表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
9章☆迷ってばかりで進めないんだ!?の巻
161/297

4-はりきりモッチとはちみつ玉

「あれっ、じゃあ、キーちゃんはアズール王子にモッチのはちみつ玉を届けなきゃ、だよね!?」

黒ドラちゃんがそう言うと、キーちゃんが「そ、そうなの!!」とあわてて飛び上がりました。

「でもさ、キーちゃんだけで行っても、王子様の部屋には入れてもらえないんじゃない?」

「そ、そうかも……」

キーちゃんが羽をパタンと閉じて、がっくりとうなだれました。


それを見ていたマグノラさんが、黒ドラちゃんに言いました。

「ブランに相談してごらん」

「ブランに?」

「ああ。きっと黒チビちゃんのためなら喜んで協力してくれるんじゃないかい?」

「わかった!ブランにお願いしてみる!」

黒ドラちゃんはそう言うと、ふんぬ~!と全身に力を込めました。

すると、黒ドラちゃんの背中の魔石がポワ~ンと輝きます。

「よし!……でも、ブランはすぐに来てくれるかな?」

「どうだろうね。とりあえず森に帰って待っていてごらん」


マグノラさんにそう言われて、今日のところはとりあえず一度森に帰ることにしました。

モッチを頭に、ドンちゃんを背中に、手のひらにキーちゃんを乗せます。

さて帰ろう!とすると、マグノラさんに声をかけられました。


「ブランが来てくれたらね、明日、ゲルードと一緒にここに来るように話してごらん」

「マグノラさんのところに?」

「ああ、キーちゃんのことやアズール王子の話は、あたしからしてやろう」

「ありがとう、マグノラさん!」

黒ドラちゃんはホッとしました。

キーちゃんから聞いた長いお話を、きちんとブランに説明できるか自信が無かったのです。


明日また来るのならと、キーちゃんはマグノラさんのところで休ませてもらうことにしました。

マグノラの花の良い香りに包まれて、キーちゃんも心地よさそうなホワンとした顔をしています。

「また明日くるね」と約束して、黒ドラちゃんたちは白いお花の森を後にしました。


帰り道でモッチがなにやら張り切っています。

「ぶいん!ぶぶぶい~~~~ん!」

どうやら、アズール王子にあげるはちみつ玉を、たくさん用意してあげようと思っているみたいです。


古の森へ着くと、気合の入ったモッチは森の奥に消えて行きました。

ドンちゃんのことを巣まで送って、黒ドラちゃんは湖のそばの大きな木に戻ってきました。


そのまま、いつものように洞の中で丸くなってウトウトし始めた時です。

「黒ちゃーーーん!」というブランの声が聞こえてきました。

「そうだった、ブランを呼んでいたんだっけ!」


あわてて洞の外に出ると、ちょうどブランが湖の上を越えてくるところでした。


黒ドラちゃんのそばにドスンと降りて「どうしたんだい!?何かあったのかい!?」と、心配そうに顔をのぞき込んできます。

「ううん。ブランを呼んだのは、あたしのことじゃないの。森にエステンコーモリが飛んできてね」

「エステンコーモリ?珍しいな、いったいどういうわけで?」

「えっとね、そのコーモリはキーちゃんていうんだけどね」

「うん」

「あのね、王子様がね」


「……王子様?」


あれ?どうしたんでしょう、急にブランの目がキーンッとするどく光りました。

まわりの温度もどんどん下がっています。


「ブラン?」

「ああ、いや、王子様がどうしたって?」

ブランがぎこちなく笑って先を促します。


「あのね、キーちゃんの王子様が病気なの」

「あ、キーちゃんの王子様なんだ!」

ブランがにっこり微笑んで、まわりの温度がすっかり元に戻りました。


「あのね、マグノラさんに相談したら、ブランにはマグノラさんからちゃんとお話してくれる、って」

「あ、わかったよ、明日マグノラのところへ行こう」

「うん、ゲルードも呼んで、だって」

「……わかったよ。呼んでおこう」


黒ドラちゃんが無事だとわかると、ブランは安心して北の山に帰って行きました。

帰りがけにお城に寄って、ゲルードにも声をかけておいてくれると約束もしてくれました。

ブランを見送ると、黒ドラちゃんは再び洞の中で丸くなりました。



今日は、新しいことをたくさん知りました。


バルデーシュの西にあるという、霧に包まれたエステン国。


マグノラの花の蜜で話せるようになったキーちゃん。


頑固で怒りっぽいけどモノ造りが得意なドワーフのロド王。


ちょっと気弱だけど器用で美しいというアズール王子。


面倒見の良いコポル工房のおかみさん。


ペペルの奥さんは、はちみつをお湯に溶かして飲んでる……


明日、マグノラさんからお話を聞いたら、ゲルードとブランは協力してくれるかな?


コポル工房の人たちは、キーちゃんが王子に会うことを良いって言ってくれるかなあ?


いや、その前にアズロが本当はアズール王子だって知ったら、工房の人たちはびっくりしちゃうかな?


そんな風に色々と考えているうちに、黒ドラちゃんはいつの間にか眠ってしまいました。



夢の中では、大きなはちみつ玉を抱えたモッチと、それにぶら下がるキーちゃん、それを見てびっくりする王子様。

ペペルの奥さんがはちみつ湯をごくごく飲んで、双子の赤ちゃんがバブバブとにぎやかです。

マグノラさんが尻尾を振ると、辺りには甘い花の香りと共にふんわりとした白い花のおくるみが広がりました。

みんなでおくるみの上でコロコロと転がって遊びます。

いつの間にかブランやゲルード、鎧の兵士さんたちも加わって走り回っています。


黒ドラちゃんは楽しい夢を見ながら、ぐっすりと眠りました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