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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
8章☆大好きなのって隠してるんだ!?の巻
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13-座長のゴルドさん

「詫びたい?ホーク伯爵が、俺に?」


信じられないという感じでラマディーがつぶやきます。


「ああ、あれだろ、例の高価なニクマーン像を盗んだとかでお前の姉さんが捕まったんだろう?それがそもそも間違いだったとか」

「そうなんですか!?姉は無実だとわかってもらえたんですか!?ニクマーン像が見つかったんですか!?」

ラマディーが勢い込んで聞くと、おじいちゃんは申し訳なさそうに「いや、その、詳しくはわからんけどなあ……」と答えました。


とにかく、ホーク伯爵のところへ向かおう!とみんなで再び飛び立とうとした時です。

一台の馬車がすごい勢いで走ってきました。

「あ、あれはホーク伯爵家の馬車だ」

そう言ってラマディーがラウザーの後ろへ隠れます。

馬車はみんなのすぐそばで止まりました。

中から、クルンッ!とした口ひげを生やした、丸っこい体形のおじさんが降りてきました。

「ラマディーが竜に乗って戻ったというのはここですか!?」

キョロキョロしながらおじいちゃんにたずねます。

その声を聞いて、ラウザーの後ろからラマディーが飛び出してきました。

「座長!」

「ラマディー!」

がっしりと抱き合って「良かった、良かった」「ごめんなさい!ごめんなさい!」と繰り返しています。



ようやく再会の喜びが落ち着くと、座長が自己紹介をしてくれました。

「ラマディーが大変お世話になりました。私はホーク劇場で座長を務めております、ゴルドと申します」

体形だけでなく、名前もコレド支部長に似ています。

座長さんは、港の漁師から知らせを受けて、ホーク伯爵の馬車を借りて迎えに来てくれたのです。


「でも、俺が戻っても大丈夫ですか?竜を連れて来たけど……伯爵様はそれで許してくれるかな?」

自信なさげにラマディーが言うと、ゴルドさんが大きく首を振りました。

「心配するな、ラマディー。もう伯爵様はこれっぽっちも怒ってはいらっしゃらない」

「本当ですか!?」

「ああ、それどころか、お前のことを心配して体調を崩されているくらいだ」

「ええっ!」

ラマディーはもちろん、黒ドラちゃん達も驚きました。

だって、ラマディーから聞いたホーク伯爵は、無実のお姉さんを捕まえちゃうような怒りっぽい意地悪なおじさんっていう印象だったからです。


「とにかく、伯爵様のところへ行こう。アーマルにも知らせておいたから、すぐに会えるぞ」

ゴルドさんに急かされて、みんなで馬車に乗り込みます。

「それで、ニクマーン像は見つかったんですか?」

ラマディーがたずねると、ゴルドさんは残念そうに首を振りました。

「まだだ。だが、もうお前の姉は疑われてはいない」

「本当ですか!?」

「ああ。詳しくは着いたら話そう。ほら、もうお屋敷が見えてきた」

窓の外を見ると、綺麗な青い屋根に白い壁、赤枠の窓、それぞれの美しさを強調するような色彩で彩られたお屋敷が遠くに見えてきました。

お屋敷と言うよりもお城に近い感じです。

もっと近くへと行くと、すぐそばに一回り小さな丸い屋根の建物が建っていて、半円形の舞台があるのも見えました。

あれがおそらく“劇場”っていう場所でしょう。


馬車は門をくぐるとそのままお屋敷の入口前までやってきました。

門の前に人だかりがあります。

それを見たラマディーが声をあげました。

「あ、みんな!」

一座の仲間が出迎えてくれたのです。


馬車を降りると、すぐにラマディーは仲間に囲まれました。

人だかりが割れて、若い綺麗な娘さんがラマディーの前に現れました。

「ね、姉さん……」

「ラマディー!」

艶やかな赤い髪に、ラマディーと同じ緑がかった灰色の瞳が涙で揺れています。

「良かった!解放してもらえたんだね!?俺、俺……」

「良かった。あんたが飛び出したって聞いて、あたし……」

「ごめんよ。俺、姉さんと二人で貯めておいたお金遣っちゃったんだ。あれでバルデーシュまで行ったんだ」

ラマディーが申し訳なさそうにうつむきます。

「ばか!そんなことどうでも良いのよ!あんたが無事なら、あんたさえ無事なら……」

あとは言葉にならないようで、アーマルさんはラマディーをしっかり抱きしめました。



ラマディーは、アーマルさんとお互いの無事を確認しあうと、ようやく落ち着いて話せるようになりました。

「バルデーシュに竜の鱗を取りに行って、でも出来なくてさ」

「あんた、そんな無茶してきたの!?」

アーマルさんが驚いています。

「女の子のふりしてニクマーンの話をして、この古竜様の気を引いて連れ出そうとしたら、他の竜や魔術師に咎められて、正体がばれちゃったんだ」

「まあ!」

「でも、正直に姉さんの話をしたら、ついてきてくれるってことになってさ」

「ああっ、お前ってば。それは本当にたまたま運が良かっただけなのよ?」

「う、うん。わかってる」

「もう、絶対にこんな無茶しないでちょうだい」

アーマルがラマディーの肩を掴んで強く言い聞かせます。

そこへラウザーが声をかけました。


「あのさ、ところで伯爵ってどこにいるんだ?」


ゴルドさんががハッと我に返り「そうだ、伯爵様に会わせなければ!」と飛び上がりました。


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