆発四散。


「ぬぅうううううううううううん!」


 武闘家さんの拳で、複数体の人面樹トレントが吹き飛んで、すとらーいく! する。


 おおーやるぅ~。

 さすが、Sランク冒険者パーティ。みんなけっこーやるじゃあないですか~。(誰目線よ……?)


「り、リーダー……これって?」


「ああ……多分……」


 皆さんが、こっちを見ている。おりょ~? なんでしょう?


「とにかく、ラッキーだ。おれらでこいつらを蹴散らすぞ!」


「「「おう!」」」


 ドゴッ!

 バキッ!

 グシャァあああああああああ!


 ……とまあ、リダケンさん達が、あっちゅーまに、人面樹トレントの群れを倒してしまったわけだ。


「いやぁ、お強い」


「いや……スミーさんのおかげですよ」


「私?」


「ええ。魔物が来るの、察知してたじゃあないですか」


「は……?」


 そんなことしてたっけ……?

 と思ったけど、そういえば謎のピコン♪ 音のあとすぐに、魔物がやってきたっけ。

 もしかして、魔物が来るのを知らせる音だったのかも……。


 ピコンッ♪ 


「って、また魔物?」


「…………」


「リダケンさん……?」


 リダケンさん達が、固まってしまっていた。

 何があったんだろうと思い、彼らの見る先に、目をやる。


「!? で、でか……狐……?」


 ……とんでもない、でっかい狐が、私たちの前にふわり、と舞い降りた。

 お、お頭ぁ……! 空からお狐さまがぁ……!


 もしかして……こいつか?

 化け狐ってやつ……?


「す、スミーさん……び、ビームを」


「おう。キャンピー!」


 しかし、キャンピーは魔物ぶっ殺し光線(ハイ・ビーム)を撃とうとしない。


「どったのキャンピー? 故障っ!?」


「…………」ふるふる。


 え、違う……?

 なんだろう……と思っていると……。


 どさり、と。

 空から降ってきた、化け狐が……私たちの前で倒れたのである。


「す、すごい……スミーさん……もう倒したんですか……」


「いや……何もしてないよ。なんか勝手に倒れた……」


 まさか……。

 私は鑑定スキルを使用する。


~~~~~~

【種族】天狐

【レベル】90000

【状態】

呪毒

~~~~~~


 天狐……。レベル、90000!? やば……。

 てゆーか、そこは問題じゃあない。


「呪毒……あんた……毒を受けてるの……?」


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