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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
8章☆大好きなのって隠してるんだ!?の巻
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23-真実の魔石

「メル……それでも、それでもすぐに返さなければいけなかったのですよ?」

女王が静かに、けれど厳しさを含んだ声で言いました。


王女の行動が、結果としてバルデーシュから竜二匹を王都へ呼び寄せてしまったのです。

それは、国を窮地に陥らせる可能性のある、大変な出来事でした。

女王の厳しい表情に、王女は再び蒼ざめました。



「いや、女王様、まさかメル様の話を信じるのですか?」

「ニクマーン像が勝手にくっついてきたなどと、そんなことがあるなんて!」

周りで聞いていた貴族達が信じられないという様子で騒ぎだしました。


皆、言葉にこそ出しませんが、やはり王女が盗んだのではないか?という疑いがぬぐいきれないようです。


アマダ女王は母親として、この子は真実を話している、と感じました。

けれど、それは言葉で説明したり、形あるもので証明できるようなことではありません。

王女を信じてやりたい、この子は真実を告げていると皆に言いたい。

けれど、母親としての勘だけで擁護することは、立場上許されないとも感じていました。



「う~ん……」


騒ぎ始めた貴族たちを眺めながら、いったいどうしたら良いんだろう?と黒ドラちゃんは考え込んでいました。

すると、誰かがツンツンと背中をつつきます。

見るとリュングが後ろから黒ドラちゃんのお腹を指差しています。

「?」

黒ドラちゃんが不思議そうに首をかしげると、リュングが「ああ、もう!」とかつぶやきながら、黒ドラちゃんの腰のベルトを引っ張りました。

前に付けられた魔石がお腹に食い込みます。

「ぐふっ!ちょ、ちょっとリュング――」

そこまで言ってから、黒ドラちゃんはハッと気がつきました。

腰のベルトついているのは真実の魔石です。


「あの!ちょっと良いですか!?女王様!」

黒ドラちゃんが大きな声を上げると、皆が一斉にこちらを見ました。


「あたし、王女様が本当のことを言っているかどうか、確かめられます!」


黒ドラちゃんの言葉に、女王が驚いて目を見開きました。

まわりの貴族もざわざわしながらも黒ドラちゃんの次の言葉を待っています。


「あの、これ、真実の魔石なんです!」

黒ドラちゃんがベルトの魔石を指差すと、ほお~っと感心した声が上がりました。

バルデーシュには魔石があるというのは周知のことです。

そして、その魔石と言うのは、竜と密接な関係があるというのも知られていました。


「本当に、その魔石でメルの言うことが真実なのかわかるのですか?」

藁にもすがるような思いで女王がたずねてきます。


「本当です!」

黒ドラちゃんは自信たっぷりに言うと、周りで見ている人々に向かって声をかけました。

「誰か、嘘をついて見てください!」

突然の変なお願いに、皆は不思議そうな顔をしましたが、前の方で見ていた貴族が「私が」と手をあげました。


黒ドラちゃんはその人のところまで行くと、魔石のベルトを外し、手に持ってもらいました。


貴族は魔石をしげしげと眺めてから言いました。

「私は女です」

魔石はみるみる真っ黒に変わりました。

「おお!!」見ている人たちが驚きます。

「私は男です」

魔石は再び真っ白に戻りました。


「ええと、私は子どもの頃からピーマヌが大好きでした」

魔石がまた真っ黒になりました。

ピーマヌというのは、ナゴーンで採れる野菜で、鮮やかな緑色をした苦みの強いものです。

この貴族が大のピーマヌ嫌いだというのは有名だったようで、周りの人からは感心する声と苦笑するような声が半々で聞こえてきました。


「私はピーマヌが大嫌いです!」

魔石は再び真っ白になります。


「私はお昼寝と散歩が大好きです」

魔石は白いままです。


もう、魔石の力を疑う者は一人もいませんでした。



黒ドラちゃんが王女の所へ行きます。

魔石のベルトを王女に手渡して「もう一度、さっきのお話をして」とお願いしました。


王女は魔石に手を置くと、先ほどしたパーティーの日の出来事をもう一度話しました。

ドレスにニクマーンがくっついていた、という話をしても魔石は真っ白なままでした。

王女の言葉は真実だと証明されたのです。


女王は目を閉じて安堵のため息をこぼしました。


そばで見ていた黒ドラちゃんもホッとしました。


「メルおねえちゃま、もうおこられない?」

傍で心配そうに見ていたポル王子が不安そうに言いました。


「ええ。少なくとも、嘘をついてはいないことはわかりました」

女王の言葉に、ポル王子はニッコリ微笑みました。

「よかったぁ!にくまーんもしんぱいしてたよ?」

王子の無邪気な言葉に、その場にいた人々が思わず微笑んだ時です。


箱の中から眩しい光があふれ、辺りを包みました。

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