15.こたつとシチューでくつろいでいる間に、隣国へ着いちゃいました
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
おっす、おら乗鞍 澄子。
アインスの街ってところで、冒険者&商業ギルドに登録したぞ。
これで異世界を自由に放浪できるぞ……!
ってなわけで、私はアインスの街を離れ、とある場所へと向かって、相棒キャンピーを飛ばしていた。
「いやぁ、すみません、スミーさん。おれらを、運んで貰っちゃって」
私が運転してるキャンピーの荷台に、S級冒険者パーティ、黄昏の竜の面々が乗っている。
そう、私は彼らを乗せて、【とある場所】へ移送中なのだ。
……事の発端は、昨日。
宿屋にて。
『スミーさん。実は、依頼したいことがあります。おれたちを、隣国ネログーマの、【聖域】まで連れて行ってほしいんです』
ネログーマっていうのは、私たちがいる国のお隣さんらしい。
で、ネログーマには聖域ってよばれる大森林があるんだそうだ。
隣国から、彼ら黄昏の竜宛てに、直接魔物討伐の依頼が来たんだってさ。
で、しかも緊急の依頼とのこと。
しかしネログーマまでは、馬車を使っても十日はかかる。
それじゃあ、遅い。直ぐにでも、聖域に来て欲しい。
じゃあ……どうする?
で、私にお鉢が回ってきたってわけ。
「いえいえ、ちゃんとお金貰ってますし、気にしないでください」
我が相棒キャンピーは、この世界唯一の、ガソリン駆動の自動車だ。
正直、この世界で一番速く走れる馬車は、キャンピー以外にない。
だから、彼らは私を頼ることにしたようだ。
キャンピーは朝からとんでもない速さで走ってる。
昨日お金をゲットし、燃料は満タン。
ガソリン切れを起こす心配もなっしん。
私たちはエンジンをぶいぶい吹かせながら、草原を猛スピードで走って行く。
「……魔物討伐かぁ。どんな魔物なんですかね」
と、私はリーダーのリダケンさんに尋ねる。
「具体的な話はまだ。ただ、とんでもなく強い魔物が現れて、困ってるとのことだけ」
「ほーん……とんでもなく強い魔物、ねえ……」
……この人達だけで大丈夫なのかな。
いやまあ、リダケンさんたちって、実はこの世界最強の冒険者の一角らしいんだけども。
どーにも、最初の印象があるから(遭難してるところを見てるからか)、強いってイメージないんだよね~。
失礼か。失礼だな。うん、言わないでおこう。私は私の仕事をするだけさ。
キャンピーはぐんぐんとネログーマへ向かって走って行く。
そろそろ正午になる。
「キャンピー、自動操縦よろしく。お昼ご飯作ってくるから」
カーナビに【OK】と表示が出た。
「うぉっ。きゃ、キャンピー……そんな器用なことできるの?」
【YES】だって。かーわーいー。
「もしかしてカーナビを使えば、普通に会話できたり……」
【NO】
「あら、どうして?」
【(/ω\*)】
照れくさいみたいだ。か、可愛すぎないか……ちょっと君ぃ~。
私はキャンピーに自動操縦を任せて、荷台へと向かう。
「はぁ~……」「きもちええ~……」「らくぅ~……」
……黄昏の竜の面々は、リビングスペースにある、こたつに足を突っ込んでいた。
ほげーっとした顔で、ちょーリラックスなさっている。
「スミーさん……乗り心地、最高っすよぉ~。この馬車ぁ~」
「こんな素晴らしく快適な乗り物、今まで乗ったことないわぁ!」
そりゃよかった。我が子(※キャンピー)を褒められて、お母さん鼻高々ですわい(※産んでない)。
「そろそろお昼にしますねー」
「「「昼ご飯まで用意してくださるんですか!?」」」
「ええまあ、私の依頼は、【聖域までの輸送】なんで」
それまでに掛かることがら……たとえばお昼ご飯の用意も、含まれてるんですわ。
まあそれに私自身もお腹空いてるしね。
ということで、お昼ご飯です。
キッチンスペースへと移動。
冷蔵庫の中から、新鮮なお野菜! 牛乳! そして……鶏もも肉を取り出す!
