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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
9章☆迷ってばかりで進めないんだ!?の巻
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おまけ キーちゃんのひとりごと

こんにちは。

紫陽花のきれいな季節になりました。

エステンコーモリのキーちゃんが、その後のエステンでの様子をちょこっとだけ語ってくれました。

短いお話ですが、小さいお口を一生懸命動かして伝えてくれたので、どうぞ聞いてあげてください。

こんにちは。

あたし、エステンコーモリのキーちゃんです。

あのね、はじめに「キーちゃん」って呼ばれた時、すごく変な感じだったの。

だって、あたしたちエステンコーモリはみんな「キー」って鳴くでしょ?

だから、エステンにきたら森はキーちゃんだらけになっちゃう。

可笑しいな、って。


でも、バルデーシュで知り合ったみんなから「キーちゃん、キーちゃん」って呼ばれているうちに、この名前がとても好きになったんだ。

良いよね?キーちゃんって、可愛いよね?



そんなわけで、エステンに帰っても、あたしはキーちゃんてことになってるの。

他のみんなも「キー!」って鳴くけど、この名前はあたしだけのもので良いんだって。

みんなすごく優しくしてくれて、やっぱり森に帰れて良かったな、って思ったよ。


あのね、アズール王子と一緒に帰ってから、あたしはすぐに森に返されちゃったから知らなかったんだけど、王子と王様はとても仲良くなったんだよ。

以前、アズール王子はいつも暗い顔してたんだけど、顔つきが明るくなって別人みたい。

ううん、ちょっと太ったとか、そういうことは関係ないと思うんだけど……

ま、確かにちょっとだけ太く…じゃなくて、たくましくなった!そう、たくましくなったんだ!!うん。

最近は森にも昼間に来てくれるんだよ。


「緑が美しいね、ここも」って言ってくれるの。

「ここも」って言いながら嬉しそうに森を見回すの。

森は前から綺麗だし、何も変わっていないと思うけど、王子様の方が変わったのかな?

前はいつも下ばかり見てたからね。


そうだ、今度ね、バルデーシュの職人さんがたくさんエステンにおべんきょうに来るんだって。

「エステンの伝統的な工芸技術と、アズールの繊細な芸術性を知らしめる一大イベントだで!」

って、森に来たロド王がでっかい声で得意そうにしゃべってたの。


あ、ロド王って言えばね、アズール王子がバルデーシュに出て行っちゃってから、すっかり元気がなくなっちゃってたんだって。

とてもそんな風には見えないけどね。


でも、前は滅多に来なかったロド王が、今は頻繁に森に来るんだよ。

みんなはあたしに会いに来てるって言うんだけど、そんなことないよね?

あ、噂をすれば、今日も……



「おーい!キーちゃん!ロドだどー!お出迎えがねえどー?!」

「キー!」

「あ、そこかそこか。元気にしてたか?おめえ全然デカくなんねえな?」

「キ、キキー!」

「あ、そうか、それでも十分なのか?そっかそっか」

「キー?」

「あ、あんなあ、おめえ、バルデーシュでテルーコおやじの店でグラシーナって女職人がいたろ?」

「キー」

「その、うちのアズールとそのグラシーナって言うのは、その、えっと、どんな感じだったんだ?」

「キキー?」

「いや、そのどんな感じ?って聞かれても、こっちが聞いてるんだで」

「……キキー」

「いや、良い人だっていうのはわかってるけどな」

「キー?キキキー!!キキー」

「すごく綺麗で可愛くて良い人、か。そうかそうか」

「キ?」


ロド王ったらすごく嬉しそうな顔しちゃって、うんうん一人でうなずいてどっかに行っちゃった。

ね、あたしに会いに来てるなんてことないよね?

だって、勝手に一人でしゃべって一人で納得して帰っちゃうんだよ?

違うよね?



あ、今度はアズール王子だ!わーい!!王子様王子様!


「キキー!!」

「あ、キーちゃんこんにちは。良いお天気だね」

「キー」

相変わらず王子様はステキ。

ちょっぴりたくましくなって更にステキ。

モッチにも見せてあげたいなあ。


「それにしてもおかしいな?」

「キー?」

「いや、今日は父上と一緒に来んだけど、気づいたら一人にされていて」

「キ」

「まったく、気まぐれであちこち行かれるから、追いかける方は大変だよ」

「キ、キー」

「ああ、あっちの方を探してみるよ。じゃあね」


ロド王ったら、アズール王子を置き去りにして何やってるんだろ?おかしいよね。

でも、王はどうしてグラシーナさんのこと気にしてたのかな?


そう言えば、モッチもグラシーナさんのこと気にしてたなあ?

「ファンクラブ会員No.2として見過ごせない存在だ!」

とかぶんぶん息巻いてたよね。

あたしは、グラシーナさんみたいな素敵で腕の良い職人さんが王子のそばにいてくれたら良いなあって思ったんだけど。

そう言ったらモッチは「No.1の愛は深すぎる!!」とか叫んでたけど。

エステンのみんなは、きっとあたしと同じ気持ちだと思うけどなあ。


アズール王子には、真面目で芯の強い人が合うと思うんだ。

そうそう、前の王妃様みたいにね。

その上、グラシーナさんなら技術的にも王子を支えて協力してくれそうなんだもん。


でも、王子とグラシーナさんの、本人同士の気持ちが一番大切だもんね。

こればっかりは、あたしにはわからないし。



「キキー!」

「キキキー!!」

「キーキー!」


あ、みんなが呼んでる!


「キキッキーッ!!」


あたし、行くね。

また遊びに来てね~!







ちなみに、キーちゃんを飾る魔石のビーズはそのままになっています。

それを目印にロド王はキーちゃんをすぐに見分けられるらしいです。

アズール王子の場合は、自分に向って飛んできてくれるのはキーちゃんだけ、という認識です。

「愛だ、愛」

と、モッチがつぶやいたとかつぶやかないとか……

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