10.冒険者登録
「ここがアインスの……異世界の街かぁ~……」
人の姿を手に入れたキャンピーとともに、近くの街……アインスへとやってきた。
なんだか、辺境って割に人が多い印象だ。
行き交う人たちも、人間だけじゃあなく、ケモ耳やエルフ耳の人もいる。
……改めて、ファンタジー世界にきたんだなぁと思った。
「スミーさん。おれら、冒険者ギルドへ行って、報告と換金をすませようと思ってます」
リダケンさん達は、【黄昏の竜】というパーティ名で、冒険者として活動している。
彼らが奈落の森にいたのは、調査クエストのためだったらしい。
クエストの報告、そして奈落の森で倒した魔物の素材を売りに、ギルドへ行こうとしてるらしい。
「あ、じゃあ私もついてきます」
てゆーか、この人らが倒した魔物の死骸、私のアイテムボックスの中に入ってるしね。
それに……冒険者登録を済ませておきたい。
だってさー、冒険者じゃあないと、街に入るだけで銀貨3枚だよ? 3000円だよ? ただ入るだけで。
MOTTAINAI!
てことで冒険者になりたいのである。
「じゃあ、一緒にギルドへ行きましょうか、スミーさん」
「お願いします」
私たちはアインスの街を歩いて行く。
中世ヨーロッパ風の異世界だと思っていたんだけど、道路とかしっかり舗装されていた (土まるだしではあるんだけど) 。
「リダケンさん。冒険者登録って、何が必要なんですか?」
ネット小説だと、冒険者になるための試験がある。
定番の『的当て』『魔力測定』『実技』とか。
それで主人公が目立ってしまうんだ。的当てで的破壊、魔力測定で魔力測定水晶を破壊、実技で相手 (実力者) をぶっ飛ばす……。
そんな感じで目立ちまくってしまう、っていうのが定番の流れ。
……そーゆーの、ノーサンキューなんで。止めて欲しいんで。
「登録手数料に銀貨5枚 (5000円) 、あとは名前を記入するのと、職業の確認ですね」
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【名称】職業
【情報】この世界の人間に、天から授かる恩恵。
【効果】職業を授かることで、その職業に関連するスキルを得られたり、ステータスが上昇したりする。
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「職業って申告制なんです?」
「いや、ギルドには職業を調べる魔道具があるんで、そこに手を乗っけてもらう感じです」
……ってことは、職業を偽ることはできない、ってことか。
うーん……困った。
私の職業は、聖女だ。
……まあその前に、野外活動っていう謎の単語がつくけど。
いずれにせよ、聖女だ。異世界から召喚するほどだから、聖女はレアな職業なんだろう。
そんなレアジョブ持ちが、いきなり現れたら、きっとギルドは大騒ぎ&目立つことがうかがえる。
よし、対策を取ろう。
「……キャンピー。おいで」
「…………?」
てこてこ……とキャンピー (金髪ロリロボメイド) が近付いてくる。
「……君、たしか隠蔽スキルあったよね」
「…………」
こくん。
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【名称】隠蔽
【効果】姿を隠したり、ステータスを改竄したりできる。
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うちのキャンピングカーさんは、隠蔽スキルまで持っているのだ。
「……隠蔽を使って、私の職業を、……そうだな、調教師に変えて」
別に聖女以外なら何でも良かった。どうしようか考えたとき、とっさにでたのがテイマーだった。
ネット小説を読んだからかね。
「…………」
こくんっ。
キャンピーが私に手を向ける。
「…………」
みょんみょん。
……キャンピーの頭頂部から生えてるアホ毛が、ぴんぴんと動く。可愛い。
しばらくして、アホ毛の動きが止まった。
「……できた?」
「…………」
びしぃ!
どうやら、隠蔽完了のようだ。よしよし。これで、ギルドで目立つことはないだろう。
ほどなくして、私たちはレンガ造りの、立派な建物の前へとやってきた。
「【アインス冒険者ギルド】……か」
……改めてだけど、不思議な感覚に陥る。
そこには、異世界の言語で、書かれているのだ。
でも、意味がきちんとわかるのである。
リダケンさんが扉を開ける。
ガヤガヤ……となかの喧噪が耳を貫く。うっさ……。
リダケンさん越しに、私は中を見た。
手前では、酒飲んでるおっさんやら、姉ちゃんやらが沢山居た。しかもかなりの数だ。
そんで、奥には受付的なものがある。
壁には大きな掲示板が貼ってあって、いくつもの紙がピン留めされていた。
ザ・なろう冒険者ギルドって感じだ。
「リダケン? リダケンじゃあねえか……!」
手前で飲んだくれていたおっさんが、リダケンさんに気付いて、近付いてきた。
「リダケン?」
「行方不明だった黄昏の竜の!?」
「まじか! 帰ってきたのか……!」
わ……! とあっという間に、リダケンさん達が、冒険者達に囲まれた。
え、なに? なんでこんなに沢山人が集まってくるわけ……?
それだけ人気者だったってこと?
「まじすんげえ心配したぜ? ずっと帰ってこないからよぉ……」
「心配かけてすまんな、みんな。森の中でちょっとトラブってさ。帰りが遅くなってしまった」
「まー……無事で何よりだ。なにせ、アインスの街唯一のSランク冒険者パーティが、無くなっちまうのは、ギルドやおれらにとっても痛い損失だからよぉ……」
……ん?
んんっ!?
い、今……なんて……?
Sランク、冒険者ぁ……?
……ネット小説だと、Sは【SPECIAL】のS、つまり最高位の称号!
まさか……この人達、Sランク冒険者だったの!?
「リダケンぶじでよかったー!」
「ほんとほんと」
「……で、後ろの嬢ちゃん二人は?」
私、およびキャンピーを見て、冒険者がリダケンさんに尋ねてきた。
彼には、一応釘を刺しておいた。私が救ったことにはしないでって。
「知り合い。冒険者登録をしたいようだから、連れてきたんだ。ちょっと通してくれないか?」
リダケンさんが言うと、人の山が左右に分かれていく。まじで発言力のある人なんだな……。Sランクっていうのは本当らしい。
はー……。凄い人だったんだ。
「さ、受付はこっちですよ、スミーさん」
「はい。さっさとすませましょう、手続き」
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