11.冒険者登録で、私のレベルがヤバいことが判明
冒険者ギルドへ、冒険者登録にやってきた私。
木製の台でできた、受付カウンター。その奥に……なんとも美人さんが立っていた。
「おかえりなさいませ、リダケン様。それに、黄昏の竜の皆様」
受付嬢が丁寧に、リダケンさん達にお辞儀する。やっぱこの人ら、凄い冒険者だったんだなぁ。
「ただいま。まずは、今回の調査クエの結果だ」
魔女さんがポシェットから、羊皮紙の巻物を取り出して、何個もカウンターに乗っける。
奈落の森で見つけたものとか、出会った魔物の詳細とかが、書かれてるんだってさ。
「続いて、調査で倒した魔物、そして魔物から採れた素材も買い取りをお願いしたい」
とリダケンさん。
受付嬢さんがうなずくと、周囲をキョロキョロと見やる。
「それはどこに?」
私はうなずいて、アイテムボックスから、彼らが狩った魔物の死骸、および魔物から採取できるアイテムを取り出す。
ドサッ……!
「え、ええええええええええええええ!?」
受付嬢さんが声を張り上げる。まあ想定内。
きっとアイテムボックスを持ってることに驚いてるんだろう。
「彼らに頼まれて、私のボックスいっぱいになるまでモンスターやらなんやらを詰めておいたんです。これが限界量で……」
「し、信じられない……! なんですか、この綺麗な素材アイテムの数々は……!」
……あれ、そっち……?
私が素材化を使って、アイテムにした素材達を見て、受付嬢が目をむいてる。
「これ……大灰狼の最上質皮。こっちは女王殺蜂の長針……! どれも、採取が超超超難しいものばかりですよ!」
「へ、へえ……」
まじか、そうだったのかっ。
「それに……なんですかこのSランクモンスターの数々! さすがに、リダケンさんたちが強いってことは知ってましたけどっ、この数倒してきたのは異常ですよ! 一体全体、何がどうなってるんですか!? 貴女なにをしたんですかっ!」
リダケンさんたちが、いつも以上に魔物を狩れていたのは、多分私が作った料理バフのおかげだ。
素材アイテムを大量にゲットできたのも、私の持つ素材化スキルのおかげ。
……ようするに、どれも、私のせいだったりする。
し、しまった……目立ちたくないのにぃ~。
「受付嬢さんよ、いろいろツッコみたいだろうけど、スミーさんに問いただすのは間違ってるぜ?」
リダケンさんが私の前に立って言う。
「この魔物を倒したのは、おれら【黄昏の竜】。そんで、素材アイテムを回収したのも、おれら。この嬢ちゃんは単に、荷物を運ぶの手伝ってもらっただけさ」
「え、ええー……でも……」
「アイテムボックス持ちは、数は少ないけど珍しくはない。この嬢ちゃんは商人志望なんだ。持っててもヘンじゃあないだろ」
「いやまあ……」
「それとも、なにか? ギルドに【多大なる貢献をしてきた】、おれたち【黄昏の竜】が、不正な報告をしてるっていうのかな?」
「し、失礼しました!」
受付嬢さんが慌てて頭を下げる。
り、リダケンさん……もしかして、私のこと、かばってくれた……?
……どう見ても、怪しい私のことを?
え、いい人……。
「魔物を倒したのも、素材化したのも、おれたちだ。いいな?」
「無論です……はい……」
とりあえず、騒ぎは収まった。良かったぁ……。
てゆーか……もしかしてじゃあなく、素材化ってだいぶチートスキル……?
