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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
7章☆離れていたって友だちなんだ!の巻
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13-おばあ様のお話



黒ドラちゃんはあわてて言いました。


「違います!ドンちゃんは竜じゃなくて、ノラプチウサギです!とっても可愛いんです!」

「ああ、そうなんだね。そりゃ良かったよ。竜じゃこの家に入れないだろうから、家を建て直さなきゃいけないかと思ったよ」

おばあ様はホッとしたように、笑いました。


おばあ様が落ち着いたようなので、黒ドラちゃんはさっきから気になっていたことを聞いて見ることにしました。

「あの、おばあ様、お嫁さんになると一緒にこの家に住む……と思ってるんですか?」

「もちろんだよ!ノラウサギの花嫁は家に迎えられてその家のしきたりやなんかを一つ一つ学んで行くんだ」

「は、はい」

「そしてあたしたちは家の中で可愛い花嫁をしっかり守るんだ。ノラウサギの結婚て言うのはそういうものだよ、黒ちゃん」

「……」


黒ドラちゃんは困ってしまいました。

本当は、そんなのダメ!って大きな声で言いたかったんです。

だって、ドンちゃんはずっとずっと古の森で黒ドラちゃんと一緒だったんです。

結婚して、お嫁さんになってもそれは変わらないと思っていました。

ずっとずーーーっと一緒が良いんです。


「母上、どこに住むかはグィン達が決めること。もう我らも以前のようには――」

「何言ってるんだい!?皆でかたまって無けりゃあぶないじゃないか!オコリィみたいなことになったら……」

そこまで言って、急におばあ様は涙を流し始めました。

「あたしは反対したんだよ。平地へ行くのは止めた方が良いって。でも、ノラクローバーを探すんだって言って、あの子は……」

そう言って、おばあ様は丸くなってしくしくと泣きはじめました。

今はもういない、誰かのことを思い出してしまったようです。


「……母上、お疲れでしょう?少し休みましょうか」

そう言って二代目食いしん坊さんが、おばあ様を支えながら家の中に戻っていきます。

黒ドラちゃんは、何も言えずに二匹が家の中に入っていくのを見送りました。



おじいちゃん博士が黒ドラちゃんを気遣いながら話しかけてきました。

「古竜様、申し訳ありません。ご存知かと思いますが、ノラウサギたちは大変な危機に見舞われたことがありまして」

それは黒ドラちゃんもドンちゃんがノラプチウサギだ、って知った時に聞きました。

たくさんのノラウサギ達が、命を奪われた時期があったことを。


「その為、ノラウサギは次の世代の生みの親である若い娘ウサギたちを、過剰なほど守ろうとする傾向がありまして」

「そのためにお嫁さんはお家に入れちゃうの?」

「そうですね」

「で、でも、今はもうそんなにあぶなくないんでしょ?」

「ええ。だからだんだんと家の外、森の外、はては国の外にも出ていくノラウサギも増えました」

「うんうん!」

「もちろん、危険な時期に国外へ逃げ出して定住したものもおりますし」

「ていじゅう?」

「古の森のノラプチウサギのように、逃げ出した先でそのままずっと暮らすことです」

「そのままずっと……」


その言葉をかみしめます。

黒ドラちゃんは、ドンちゃんにずっとずっと古の森にいてほしいんです。


「あの、ドンちゃんはずっと古の森に住むよね?ここには入らないよね?」

黒ドラちゃんが不安そうに聞くと、博士は困ったような顔でこう言いました。

「それは、私にはなんとも……。申し訳ございません」

「ううん、良いの、……良いの」


黒ドラちゃんのため息が、森の中で白く広がって消えていきました。



結局おばあ様に会ったけど、花嫁の冠のことは何も聞けませんでした。

それよりも、思いもしなかったことを聞いてしまって、黒ドラちゃんはすっかり元気がなくなってしまいました。

「古竜様……」

モーデさんが心配そうにしていることにも気づきません。

ノラウサギの家から王宮蜜蜂のところへ戻っても、黒ドラちゃんは元気がありませんでした。


水色のお花畑に着くと、もうモッチが待ちくたびれたというように、ぶんぶん羽音を立てて飛んできました。

「ぶい~~~~ん!」

ちゃんと聞いたよ、教えてもらったよ!ノーランドクローバーのこと!

モッチがそう言って黒ドラちゃんに話しかけてくれているのに、出てくるのはため息ばかりです。


「ぶいん?」

「あのね、食いしん坊さんのおばあ様に会ったの」

「ぶんぶん!」

「でも、花嫁の冠の話は全然できなくて……」

「ぶい~ん、ぶんぶん!」

大丈夫、大丈夫、あたしが聞いてきたから!とモッチが元気よく答えます。

「そっかぁ……じゃあ見つけに行けるんだね?ノラクローバー……」

「ぶい~んぶんぶん!」

モッチが得意そうにクルクルと回ります。


その横で、黒ドラちゃんは、また白いため息をつきました。






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