全部……KAmizonで購入しました。
ふふ……もう現金たった3万円の女じゃあないんですよ。
胡椒を売ったお金で、莫大な利益を手に入れた私。
それを使って、私は買い物をしたのだっ。
もうこれでお金に困る心配は……ない! ……まあ、使いすぎ注意だけど。
向こうもそうだったけど、こっちの世界も、生きてるだけで金がかかっちゃうし。
キャンピーのご飯(※ガソリン)も、KAmizonで買わないといけないしねー。
それはともかく。
私はお昼ご飯を作る。
まず、鍋を用意。
鍋に、切った野菜を入れる。そしてお湯を入れる。
しばらく煮て、アクを捨てる。
そして……取り出したるは、シチューの素!
KAmizonで購入いたしましたの、シチューの素。
これさえあれば誰でも簡単に、シチューが完成する。
私は別に料理上手の若君じゃあない(誰が若君やねん……)。
普通のOLだ。だから、普通の料理しかできん。えっへん。
野菜&肉を煮込み、シチューの素&牛乳を投入する。
そんで……完成……!
「料理できましたよー」
「「「待ってましたー!」」」
リダケンさん達がこたつにインした状態で、歓声を上げる。
……どうでもいいけど、おこたに、鎧などを着込んだ西洋ファンタジーファッションの人が入ってるの、すっごいミスマッチよねぇ……。
言わんけど。異世界人ってことは隠してるし……。隠せてるかな……? 隠せてるよね? 隠せてるってことにしちゃってちょ。
私は作ったお鍋ごと、こたつの元へ持っていく。
そんで、シチューをお皿に注ぐ。
「うっはー! すんげー! スープに色がついてるよお!」
お仲間のひとりが、目を輝かせて言う。
いや色って……。
「野営って基本、冷たいものか、固いものしか食えないからねぇい。温かい汁物が、まさか食べれるなんて……」
「しかもこんな濃厚で、美味しそうなスープ! こんなおいしそうなのが、移動中に食えるなんて……! さ、最高だぁ~……」
まー、そっか。中世ファンタジー世界の野営で食べれるものっていえば、固いパンだったり、干し肉だったりと、腐らないものがデフォだもんね。
こんな風に温かいものはありつけないのか。
お皿に注いだシチューを、リダケンさん達が食べる。
「うっめー!」
「最高にうまい……!」
「ずずう……ずずるるるうぅうううう! ぷはー! おかわり!」
みんなあっという間に、食べ終わっちゃった。
うむ、さすがは日本のシチュー。食品会社の、企業努力に……敬礼!
私もたーべよっ。うん、うまい。
やっぱ凝った料理よりも、こうした普通の家庭料理のほうが美味しいわ~。
濃厚なスープ。ほくほくのジャガイモ。
とろけるにんじん。しゃきしゃきのタマネギ。
……そしてなにより、シチューを吸って柔らかくなった、鶏もも肉!
もうね、これ……うますぎ。煮込んだ鶏もも肉、とろっとろすぎる!
「はぁ~……♡ この肉、うめえ……」
「こんな柔らかい肉、いったいどこで獲ってきたんだろう……」
「わからん、わからんが……うめええ……」
品種改良なんてものが存在しない異世界の人達に、美味しく食べられるために育てられた鶏さんたちのお肉は、とっても美味しく感じられるみたいだ。
みんな……ガチで泣いていた。そこまで……?
そこまで、なんだろうなぁ。
っと、キャンピーが停止する。
「どうしたの、キャンピー」
何かトラブったんだろうか……?
すると、リダケンさんが窓の外を見て、ぎょっと目を剥く。
「ね、ネログーマだ!?」
「ふぁ……!? うそだろぉお!?」
……え?
ネログーマって……たしか目的地の、隣国だったような……。
「いや、まさか……たしかに隣国だとはいえ、まさか出発して数時間で到着するわけがぁ……」
と、リダケンさんの仲間の魔女さんが窓の外を見て……。
「どしぇええええええええええ!」
とひっくり返った。どしぇーってなんやねん……。
「ほ、ほんとに着いてるわぁ……。馬車で十日かかる距離を、たった数時間で……着くなんて……!」
仰天する皆さん。
リダケンさんが戦慄の表情でつぶやく。
「しかも、道中戦闘は一切なく、さらに体力も温存できてる。気力も十分な状態で、戦闘に挑める……。これは、とんでもないぞ……キャンピングカーとやら」
そんな、こたつにぬくぬく浸かった状態で、キメ顔で言われましてもね……。
「ま、何はともあれ、お疲れキャンピー。ありがとね、運転」
カーナビに【(/ω\*)】と映った。うーん、可愛い。
【※お知らせ】
王子視点による外伝を投稿しました。
『君を追放した、愚かな私』
▼澄子を追い出した王太子が、その後ざまぁされる話となってます。
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