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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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15/31

15.こたつとシチューでくつろいでいる間に、隣国へ着いちゃいました

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 おっす、おら乗鞍のりくら 澄子。


 アインスの街ってところで、冒険者&商業ギルドに登録したぞ。

 これで異世界を自由に放浪できるぞ……!


 ってなわけで、私はアインスの街を離れ、とある場所へと向かって、相棒キャンピーを飛ばしていた。


「いやぁ、すみません、スミーさん。おれらを、運んで貰っちゃって」


 私が運転してるキャンピーの荷台に、S級冒険者パーティ、黄昏の竜の面々が乗っている。

 そう、私は彼らを乗せて、【とある場所】へ移送中なのだ。


 ……事の発端は、昨日。

 宿屋にて。


『スミーさん。実は、依頼したいことがあります。おれたちを、隣国ネログーマの、【聖域】まで連れて行ってほしいんです』


 ネログーマっていうのは、私たちがいる国のお隣さんらしい。

 で、ネログーマには聖域ってよばれる大森林があるんだそうだ。


 隣国から、彼ら黄昏の竜宛てに、直接魔物討伐の依頼が来たんだってさ。

 で、しかも緊急の依頼とのこと。


 しかしネログーマまでは、馬車を使っても十日はかかる。

 それじゃあ、遅い。直ぐにでも、聖域に来て欲しい。


 じゃあ……どうする?

 で、私にお鉢が回ってきたってわけ。


「いえいえ、ちゃんとお金貰ってますし、気にしないでください」


 我が相棒キャンピーは、この世界唯一の、ガソリン駆動の自動車キャンピングカーだ。

 正直、この世界で一番速く走れる馬車は、キャンピー以外にない。

 だから、彼らは私を頼ることにしたようだ。


 キャンピーは朝からとんでもない速さで走ってる。

 昨日お金をゲットし、燃料ガソリンは満タン。

 ガソリン切れを起こす心配もなっしん。


 私たちはエンジンをぶいぶい吹かせながら、草原を猛スピードで走って行く。


「……魔物討伐かぁ。どんな魔物なんですかね」


 と、私はリーダーのリダケンさんに尋ねる。


「具体的な話はまだ。ただ、とんでもなく強い魔物が現れて、困ってるとのことだけ」


「ほーん……とんでもなく強い魔物、ねえ……」


 ……この人達だけで大丈夫なのかな。

 いやまあ、リダケンさんたちって、実はこの世界最強の冒険者の一角らしいんだけども。

 どーにも、最初の印象があるから(遭難してるところを見てるからか)、強いってイメージないんだよね~。


 失礼か。失礼だな。うん、言わないでおこう。私は私の仕事をするだけさ。


 キャンピーはぐんぐんとネログーマへ向かって走って行く。

 そろそろ正午になる。


「キャンピー、自動操縦よろしく。お昼ご飯作ってくるから」


 カーナビに【OK】と表示が出た。


「うぉっ。きゃ、キャンピー……そんな器用なことできるの?」


【YES】だって。かーわーいー。


「もしかしてカーナビを使えば、普通に会話できたり……」


【NO】


「あら、どうして?」


【(/ω\*)】


 照れくさいみたいだ。か、可愛すぎないか……ちょっと君ぃ~。

 私はキャンピーに自動操縦を任せて、荷台へと向かう。


「はぁ~……」「きもちええ~……」「らくぅ~……」


 ……黄昏の竜の面々は、リビングスペースにある、こたつに足を突っ込んでいた。

 ほげーっとした顔で、ちょーリラックスなさっている。


「スミーさん……乗り心地、最高っすよぉ~。この馬車ぁ~」


「こんな素晴らしく快適な乗り物、今まで乗ったことないわぁ!」


 そりゃよかった。我が子(※キャンピー)を褒められて、お母さん鼻高々ですわい(※産んでない)。


「そろそろお昼にしますねー」


「「「昼ご飯まで用意してくださるんですか!?」」」


「ええまあ、私の依頼は、【聖域までの輸送】なんで」


 それまでに掛かることがら……たとえばお昼ご飯の用意も、含まれてるんですわ。

 まあそれに私自身もお腹空いてるしね。


 ということで、お昼ご飯です。

 キッチンスペースへと移動。


 冷蔵庫の中から、新鮮なお野菜! 牛乳! そして……鶏もも肉を取り出す!

