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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
7章☆離れていたって友だちなんだ!の巻
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14-明日にしよう

黒ドラちゃんが、おばあ様達と話している間に、モッチはホペニに連れられて王宮蜜蜂のみなさんとお話をしてきました。

王宮蜜蜂の女王様は、ノーランド中のお花のことを知っていて、ノラクローバーのこともご存知でした。


女王様のお話によると、昔はノーランドのあちらこちらで、たくさんのノラクローバーが見られたそうです。

けれど、ノラウサギを狩ろうとする人間達が、わざとノラクローバーをひっこ抜いて減らして回りました。

ノラウサギを捕まえやすいように、決まった場所だけに残して、罠を仕掛けたのです。

ノラウサギ達は、一度でも人間が狩りに利用したノラクローバー畑には近寄らなくなりました。

ノラウサギが引っ掛からなくなると、人間たちは、そこのクローバーをひっこ抜きました。


そんなことしているうちに、ノラクローバーはとても少なくなってしまいました。

今、残っているのは、保護されていた王宮の森のさらに上の方の群生地のみ。

一年中雪の積もった山の上、寒さに強いノラウサギでなければたどり着けない場所だそうです。



「ぶいん、ぶいん!」

モッチは、黒ドラちゃんに話し終わると、でも、大丈夫だよね?と聞いてきました。

だって、黒ドラちゃんは竜だもんね!

寒さに耐えられるようにブランが魔石を持たせてくれたし!

なんてったって豊富な魔力で叶えられないことなんてないもんね?

モッチはもうノラクローバーを手に入れたような気持ちで、ご機嫌でぶんぶん飛び回りました。


「そっか、山の上なんだ」

黒ドラちゃんがつぶやきました。

黒ドラちゃんがなんだか元気が無いことに、モッチはようやく気付きました。

「ぶいんぶいん?」

モッチが黒ドラちゃんの頭の上に止まって聞いてきました。

「ううん、何でも無いの。大丈夫だよ。ただ、今日はもうお昼過ぎてるし……山に登るのは明日にしよう」

「ぶいん?」

え、行かないの?とモッチが話しかけましたが、黒ドラちゃんはもう王宮に向かって戻り始めています。

モッチも仕方なく黒ドラちゃんの首にかかったリースに戻りました。

一緒に山に登ってくれるつもりで待っていたホペニに「ぶぶいん!ぶいん!(ごめんね、また明日ね!バイバイ!)」と言ってから。



翌日は朝から大雪でした。

ノーランドは雪国ですが、今の季節にここまでの大雪が降ることは滅多にありませんでした。


「せっかく場所が分かったのに、あいにくの天気ですね」

モーデさんが窓の外を見ながら言いました。

「う、うん。良いの。明日にするから」

「そうですね。その方が良いと思います」


黒ドラちゃんはノーランドのお城の中で、広間や絵画の部屋、彫刻の部屋、宝物庫なんかを見学させてもらって一日を過ごしました。


翌日も朝から大雪でした。

「こんなこと、めったにありませんのに……」

さすがにモーデさんも心配そうです。

「大丈夫!明日にするから」

「ええ、それもそうなんですが、城下の者たちもこんな突然の大雪には備えが無くて……」

「そうなの!?」

「ええ。あちらこちらでこの大雪のために困ったことが起き始めているようなのです」

「そ、そうなんだ……」

「まあ、明日止んでくれれば大ごとにはならずに済むと思うのですが……」


黒ドラちゃんとモーデさんは一緒に窓の外を眺めていました。

でも、同じように雪を見ながら、考えているのは全く別のことでした。


モーデさんは、早く雪が止むといいなあ、と。

黒ドラちゃんは、雪は止まなきゃダメなんだよね……と。


翌日、雪はほとんど降っていませんでした。

まだ薄曇りですが、少し待っていれば晴れそうです。

「良かった。これで安心ですね」

「う、うん。そうだね」

黒ドラちゃんは落ち着かない気持ちになりました。

思わずうつむいて尻尾をにぎにぎしちゃいます。

あれ?今って人間の姿じゃなかったっけ?

こういう姿、どこかで見たことあるような――


「あの、古竜様?」

モーデさんが遠慮がちに黒ドラちゃんに話しかけてきます。

その途端、黒ドラちゃんはパッと尻尾を放して、顔を上げました。

「なあに?」

もう尻尾は見えません。


「今日は……山に登られますか?」


モーデさんの問いかけに、黒ドラちゃんは再び尻尾をにぎにぎしはじめました。

「う、うん!もちろん!」

黒ドラちゃんは妙に元気な声で答えました。

相変わらず、尻尾はにぎにぎしたままで。

なんだか黒ドラちゃんが橙色に見えてきちゃうような……

ちゃんと山に登ってノラクローバーの群生地にたどり着けるのでしょうか?


がんばれ、黒ドラちゃん!

モッチもリースの中から応援しています。

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