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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
10章☆黄金の落ち葉を手に入れるんだ!の巻
178/297

1-ふしぎな落としもの

めっきり朝晩の冷え込みが効いてきました、秋ですね。


黒ドラちゃんたちの新しいお話が始まります。

今回はタイトルも秋らしくしてみたそうです(モッチ談)


さて、それでは少しの間ですが、

古の森のみんなのお話を、どうぞ聞いてあげてください。


「ぶぶぶぶい~~~ん♪」


古の森で一番の力持ちクマン魔蜂さん、モッチは上機嫌で飛んでいました。

さっき、マグノラさんの白いお花の森から戻る時に、すっごい“お宝”を見つけちゃったのです。


「ぶぶん、ぶい~~~ん♪」


まずは黒ドラちゃんに見せてみよう!とモッチは真っ直ぐに古の森の奥へ進んで行きました。

自分が拾った“お宝”が、怯えて震えているのにも気づかずに……







古の森の奥、エメラルド色に輝く湖のそばで、黒ドラちゃんはドンちゃんとお茶を楽しんでいました。

先日、ノーランドの王宮の森にすむ食いしん坊さんのおばあさまから、ドンちゃんにクマン魔蜂マークの茶器セットが贈られてきたのです。


「やっぱりクマン魔蜂さんマークのティーカップで飲むお茶は一味違うねぇ」

うっとりつぶやく黒ドラちゃんに、ドンちゃんも笑顔でうんうんとうなずきました。

森で集めた甘々の実を食べながら「今日も良い天気だね~」なんておしゃべりしていると、おなじみの羽音が聞こえてきます。


「あれってモッチだ!」


黒ドラちゃんが立ち上がって手を振りました。

「おーい、モッチー!見て見て!ノーランド製のクマン魔蜂さん茶器セットだよ!」

手に、はちみつ入れを持ってかかげて見せます。


「ぶぶい~~~ん!」


おや、モッチのほうも見て見て!って言ってますよ?

何か黒くて丸いものを抱えています。

そのまま得意そうに頭の上にかかげて黒ドラちゃんたちのところまで飛んできました。

「ぶいん!!」

大きな羽音と対称的に、モッチはそうっと黒くてツヤツヤの玉をテーブルの上に置きました。


「モッチ、これなあに?どこで見つけたの?」

黒ドラちゃんとドンちゃんは顔を近づけて見てみました。

見たことのない丸い玉です。

大きさはモッチと同じくらい。

さすが力持ちのモッチです。

他のクマン魔蜂さんだったら、きっと運べなかったでしょう。


「ぶぶん、ぶい~~~ん!」

モッチは黒い玉を大事そうにすりすりしながら教えてくれました。

「えっ、黒い真珠?!そんなのあるの?」

黒ドラちゃんとドンちゃんんが知っているのは白くて優しい光を宿す真珠だけです。

こんな真っ黒い真珠なんて見たことも聞いたこともありません。

「ぶぶん、ぶぶい~ん!」

「マグノラさんから聞いたって?本当に?」

「ぶぶいん、ぶいん!!」

モッチはホント、ホント!って自信たっぷりに言ってます。

「黒真珠かあ……」

「ぶうん、ぶい~~~~ん!」

前にマグノラさんのところで2個の真珠を見せてもらって、その時に教えてもらったそうです。

白やピンクの他にも、黒い真珠っていうのもあって、滅多に見つからなくてすごく珍しいんだよって。

「ふうん……」


黒ドラちゃんもドンちゃんも黒真珠をじっと見つめました。


ドンちゃんがそっと前足で転がします。


コロンッ。


「真ん丸だね、黒ドラちゃん」


黒ドラちゃんも爪の先でそうっと転がします。


コロンッ。


「それに大きいね。確か、真ん丸真珠って『お高いんですよ』ってリュングが言ってたよね?ドンちゃん」


そうして夢中で見つめていましたが、黒ドラちゃんはふと思い出しました。

「でもさ、真珠って海の中の貝から採れるって聞いたよ?モッチはこれ、森の近くで拾ったんじゃないの?」

「ぶいん?ぶ……ぶん」

そういえばおかしいな、とモッチも考え始めたようです。

見つけた時には、ツヤツヤの大きな黒真珠だ!って、夢中になっちゃって気づいていなかったみたいです。


「ぶぶ~~ん」

モッチが黒真珠(仮)のそばに寄りました。

もう一度そっと持ち上げます。

抱えてクルクルまわしながらじっくり調べています。

「ぶ」

モッチが黒真珠(仮)を降ろしました。

しきりに首をかしげています。

と、3匹が見つめる中で、誰も触っていないのに黒真珠(仮)がコロッと動きました。


「?!」


と、見る間に黒真珠(仮)が伸びて広がり、歩き出しました。

テーブルの上でモッチのいる方とは逆方向へ必死に進んでいきます。

「えっ!!」

黒ドラちゃんがびっくりして声をあげました。

声に驚いたのか、その生きモノは再びクルッと真ん丸になりました。


「……」


どうやらモッチが拾ってきたのは珍しいお宝ではなくて、見たこともない虫のような生きモノだったようです。

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