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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
6章☆願いを込めて、選ぶんだ!の巻
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3-王都のお店へ

馬車の中から灰色のモフモフが飛び出してきます。

「食いしん坊さん!」

ドンちゃんが駆け寄ります。

「待たせてしまったかな?マイ・プチ・レディ」

食いしん坊さんがドンちゃんの前足に挨拶のキスをしました。

ドンちゃんは嬉しくてもじもじしています。

どうやらドンちゃんはノラウサギダンスを練習するうちに、だんだんと魔力を使ったり感じたり出来るようになってきたらしいのです。

特に、食いしん坊さんの魔力はすぐにわかるみたいです。


良いなぁ……と思って眺めていると、馬車の中からブランが降りてきました。

「ブラン!」

黒ドラちゃんがブランに駆け寄ります。

竜のまま突進しましたが、ブランはしっかり受け止めてくれました。

「黒ちゃん、お待たせ」

ブランもすごく嬉しそうです。


ブランは黒ドラちゃんの気のすむまで抱きつかれてから、ようやく放してもらって「さて、人間になろうか」と声をかけました。


「ふんぬっ!」

いつもの通りに黒ドラちゃんが、掛け声をかけて女の子の姿になります。

今の姿は8、9歳くらい?


森の外にお出かけしたおかげで急成長した黒ドラちゃんですが、その後だんだんと落ち着いてくると、少しづつ本来の年齢に戻りつつあったのです。


ブランは黒ドラちゃんに手を貸して馬車に乗せてあげました。

続いて食いしん坊さんとドンちゃんも、ブランの助けを借りながら乗りこみます。

と、そこでようやくブランはラウザー達に気がつきました。


「あれ、ラウザー?王都で落ち合うのかと思ったけど、ここから行くのか?」

ブランがたずねると、ラウザーがちらっとラキ様の方を見ながら答えました。

「ゲルードから、魔法の馬車で王都まで直接行けるって言われたんだけどさ、どうしてもドンちゃんに会いたいって言われて……」


そして、そばで緊張しながら立っているリュングをぐいっと前に引っぱり出しました。

「こいつ、南の砦の魔術師見習いのリュング。俺とラキ様だけじゃ心配だ、ってゲルードがつけたんだ」


リュングは直角にお辞儀をしながらブランに自己紹介をしました。

「初めてお目にかかります、魔術師見習いのリュングと申します。輝竜様とご一緒できるなんて光栄です!」

目がキラキラしていて、嬉しそうです。


「俺に対する“様”と、ブランに対する“様”はなんか違う気がする」

ラウザーはぶつぶつ言っていましたが、とりあえずラキ様に手を貸して馬車へと乗り込みました。


魔法の馬車は不思議な乗り物です。

そんなに大きくは見えないのに、5人と二匹を乗せても窮屈な感じはちっともしません。

そして、走り出すとすぐにガタンッ!と揺れました。

あわてて黒ドラちゃんとドンちゃんが窓の外を見ると、もう王都のすぐそばです。

馬車はそのまま王都の門をくぐりました。


「わぁー!何回見てもすごいよねぇ!王都って」

黒ドラちゃんが感心したように言いました。

ドンちゃんも、隣でうんうんとうなずきながら目をキラキラさせて、通り沿いの店を見ています。

と、気付くとラキ様も窓にへばりついて外を眺めていました。

ほお!とか、むむっ!とか、なんと!?とかつぶやいて、子どものように夢中になっているようです。

それを見ながらラウザーが「可愛いなあ……」なんてデレデレしながら尻尾をカミカミしています。

気付いたリュングが「陽竜様、しっぽ、しっぽ!」と注意しています。

その様子を見ながら、黒ドラちゃんはドンちゃんと顔を見合わせながらくすくす笑いました。


そして、ブランと食いしん坊さんは幸せそうにそれを眺めていました。


やがて馬車は、大通りに並ぶ一軒のお店の前に止まりました。

「さあ、まずはこのお店からにしよう」

そう言って、ブランが先に馬車を降りてみんなに手を貸してくれます。


そこは、こんな大通りに店を構えているのが不思議なほど、小さな小さなお店でした。


入口の黒い扉には、金色で文字のような模様のようなものが描かれています。

黒ドラちゃんは読めませんでしたが、扉からは何か不思議な力を感じました。

最後に馬車から降りてきたリュングが、興奮気味に声を上げました。

「ここは!テルーコの店じゃないですか!?ここで買い物するんですか!」

驚きながら、目をキラキラさせているところを見ると、このお店って、小さいけどすごいお店なのかも……。

黒ドラちゃんは胸をドキドキさせながら、ブランに促されて黒い扉をくぐりました。

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