 全部……KAmizonで購入しました。


 ふふ……もう現金たった3万円の女じゃあないんですよ。

 胡椒を売ったお金で、莫大な利益を手に入れた私。

 それを使って、私は買い物をしたのだっ。

 もうこれでお金に困る心配は……ない! ……まあ、使いすぎ注意だけど。


 向こうもそうだったけど、こっちの世界も、生きてるだけで金がかかっちゃうし。

 キャンピーのご飯(※ガソリン)も、KAmizonで買わないといけないしねー。


 それはともかく。

 私はお昼ご飯を作る。


 まず、鍋を用意。

 鍋に、切った野菜を入れる。そしてお湯を入れる。

 しばらく煮て、アクを捨てる。

 そして……取り出したるは、シチューの素!


 KAmizonで購入いたしましたの、シチューの素。

 これさえあれば誰でも簡単に、シチューが完成する。


 私は別に料理上手の若君じゃあない(誰が若君やねん……)。

 普通のOLだ。だから、普通の料理しかできん。えっへん。

 野菜&肉を煮込み、シチューの素&牛乳を投入する。


 そんで……完成……!


「料理できましたよー」


「「「待ってましたー!」」」


 リダケンさん達がこたつにインした状態で、歓声を上げる。

 ……どうでもいいけど、おこたに、鎧などを着込んだ西洋ファンタジーファッションの人が入ってるの、すっごいミスマッチよねぇ……。


 言わんけど。異世界人ってことは隠してるし……。隠せてるかな……? 隠せてるよね? 隠せてるってことにしちゃってちょ。


 私は作ったお鍋ごと、こたつの元へ持っていく。

 そんで、シチューをお皿に注ぐ。


「うっはー! すんげー! スープに色がついてるよお!」


 お仲間のひとりが、目を輝かせて言う。

 いや色って……。


「野営って基本、冷たいものか、固いものしか食えないからねぇい。温かい汁物が、まさか食べれるなんて……」


「しかもこんな濃厚で、美味しそうなスープ! こんなおいしそうなのが、移動中に食えるなんて……! さ、最高だぁ~……」


 まー、そっか。中世ファンタジー世界の野営で食べれるものっていえば、固いパンだったり、干し肉だったりと、腐らないものがデフォだもんね。

 こんな風に温かいものはありつけないのか。

 お皿に注いだシチューを、リダケンさん達が食べる。


「うっめー!」


「最高にうまい……!」


「ずずう……ずずるるるうぅうううう! ぷはー! おかわり!」


 みんなあっという間に、食べ終わっちゃった。

 うむ、さすがは日本のシチュー。食品会社の、企業努力に……敬礼!


 私もたーべよっ。うん、うまい。

 やっぱ凝った料理よりも、こうした普通の家庭料理のほうが美味しいわ~。


 濃厚なスープ。ほくほくのジャガイモ。

 とろけるにんじん。しゃきしゃきのタマネギ。


 ……そしてなにより、シチューを吸って柔らかくなった、鶏もも肉!

 もうね、これ……うますぎ。煮込んだ鶏もも肉、とろっとろすぎる!


「はぁ~……♡ この肉、うめえ……」


「こんな柔らかい肉、いったいどこで獲ってきたんだろう……」


「わからん、わからんが……うめええ……」


 品種改良なんてものが存在しない異世界の人達に、美味しく食べられるために育てられた鶏さんたちのお肉は、とっても美味しく感じられるみたいだ。

 みんな……ガチで泣いていた。そこまで……?

 そこまで、なんだろうなぁ。


 っと、キャンピーが停止する。


「どうしたの、キャンピー」


 何かトラブったんだろうか……?

 すると、リダケンさんが窓の外を見て、ぎょっと目を剥く。


「ね、ネログーマだ!?」


「ふぁ……!? うそだろぉお!?」


 ……え?

 ネログーマって……たしか目的地の、隣国だったような……。


「いや、まさか……たしかに隣国だとはいえ、まさか出発して数時間で到着するわけがぁ……」


 と、リダケンさんの仲間の魔女さんが窓の外を見て……。


「どしぇええええええええええ!」


 とひっくり返った。どしぇーってなんやねん……。


「ほ、ほんとに着いてるわぁ……。馬車で十日かかる距離を、たった数時間で……着くなんて……!」


 仰天する皆さん。

 リダケンさんが戦慄の表情でつぶやく。


「しかも、道中戦闘は一切なく、さらに体力も温存できてる。気力も十分な状態で、戦闘に挑める……。これは、とんでもないぞ……キャンピングカーとやら」


 そんな、こたつにぬくぬく浸かった状態で、キメ顔で言われましてもね……。


「ま、何はともあれ、お疲れキャンピー。ありがとね、運転」


 カーナビに【(/ω\*)】と映った。うーん、可愛い。


【※お知らせ】


王子視点による外伝ショートストーリーを投稿しました。


『君を追放した、愚かな私』


▼澄子を追い出した王太子が、その後ざまぁされる話となってます。


https://book1.adouzi.eu.org/n1545lm/


(※ワンクリックで飛べます)

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