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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
6章☆願いを込めて、選ぶんだ!の巻
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2-ご褒美はカミナリ玉

ラキ様は何をくだらないこと聞くのか?という表情をしながら続けました。

「まずは、そのふわふわを軽くムギュッとしてな」


「むぎゅ……」


背中のドンちゃんがつぶやきます。


「それから撫でくりまわし、すりすりするのじゃ」

うっとりとした表情になっています。


「なでくり、すりすり……」


またドンちゃんがつぶやきました。


黒ドラちゃんの背中からそーっと顔をのぞかせて、ドンちゃんはラキ様に聞きます。

「……ピリピリしたりしない?」

「もちろんじゃ。あ、いや、もしそなたがピリピリしたいのであれば、喜んでしてやるぞ?」

ラキ様に聞かれて、ドンちゃんは途端にふるふると首を振りました。

「したくない!したくない!ピリピリは苦手なの!」

「ならばムギュッとすりすりだけじゃ」

ラキ様がドンちゃんに答えると、ようやくドンちゃんが黒ドラちゃんの背中から降りてきました。

ラキ様が手を広げると、その中にぴょんと飛んで納まりました。


ラキ様がうれしそうに腕の中のドンちゃんに頬ずりします。

「ふわふわじゃ、ふわふわじゃ!」

ラキ様はなんだか良い匂いがします。

ドンちゃんは鼻をヒクヒクさせながら大人しくすりすりされています。


その様子を見ながら、黒ドラちゃんがラウザーに聞きました。

「ねえ、南の方にはうさぎっていないの?」

「うーん。見たこと無いなぁ。っていうか、南の方は暑いからさ、毛皮のふさふさしてる生き物ってあまり見ないんだよ」

なるほど、と黒ドラちゃんは思いました。

確かに、この間も砂漠の方ではヘビさんとかトカゲさんとしか会わなかった気がします。


しばらくドンちゃんをすりすりしていたラキ様は、満足したのか黒ドラちゃんにドンちゃんを返してくれました。

「善きかな。我を喜ばせた褒美にこれをやろう」

そう言って、ラキ様は袖の中に手をやると、小さな玉をドンちゃんの前に差し出しました。

ドンちゃんが受け取ってみると、玉の中には小さな稲光が無数に煌めいています。


「わあー!これ、すごくきれいだよ、黒ドラちゃん!」

黒ドラちゃんが覗き込むと、玉の中ではキラキラした光があふれていました。

「すごい!」


「その玉の中には、雷の力をほんの少しだけ閉じ込めてある。夜に見て見るが良い、一段と綺麗じゃぞ」

ラキ様がドヤ顔で教えてくれました。


「えー、そんな良いものがあるなら俺にもくれたって――」

後ろの方でラウザーがぶつぶつ言っています。

「お前にはいつも本物をくれてやっておるじゃろう?」

そう言いながら、ラキ様は小さな稲光をラウザーの鼻先に飛ばしました。


「ラキ様、ありがとうございます」

ドンちゃんがあらためてお礼を言うと、ラキ様はにっこり微笑んで「またそのうちすりすりさせておくれ」と優しく言いました。

ドンちゃんは斜めにかけたポシェットに、大事そうに雷玉をしまいました。

「ドンちゃん、ポシェットさっそく役に立ったね!」

黒ドラちゃんに言われて、ドンちゃんが恥ずかしそうにもじもじしながら、コクンとうなずきました。


ドンちゃんが下げているポシェットは、食いしん坊さんことグインから貰ったものなのです。

こげ茶と白の毛糸で編んであり、肩に下げる紐のところに灰色のポンポンがついています。

もちろん、食いしん坊さんの御毛製です。

守りの魔法がかけてあって、ドンちゃんのお出かけをサポートしてくれるのです。


と、ドンちゃんがギュッとポシェットのひもを握って、お耳をピンッとさせました。

「馬車がくるみたい!」

その言葉が終わらないうちに、みんなの目の前に魔法の馬車が現れました。

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