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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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12/31

12.商業ギルドで胡椒売ったら、大騒ぎになった


 なんかレベル515とかになっていた……。

 どうやら私のスキル、野外活動アウトドアを持っていると、外に居るだけでレベルアップするみたい。


 野外活動車キャンピングカーという、外に居ながら安心安全に生活できる相棒がいるおかげで、外で移動・寝るだけで強くなれる。


 ……まあ、強くなった、だから何って感じだけども。

 ネット小説とか見てると、主人公がもの凄い力で、敵をぼかーん! と吹っ飛ばしてるシーンを多々見る。


 でも……私はそれを見ても、うらやましいとは思わない。

 暴力って普通に嫌だし。


 それに、強くなりたいって気持ちにも、共感できない。孫○空の気持ちもさっぱり理解できないんだよね。


 まあ、ようは、強くなって何かを成し遂げたいって気はないってこと。

 ましてや、冒険者としてガンガンガシガシ魔物を倒していくぜーヒャッハー! とはならないってこと。


 だからといって、お金が要らないわけじゃあない。そこは勘違いしないでほしい。

 あくまで、バトルに興味が無いってだけ。


「さて……ここが商業ギルドね」


 リダケンさん達とは、いったん分かれた。明日、彼らから代金をもらう予定。

 それまで解散し、各自したいことをする。


 私のしたいことは、こっち。商業ギルドだ。


「ちょっと人と会うから、おとなしくそばにいてくれる?」


「…………」


 こくんっ。

 良い子……。私はキャンピーをハグした後、ギルドの中に入る。

 こっちも、冒険者ギルドと同じく、レンガ造りのまあまあ立派な建物だ。


 ただ、商業ギルドのほうが、建物が横にも縦にも広い。

 あっちこっちで、商人が受付カウンターでしゃべっている。


 入り口も、冒険者ギルドより大きい。

 まあ、デカい荷物を持って、中に入るからだろう。


 さて……。

 私は適当に、空いてるカウンターへと向かう。


「すみません」


「ようこそ、商業ギルド・ケミスト支部へ、にゃん!」


 にゃん……?

 受付嬢さんは、猫耳をしていた。おお、じゅ、獣人だ。ファンタジーだ。凄い……。


 いやまあ、町中で獣人を見かけてはいたけども。

 こうしてちゃんと、コミュニケーションを取るのは初だ。まじまじ見てしまう。猫耳が可愛い……。


「どうしたですにゃん?」


「あ、いえ。商業ギルドに登録したいんすけど」


 話を聞くと、冒険者と商業ギルドは、別に兼任しても大丈夫だそうだ。

 冒険者ギルドは、主に、クエストの受注・魔物の買い取りを行ってる。


 商業ギルドは、それ以外のアイテムだったり、米やら塩などの調味料を、売り買いしているという。


 で、商業ギルドで物を売り買いしたり、街で物を売りたい場合は、商業ギルドに登録する必要があるんだそうだ (リダケンさん情報) 。


「冒険者さんですかにゃん?」


「あ、はい。兼任OKなんですよね」


「はいですにゃー。じゃあ、用紙に必要事項記入くださいにゃーん」


 羊皮紙が、私の前にお出しされる。こっちも冒険者ギルド同様に、名前くらいの簡単なものでよかった。

 で、こっちはステータス確認って作業は、ない。その代わり……。


「では、登録料に、金貨5枚ですにゃー」


 ……そう、登録料が、こっちは必要なのだ。

 金貨5枚、つまり五万円だ。

 そして私は所持金3万の女……。登録料は、当然……ない!


 でも大丈夫。


「ハイ、これでお願いします」


 リダケンさん達から、前借りしていたのだ。登録料については聞いていたからね。

 彼らの調査クエに対する報酬、その一部を、いただいたのである。


「はいたしかに。では、商業ギルド初のおねえさんに、ギルドランクの説明をしますにゃー」


「え、ランクなんてあるんですか?」


「ありますにゃーん。冒険者ギルドのランクよりも、ちょっといろいろ複雑ですにゃん」


 冒険者ギルドでも、簡単な説明は受けていた。といっても、最低ランクFで始まり、依頼をこなしていくと、E、D……と上がっていく。最高ランクはSと聞いた。まあこれはネット小説ではテンプレなので、聞き流していた。


 問題は、こっちだ。商業ギルドに、まさかランクがあるとは思わなかった。


「商業ギルドの場合も、冒険者同様、最低がFで、最高はSですにゃ」


「商業ギルドって、ランクってどう分かれるんですか?」


「お店、事業の規模でわかれてますにゃー」


 ランクが低いと小さな店舗、ランクが上がれば上がるほど規模を大きくしたり、複数店舗を出せるようになるんだそうだ。


「Fラン商人なら、行商OK。小規模な店舗を構えたい場合は、Dランクに成る必要があるってかんじです?」


「そーですにゃーん。最初はみんなFではじめますにゃん」


「ふぅん……なるほど……」


 とりあえず行商人 (Fランク) であれば、どの街へ行っても、ギルドとの商売はできる。

 別に、今は店を構える気はないから、それでいいや。


 ……なんで店を構えないかって?

 ヒント、その1! キャンピー!


 ヒント、その2! 私召喚者 (横☆ピース) !


 ……とまあ、旅のメンバー全員が、訳ありだからですね。

 だから、あんま長居できない。一カ所にとどまると、正体がばれちゃうからね。


 だから、行商人が一番いい。


「登録完了ですにゃーん。はいこれギルド証」


 受付嬢がカードを渡してくる。

 名前とランクが書かれてる、簡素なものだ。

 冒険者ギルドでも、同じようなものもらったな。


「そんで、おねえさんは今日は他に何かギルドにご用事あるにゃん?」


「はい。実は……売りたいものがありまして」


「ほうほう、何を売りたいんですにゃん?」


 私はアイテムボックスから、革袋を取り出す。


「くんくん……香辛料ですにゃん?」


「はい。胡椒です」


「! こ、胡椒……ですか……にゃん……。な、中を見ても?」


「ええ、どうぞ」


 キャンピーの中に常備されている、ホムセンで買ったやっすい胡椒。

 それを、小分けしたものを、提出したのだ。

 馬鹿正直に、大量に出して、目立ちたくありませんのでね。

 ちゃんと小分けしたわけですわ。


 猫受付嬢は袋を開けて、まじまじと中身を見る。

 ふっふっふ……これぞ、『現実世界のものを、異世界で高く売って儲けよう』作戦ですよ。


 こっちは、現実世界よりも科学技術で劣る。

 だから、向こうで安く大量に作れるものでも、こっちはかなりの価値が見込める……!


 ってことで胡椒を手始めに売ろうとした次第ですわ。

 こっちでも胡椒は売ってるし、それが高級品ってことは承知してる。


 ちゃんと騒ぎにならないように、小分けしておいたのだ。

 大量な胡椒を出して、一体こんな凄いたくさんの胡椒をどこで!? って騒ぎになるのが目に見えていたしね。


「ちょ、ちょっと待っててくださいにゃ!」


「はい……?」


 あれ、受付嬢さんが、奥に引っ込んでいったぞ……?

 一体なんだろう……。


「ちょ、ちょっとおねえさん……いや、スミー様!」


 ……様?


「奥の、VIPルームにご案内しますにゃ! ギルマスが、貴方様とお話ししたいと!」


 び、VIPルームぅ……?

 ぎ、ギルマスぅ……?


 え、嘘。そんな大事になったわけ……?

 い、一体どうして……?



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