11-4 アンダーグラウンドfeat.親友と見たあの夕焼けを忘れない②
「そうかしら?」白亜が驚いた顔でそう言うので「ダンスパーティーの時も触れられるのを嫌がっていたじゃない」
白亜はその時の事を思い出しながら納得する。「本当によく人の事を見ているのねベッキー」と一本取られたという顔を見せる。
「それにしても勉強の方でもこっち方面でも貴女には勝てないのね」両手を上げて再び降参ジャスチャー。
「当然でしょ? 昨日今日はじめたベッキーと違って年季がちがうんですから、もうそれこそ戦争時代より前からなんですから」
再び大げさに驚き「まるで殺し屋の老舗ね」
「そうね。じゃあそろそろ行きましょうか? ベッキー」
ヘリは飛び立つ。港にいくのか、空港か?
暮れ行く空をバラバラとヘリは飛ぶ。いつのまにかもう一人も目出し帽を脱いでいた。
「侏羅、ヘリの操縦を見て覚えなさい滅多にないわよ」
「かしこまりました」そう言って女性の殺し屋は運転席に向かい操縦見学。
「ベッキー、一つ聞いていいかしら? 何故この街で粉を撒こうとしたのかしら? 貴女の事ですから突然の思い付きか、自分の経営プランにのっとったただのお遊びなんでしょうけど、貴女の口から聞かせていただけるかしら? 何故、この街で事を起こしたのか?」
「……そうね。特に理由はないわね」
しいて言えば、知り合いの住んでいる地域だったから。
「ブレないわねベッキー」
白亜の言ったとおり、何処でもよかったのだろう。別段日本でなくても良かった。ゲームに負けた子供みたいな表情を向ける。
「明日、そこの西宮戎神社で酒蔵フェスティバルがあるのよ」
表向きの予定である日本酒のお祭り。
「……いいわねジャパニーズワインの飲み比べ」
酒の種類は違うとはいえ、カリフォルニアの大きなワイナリーのご令嬢、お酒の味はよく知っているし、そしてうるさい。日本一の日本酒聖地である灘五郷、その西宮郷の酒ならこの舌の肥えたレベッカでも十分に満足する日本酒がいくつか見つかるだろうと白亜は思った。が、芦屋には酒蔵ないのでこればかりは少し閉口してしまう。
「……そうね。あそこでしか買えない銘柄もいくつかあるわよ」
普段日本酒を飲む事はない。どちらかといえばワイン党である白亜も確かに灘五郷の日本酒は美味しいと思う。本来であればレベッカとは明日落ち合ってこの酒蔵フェスティバルに参加、そして酒蔵系列の高級懐石を食べるハズだった。ハリマオ会の仕事を終えて殺し屋ではない普通の白亜として語り合うつもりだった。「とても残念よ」
「あら、どうして?」レベッカが尋ねる。
「西宮市を出たわ」あぁ、ここは白亜の住む高級住宅街が有名な芦屋市かと「綺麗な夕日ね?」
レベッカはここが芦屋市であるという事、そういえばあのキュートな女の子クロが言っていた。「西宮市では殺しはご法度だったかしら?」
「そうね」
「……少しだけ待ってもらえる?」レベッカは別に抗うわけでもなく、スマートフォンを操作する。冬雪とクロの写真を見て楽しそうな顔をする。「あの子達に私の車を送って頂戴、約束したから」
「……わかったわ」
「さようなら、ディア白亜」
レベッカは夕日に負けないような綺麗な瞳と眼差しで微笑んだ。そんなレベッカに白亜は銃を向けると引き金を引き、今回の依頼。
贋作展の画商を殺害する仕事を終えた。




