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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
11章☆虹のしずくに歌うんだ!の巻
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19-呪いの中へ……



思わずうつむくと、爽やかな青空のような魔石が目に入りました。


空の魔石です。


そうです、ブランが出発の時に話してくれました。


『もし、先に進めないとか、困ったことがあったら石に触ってごらん』

『きっとどこかに想いがつながる』


黒ドラちゃんは空の魔石に触れてみました。

すーっと心が軽くなります。

もう一度ブランの言葉がよみがえります。

そう、今はまだ見つからないけど、きっとどこかで解決できる道につながっているずなんです。


「あきらめちゃ、ダメ」

黒ドラちゃんがつぶやきました。

つながる道がきっとある――


その時、リュングが「魔伝が消えました!」と叫びました。

見れば、リュングの手元にあった魔伝の紙がきれいさっぱり消えています。


「飛んで行ったの?」

ドンちゃんがリュングにたずねますが、リュングにもわからないようです。

「それが、本当に急に消えてしまって。……呪いで消えてしまったんでしょうか?」

「きっと違うよ、ちゃんとつながったんだよ」

「つながった?」

黒ドラちゃんの明るい声に、リュングが不思議そうに聞き返しました。


「空の魔石がつないでくれたんだよ。あたし、信じてる!」

黒ドラちゃんの若葉色の瞳が、明るく輝きます。


それを見ていたリュングがつぶやきました。

「そうですね、私も、私も信じます。つながったんだって、信じます!」

そして空を見上げました。


ドンちゃんも食いしん坊さんも、みんなで一緒になって、祈るような気持ちで青い空を見上げました。









魔伝が消えてから、何か起きないかとを待っていましたが、何もないまま日は傾いてきました。


「どうしよう、黒ドラちゃん」

ドンちゃんの声が震えています。

ルカ王を怒らせてしまったことに責任を感じているようです。


「大丈夫だよ、ドンちゃん。あたし絶対に信じてる。この国を出るのは、みんなで呪いを解いてからだよ」

もう黒ドラちゃんに迷いはありませんでした。

確かに今は何も変わっていないような気がします。

相変わらずケロールたちは歌えないし、虹も出ないし花も咲いていません。

でも、確かにルカ王は揺らいでいました。


何も変わっていないはずは、無いんです。


「信じてる。あたし、信じてるよ!」

黒ドラちゃんの若葉色の瞳は、相変わらず明るく輝いています。


いつしかドンちゃんも、不安を口にするのをやめていました。


その時、みんなのそばで黙りこんで夕日を浴びていたミラジさんが、ゆっくりと動き出しました。


「ミラジさん?」


「大池に参ります。きっと王は今もあそこに座っておいででしょう」


「あれだけ怒っていたのに、戻ってるかな?」

ドンちゃんが不安そうに聞き返しましたが、ミラジさんは迷うそぶりもなく進んでいきます。

その様子に、黒ドラちゃんたちも一緒に大池に向かうことにしました。



大池に着くと、ミラジさんの言う通り、ルカ王子が戻っていました。

テーブルの上には、割れたはずの茶器がきれいに並べられています。


「おや、まだいらっしゃったのですか?てっきりもうお帰りになったかと思っていましたよ」

ルカ王子が黒ドラちゃんたちに微笑みかけます。

その顔にはもう怒りはありませんでした。


「あたしたち、まだ帰れません」

黒ドラちゃんがきっぱり言いました。

けれど、ルカ王子は何も気にしていないように「そうですか」と返すだけでした。

穏やかそうな横顔は、初めの時よりも、もっともっと深くこもってしまっているようです。

呪いの中へ、自分の作った世界の中へと……


黒ドラちゃんが、何か言わなくちゃ!と意気込んだ時、リュングが「あれはっ?!」と小さく叫びました。


指さす方を見れば、南の空が真っ暗になっています。

ものすごい勢いで黒い雲が広がってきているのです。

やがて、その雲はフラック王国を覆いつくし、辺りに稲光が走り出しました。


「まさか」


リュングがつぶやいたのが先か、激しく空が光ったのが先だったのか――

轟音とともに大池の上に鮮やかな夕陽色の竜が一匹現れました。

「陽竜様!」

リュングが嬉しそうに叫びました。

背中に乗っていた美しい人が、ひらりと宙に舞いました。

稲光を身に纏い、大池の上で神々しく輝いています。



「さて、我の先触れが世話になったな」








さあ、フラック王国で奮闘する黒ドラちゃんたちに、ようやく味方が現れましたよ!

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