16.化け狐討伐依頼、のはずがなぜか相手が毒で倒れてた
黄昏の竜の面々を、隣国ネログーマとやらへ数時間で届けることができた。
さすが、キャンピー。
わはは! すごいぞー! かっこいいぞー!
アルティメットには融合進化できずとも、いやすでに究極完全体ともいえるね、彼女は。
んで、いったんネログーマのエヴァシマって街に行って、冒険者ギルドに顔を出す。
私たちは街の外で待機。
で、リダケンさんが帰ってきた。詳しい話を聞いてきたらしい。
「どうやら、謎の【化け狐】が、聖域の森で見かけられたそうです。それを討伐しろとのこと」
「ばけぎつね~?」
螺旋の玉でも吐くんですかい……?
「正体については?」
「不明です。とにかく、大きくて凶暴。攻撃が一切通じず、困ってるんだそうです」
「へー……攻撃が通じない……。なんかバリア的なもんでも出てるんですかね?」
「それも、わからないそうです。とにかく、ネログーマの戦力では、その化け狐に勝てず、困ってるんだそうです」
「ふぅん……それ以上の情報は?」
ふるふる、とリダケンさんが首を横に振る。
……敵が狐ってこと以外、なーんもわからないのかい……。
大丈夫なんそれ……?
「スミーさん、ありがとうございました」
「え?」
「依頼は隣国までの輸送なんで。依頼達成です」
「あ、そっか……」
いや、でも、なぁ……。
う~~~~~~~~~ん。
私は、別に聖人君子でも善人でもない。
単なる元OLであって……正義のスーパーヒーローじゃあない。
ない、けど……力は持ってる。
彼らにご飯をあげたり、守ったり、魔物ぶっ殺し光線で魔物ぶっ殺すことも、できるわけだ。
そんな力のある私から、か弱い彼らが、危ない橋を渡ろうとしてるのを見て……。
はい、無関係~、とできるだろうか?
楽しく、キャンピーと冒険できるだろうか?
答えは……否だ。
「よろしければ、ついていきますよ? 私とキャンピー」
「「「え!?」」」
ぎょっ、と彼らが目を剥く。なんでやねん……。
「ほら、敵は正体不明なんでしょ?」
「そ、そりゃそうですし……正直、スミーさんとキャンピーさんがいれば、とても心強いですけど……」
「でしょ? なら、ついてくよ」
「いやでも、スミーさん達は、我々の輸送がミッションであって」
「なるほど……でもね、リダケンさん。よく言うじゃあない?」
「?」
「遠足は、帰るまでが遠足だって」
リダケンさんを聖地に送り、そして元いた街に送る……。そこまでやって、依頼達成と言える……。
とまあ……詭弁だね。でも私は、同じ釜の飯を食べた彼らを、危ないところに放り出して、はいさいなら~はできんのである。
「スミーさんは……いい人ですね。まるで聖人……いや、聖女様だ」
「あ、あははは……そんなわけないじゃあないっすかぁ~」
正っ解っ!(眉間指でトントン)
……あっぶなーい。私が聖女ってばれるところだったわ。
なんでわかったんだろう……?
「と、とにかく、その化け狐ってやつんとこまで、送ってきます」
「でも……聖域は認められた【人】しか入れないそうです。スミーさんはともかく……キャンピーさんは……」
カテゴリー的には車両だもんね。しかーし。
「問題ないよ。人間姿になれるから」
「そ、そっか……そうでしたね。じゃ……いきましょうか」
ってことで、私たちは聖域とやらに、やってきたわけだ。
直前まで野外活動車で運んで貰い、そこから、キャンピーは人間にスーパー・ちぇえええんじ! する。
「…………」ぽんっ。
可愛いろりっこメイドさん、キャンピーが出現する。
「はい、キャンピー。これから森に入るけど、大丈夫?」
「…………」ぐっ。
キャンピーが力こぶを作る。うーん、かわいいよー。
「魔物ぶっ殺し光線とかって出せるの?」
「…………」まるっ。
両腕で〇を作る、キャンピーさん。あ、楽勝ですわ。
私のレベルもどうやら515らしいし……。
いや待て、移動してきたから、もっとレベル上がってるかも。
まあキャンピーさんが居れば楽勝っしょ~。
「スミーさん。いきましょう」
「OK。いざゆかん」
私たちは森の中を進んでいく。
キャンピーは私の後ろを、まるでカルガモの子どもみたいに、えっちらおっちら歩いてくる。
ピコンッ♪
「ん……? 何この音……?」
「どうしたんですか、スミーさん?」
「あ、いや。なんかピコンっ、て音がしなかった?」
「……?」
リダケンさんが首を横に振る。
お仲間さんたちも、不思議そうに首をかしげていた。ありー?
