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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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13/31

13.大金ゲット、あんどSランク商人になる

……胡椒を売ったら、なんかVIPルームに通された。

 ふわふわのクッションと絨毯。落ち着いた雰囲気のお部屋。しかし、調度品はどれもお高いんだろうことがうかがえる。


 ……そんな部屋のソファに、私は座っていた。ひぇえ……何が起きてるって言うの……?


「お待たせして申し訳ない」


 部屋に入ってきたのは、40代くらいのナイスミドル。

 整った顔つきと髪型、そして高そうなスーツに身を包んでいた。


「初めまして、スミーさん。わたしはこのギルドのギルマス、ヘンギルと申します」


 ヘンギルさんが慇懃に頭を下げてくる。


「あ、スミーです……はい……あの……私、何か粗相でもしてしまったでしょうか?」


「いえ、違いますよ。ああ、急に呼び出されて、驚いてしまわれてるようですね。申し訳ない」


「あ、いや……」


 ヘンギルさんが私の前に座る。

 ソファの前に、テーブルがある。

 彼はテーブルの上に、私の提出した胡椒入りの革袋を置いた。


「拝見させてもらいました。胡椒、でしたね」


「あ、はい」


「一般に流通してる胡椒とくらべ、貴女が持ってきたこれには、混じりけもなく、香りも素晴らしく……そして、味。これも、最高です」


「ど、どうも……」


 まあこの世界より技術が進んだ世界から、取り寄せた胡椒ですから……。


「ここまで質の良い胡椒は初めてみました。……それで」


 うっ、嫌な予感。この後に続くセリフが、目に浮かぶ……。


『どこで、仕入れてきたのか?』


 と。だよね、そうなるよね。


「スミーさん、よろしければ……この胡椒、これくらいで取引させてもらえないでしょうか」


「あ、え……?」


 ヘンギルさんは、懐から鈴を取り出す。

 ちりりん。


 白髪の老執事が入ってくる。その手にはお盆、そして……その上には革袋。

 スッ……と執事が私の前に革袋を差し出してくる。


「えっと……中を見ても?」


「もちろん」


「じゃあ……」


 私は革袋を持ち上げる。……ずっしり重かった。

 ヒモを開けると……そこには、ひぇええ……!


 ぴっかぴかの、金貨がたっくさん入ってます!


「この胡椒、500gありますね」


 ……今更だけど、こっちもグラム使うんだ。異世界なのに。日本と同じなのってどういう理屈なんだろう……。

 わかりやすいけど。


「1g、金貨1枚で、取引できないでしょうか」


「ご!? 金貨……ご、500枚ですか?!」


 日本円で、500万円ってことだよ!?

 ホムセンで買った、数百円もしない胡椒が、500万円に!?