魔物を一切傷つけず、素材を回収できるんだから、そりゃチートか。覚えとこ……。
受付嬢さんは、職員を呼び、提出した死骸やらアイテムやらを回収していった。
「換金はおそらく一日かかると思われます」
リダケンさんがこっちをチラ見してくる。
ここまでの料理代など、払うのは明日で良いか、と聞いているのだろう。
……どうせ一泊くらいはするつもりだった。ギルド登録×2があるし。
私は、こくんとうなずいておく。
「では……次は貴方様の番ですね。冒険者ギルドに登録するんでしたね」
「あ、はい。そうです」
「では、こちらの用紙に名前をご記入ください」
予習通りだ。羊皮紙に私は、置いてあったペンで名前を書く。
ここは、偽名でも大丈夫。
『スミー』と書いておいた。もう異世界ではこの名前で通していこう。
召喚者ってバレたくないし。
「スミーさまですね。テイマーとのことですが……従魔等は?」
「今は連れて無いです」
「わかりました。従魔登録はどこの街の冒険者ギルドでもできますので、ご利用くださいね
受付嬢がさらさらと書類の、特記事項のところに、従魔アリと書く。よし……。
「では、最後に、指をお出しください」
「え? あ、はい……」
人差し指を受付嬢に向ける。
彼女は小さなまち針をとりだすと、私の指に突き刺してきた。
いた……くなかった。不思議……。
指の腹の部分から、血がにじむ。
ぽた……と羊皮紙に血が一滴たれる。
羊皮紙に、じわぁ……とインクがにじんできた。
これ、あれだ。職業を調べているんだ。
大丈夫、ちゃんとキャンピーのスキルを使って、職業欄を隠蔽しておいた。
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【名前】スミー
【種族】人間
【レベル】515
【HP】51500
【MP】51500
【攻撃】515
【防御】515
【知性】515
【職業】調教師
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……ん?
んんんんぅ!?
あれぇ……!? ステータスでてるじゃん!
調べるの職業だけじゃあなかったの!?
てゆーか、レベル……え!? レベル、515ぉ!?
「れ、レベル515ぉおお……!?!?!?」
受付嬢さんが、声を張り上げる。リダケンさんも「な、なにぃい!?」と驚いてるしっ。
え、え、嘘でしょ……?
なんで!?
私……前にレベル見たら、レベル1だったよね?
なんでいつの間に500オーバー!?
「Sランカーのリダケン様でもレベル65とかなのに、三桁って……信じられない……!」
ひぃい、どうなってるのっ。
レベル上がりすぎでしょっ。
私、全然魔物とか倒してないんですけどっ。どうなってるのよっ。
とりあえず、レベルのところに、鑑定!
~~~~~~~
職業レベル
→職業、そしてそれに付随するスキルを使用することによるレベル
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……なるほど。
私の職業は野外活動聖女。
スキル、野外活動。
効果は、野外での活動が、安全安心でできるようになる。
……裏を返すと、私のこのスキルって、外にいるときは常時発動することになる。
え、つまり……。
私、野外にいるだけで、野外活動スキルが、自動で使われた判定されて……。
結果、職業レベルが上がったってこと?
そうか! おそらく、主は外で野外活動してるだけで、レベルが上がるんだ!
なんだよそれ、外に居るだけレベルアップって。
しかも、キャンピーがいるから、外に居ても、街の中にいるときみたいに快適に生活できるからっ。
実質、何もしなくても、外でならレベル上がりまくるじゃんっ。
なにそれチートやチーターやん!
「魔道具の故障かなぁ……」
そ、それだっ!
「そうですよ、故障ですよきっと! 私こんなレベル高いわけないですしっ! やり直しを要求します!」
「あ、あ、ですよねー! ちょっとお待ちくださいねー!」
受付嬢がいったん、カウンターの奥へと帰っていく。よし!
「……キャンピー!」
「…………」
こくっ。
言いたいことはわかってる、とばかりに、キャンピーがうなずく。
アホ毛が、またみょんみょんみょん、と動く。
さすキャン (さすがキャンピーの略) 、ちゃんと私の言いたいこと、わかってるぅ!
ややあって、受付嬢が帰ってきた。
もう一度、血を、羊皮紙 (多分ステータスを計る魔道具) に垂らす。
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【名前】スミー
【種族】人間
【レベル】15
【HP】1500
【MP】1500
【攻撃】15
【防御】15
【知性】15
【職業】調教師
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「ほ、ほらぁ……! やっぱり故障でしたよっ」
「そ、そうですね……すみません、お騒がせして……」
ほぉ……と受付嬢、および私も内心で安堵の息をつく。
キャンピーの隠蔽スキルで、ステータスの数字をいじったのだ。
マジで、大事にならなくてよかった……。
それにしても、野外活動と、野外活動車のコンビ、ヤバすぎる。
外に居るだけでレベルアップするし、外に居ても中に居るのと同じくらい安全だし……。




