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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
5章☆見つけるのって大変なんだ!の巻
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了-王子様とダンス

緩やかに流れていた楽団の演奏が、一度止まりました。

そして、広間の真ん中に、灰色のモフモフと茶色のフワフワが腕を組んで進み出てきました。


いよいよ、猛練習の成果を見せる時、ノラウサギダンスの始まりです!


ドンちゃんと食いしん坊さんは、向かい合って交互にピョン、ピョン、と跳ねだしました。

それだけ見ていると可愛い感じです。

右足をトントン、左足をトントン、手を腰に当てて、踊りが続きます。

ドンちゃんと食いしん坊さんが向かい合ってお耳をピーンとさせました。

すると二匹の耳の間に何かキラキラしたものが見えてきました。

キラキラはどんどん増えてきます。

やがて二匹のお耳の回りをキラキラが一つの輪のようになってグルグルと周り始めました。

ドンちゃんが後ろ足をタンッ!と鳴らしました。

キラキラがパッと広がります。

今度は食いしん坊さんが後ろ足をタン!と鳴らします。

キラキラが一層広がります。

そうして二匹が交互に足を鳴らすと、キラキラの輪はどんどん広がって行きました。

広間中がキラキラで満ちて行きます。



ノラウサギダンスを眺めながら、スズロ王子は隣のカモミラ王女にそっと話しかけました。

「とても綺麗だ。待ったかいがあった」

カモミラ王女もうなずきました「ええ、短い期間でしたが、ドンちゃんも食いしん坊さんも一生懸命練習していましたから」

スズロ王子は一瞬キョトンとしてから、ふっと微笑みました。

「ダンスもそうだが、それだけじゃないよ」

王子の言葉に、カモミラ王女が首をかしげました。

「君はかくれんぼが得意だから、見つけるのにずいぶん時間がかかってしまった、ってことさ」

それを聞いてカモミラ王女は真っ赤になりました。


ちょっとだけ間をおいてから、カモミラ王女はスズロ王子にささやきました。

「もう、逃げも隠れもしません。私も大切なものを見つけましたから、この国で」

二人は静かに見つめあって、それからはにかむ様に微笑みあいました。




ノラウサギダンスは佳境を迎えています。

ドンちゃんと食いしん坊さんが、額をコツンッとぶつけると、キラキラした光と花びらが一斉に辺りに広がりました。

「わあ~!ドンちゃんたちすごいね!」

黒ドラちゃんは大喜びです。

この美しいダンスに、王様やお后様をはじめ、広間中の人たちが心からの拍手を送りました。


踊りの最後に、食いしん坊さんがドンちゃんの前にひざまずくと、前足をそっとつかみました。

そして、チュッと口づけながら「君と出会えたことは最高の喜びだ。マイ・プチ・レディ」と告げました。

ドンちゃんはドレスをちょっとつまみ、淑女の礼を返します。

そして「あた、じゃなくて、わたくしもとてもうれしいです、食いしん坊さんさま!」と言いました。

まだ鳴り止まない拍手の中でしたが、ドンちゃんと食いしん坊さんの耳には、お互いの言葉がしっかり届いていました。

拍手の中を、ドンちゃんは食いしん坊さんにエスコートされながら、退場していきます。


夢のような舞踏会は、こうして幕を閉じました。


え、黒ドラちゃんもドンちゃんも、王子と踊らなかったじゃないかって?

いえいえ、踊りましたよ。

ただし、それぞれの王子様と、ですけどね。




*****





マグノラさんは、今日も白いお花の森のお花畑の真ん中で、のんびりお昼寝しています。


一匹の蝶がひらひらと飛んできました。

白い大きな羽に水色や黄色や紫の細かい模様が少しだけ入っている、綺麗なノーランド白アゲハでした。


白アゲハはひらひらと舞いながら、マグノラさんの鼻先へすいっと、とまりました。

そして、まるで御礼をするように、羽をゆっくりとひらひらさせて、またす~っと飛んでいきました。

マグノラさんはうっすら目を開けて、白アゲハを見送りながら、かすかに微笑んだように見えました。

尻尾をユラユラと振って良い気分で眠りにつきます。


マグノラさんの周りのお花が淡く輝いて、うっとりするような香りが辺りに広がっていきました。







見つけるのって大変なんだ!の巻、

お付き合い頂いてありがとうございました。

カモミラ王女も、スズロ王子も、

無事に探し物を見つけられたようです。


黒ドラちゃんもドンちゃんも、大満足で古の森へ帰っていきました。

ちょっと一休みしたら、きっとまたお話したいことがたくさんできているかもしれません。


黒ドラちゃんのお話、お気に召していただけましたら、ぜひご感想・評価を頂けますと幸いです。

(*´ー`*)

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