 す、すご……。地球の胡椒、こんなに高く売れるなんて……。


「な、なんでこんな高く……?」


「もとより胡椒は高く、売り買いされてます。この胡椒はそんな一般的に流通されているものより、遙かに質がいい。異次元の製法で作られてる」


 そらまあ、この世界ではない世界で作られてますけども……。

 それにしても、1g=金貨1枚 (1万円) って……。ヤバすぎでしょ……。


「どういたしますか?」


「あ、はい! それで取引お願いします! あ、これで全部なんで、これ以上は出せないです!」


 そう言っておかないと、もっとくれって言われかねない……。

 しっかし……予想以上に売れるな、現実の調味料。


 高値で売れるのは、私にとっては好都合だ。けど……あんまり沢山は売れない。

 目立つし、それに……絶対に権力者が絡んでくるからね。


「じゃ、あっしはこれで……えっへへ……」


 あんまり長居はしたくなかった。


「少し、待っていただけないかな?」


 ひぃ、来た。きっと『どこで仕入れたんだね』的なこと言われるぞ。

 故郷の秘密の製法で作られた、それっきりしかない胡椒だ、と答えてやるんだ。


「こちらをどうぞ」


 さっきの老執事が、私にカードを差し出してくる。

 冒険者ギルドでもらったのと、同じような形をしていた。


「もしかして……商業ギルド証です?」


「ええ、スミーさんのです。受け取ってからお帰りください」


 あれ? なんかあっさり帰れそうだ……。

 もっといろいろ言われるかなーっとか、面倒な質問がくるかなーって思ってたんだけど……。


「って、えええええ!?」


 ギルド証を受け取り、その表示を見て……私は叫んでしまった。


「ヘンギルさん……これ、『S』って書いてあるように、見えるんですけど……」


「そうですよ、スミーさんはSランク商人です」


「いやいやいやいやいや、Fラン商人でいいですって!」


 冒険者ギルドと違い、商業ギルドランクをあげるためには、ランクに応じた登録料、および年会費を払う必要があるのだ。


 Sランの年会費は、なんと金貨1000枚だ。一千万円だよ? 年間!


「そんなの払えるわけが……」


 ない、と言いかけて、意外といけそうだなと思ってしまった。

 だって胡椒を売って500万円ゲットしたばっかりだし……。


 これをもう一回繰り返せば、年会費は払える……けど!


「そんな毎年金貨1000枚も払えないですって!」


「大丈夫、スミーさんは特別に、年会費無料でいいです」


「はぁ……!? ね、年会費無料で、え、Sランク!?」


 いやいやいやいや!

 ナニイッテルノ!?


「なんでそんな、特別待遇なんですか……」


「先行投資です」


「せ、先行投資……?」


「はい。スミーさんとは、今後とも、【仲良く】していきたいなと……」


 ……このギルマス、多分私が、この胡椒、およびそれと同等の品を今後も売ることを、見抜いているんだ。


 それを、よそに持ってかないように、囲おうとしてるんだ……。

 でも、はっきり囲うと、明言はしていない。それに、私の背景についても、追求してこない。


 ……ようは、余計なことを言わない、しない代わりに、物を売って欲しい、って言いたいんだろう。


「スミーさんはご存じないかもしれませんが、ここSランク商業ギルド【銀翼商会】は、どこの街でも1つは、店舗があります」


「銀翼商会……へえ……」


 Sランクギルドだったんだ……。


「そのギルド証があれば、【面倒ごと】なく、商品の取引は可能です。それに、Sランのギルド証があれば、どこへ行っても商売できます。し、銀翼が関わってないとこで商売したとしても、我らが後ろ盾となって、余計な口を挟めないようにできます」


 ……なんか、メリットいっぱいだ。しかも年会費も要らないんでしょ……?

 良いことづくめじゃんっ。でも……。


「……デメリットも、ありますよね。たとえば……この商会の商人になれとか」


「とんでもない! スミー様は、別に我が商会に所属する必要はございません。好きに行商なさってください。街へついたとき、我がギルドを見かけたら、よそではなくうちを優先してくれたらうれしいなぁ……くらいですかね」


 ……あくまで、私を縛らないつもりらしい。

 ……変わった人だな、とちょっと思ってしまった。

 目の前にネギしょったカモがいるのに、ロープでぐるぐる巻きにしないんだもの。


「いかがいたします?」


 ……悪意は感じない。それに、私にとってメリットしかないし。

 うん……。


「わかりました。じゃあ……なります。Sランク商人に」


「ありがとうございます! ……ところで、他にも何か我らに売れるものとか、ございませんでしょうか?」


 ……こいつ。私がSランクになることを承諾した後に、話を切り出してきやがった。

 断りにくいタイミングで……。


 ……はぁ。まあ、いいか。この人、自分のところに私を縛り付けないって言ったし (言外で) 。


「塩があります」


「ほう! ぜひ、拝見したいですっ」


 ……その後、ホムセンで買ったやっすい塩が、1g、銀貨1枚で売れました。


 結果、今回の儲け、金貨500、銀貨500枚。

 金貨1枚一万円→500万円。

 銀貨1枚千円→50万円。


 合計、550万円……ゲットしました。

 現実世界のホムセンで、数千円のものが、異世界では550万円で売れるなんて……!


 こんなのチートや、チーターや!

 現実で、ブラック企業に毎日アホみたいに夜遅くまで働いていたのが、馬鹿みたいだよー……!


 ひゃっほーい!


【作者からお願いがあります】


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― 新着の感想 ―
ちょっとだけ疑問?金貨が一万円って安いなぁと思っちゃった、分かりやすい様にしてると思うんですが
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