私にしか聞こえない音なんかな?
すると……。
ガサガサッ……!
「!? 魔物だ!」
「まじか」
茂みの奥から出てきたのは、顔の付いた樹だった。
「人面樹だ! しかも複数体いるぞ!」
顔の付いた樹の魔物、人面樹が、私たちを囲っている。
「キャンピー、いける?」
魔物ぶっ殺し光線で蹴散らしてやる。
「待ってください。スミーさんたちは力を温存してて。おれたちが、人面樹をやっつけますので!」
と、リダケンさん。なるほど、温存か。
キャンピーの力……たとえば魔物ぶっ殺し光線って、何が原料になってるんだろう。ガソリン? 後で調べないと。
ともあれ、たしかに無限に魔物ぶっ殺し光線を使えるとは限らない。
その化け狐のために、力を温存しておくのは……悪くない選択だ。
「じゃあ、お願いします」
「はい! いくぞぉ!」
リダケンさんたちが武器を手に取って、人面樹に斬りかかる。
「ぜやぁ……!」
スパーン!
「おお、やるぅ~」
「え!?」
え……? ってなに、リダケンさん……。
今、貴方が剣をもって、人面樹をぶった斬りしたんじゃあなかったのん……?
どうして驚いてるんだろう。
「どりゃぁ……!」
狩人が、人面樹の顔面をぶっ飛ばす。
「火球!」
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
魔女さんの魔法で、人面樹が爆発四散。
「ぬぅうううううううううううん!」
武闘家さんの拳で、複数体の人面樹が吹き飛んで、すとらーいく! する。
おおーやるぅ~。
さすが、Sランク冒険者パーティ。みんなけっこーやるじゃあないですか~。(誰目線よ……?)
「り、リーダー……これって?」
「ああ……多分……」
皆さんが、こっちを見ている。おりょ~? なんでしょう?
「とにかく、ラッキーだ。おれらでこいつらを蹴散らすぞ!」
「「「おう!」」」
ドゴッ!
バキッ!
グシャァあああああああああ!
……とまあ、リダケンさん達が、あっちゅーまに、人面樹の群れを倒してしまったわけだ。
「いやぁ、お強い」
「いや……スミーさんのおかげですよ」
「私?」
「ええ。魔物が来るの、察知してたじゃあないですか」
「は……?」
そんなことしてたっけ……?
と思ったけど、そういえば謎のピコン♪ 音のあとすぐに、魔物がやってきたっけ。
もしかして、魔物が来るのを知らせる音だったのかも……。
ピコンッ♪
「って、また魔物?」
「…………」
「リダケンさん……?」
リダケンさん達が、固まってしまっていた。
何があったんだろうと思い、彼らの見る先に、目をやる。
「!? で、でか……狐……?」
……とんでもない、でっかい狐が、私たちの前にふわり、と舞い降りた。
お、お頭ぁ……! 空からお狐さまがぁ……!
もしかして……こいつか?
化け狐ってやつ……?
「す、スミーさん……び、ビームを」
「おう。キャンピー!」
しかし、キャンピーは魔物ぶっ殺し光線を撃とうとしない。
「どったのキャンピー? 故障っ!?」
「…………」ふるふる。
え、違う……?
なんだろう……と思っていると……。
どさり、と。
空から降ってきた、化け狐が……私たちの前で倒れたのである。
「す、すごい……スミーさん……もう倒したんですか……」
「いや……何もしてないよ。なんか勝手に倒れた……」
まさか……。
私は鑑定スキルを使用する。
~~~~~~
【種族】天狐
【レベル】90000
【状態】
呪毒
~~~~~~
天狐……。レベル、90000!? やば……。
てゆーか、そこは問題じゃあない。
「呪毒……あんた……毒を受けてるの……?」
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