10−1 アンダーグラウンドfeat. より、黒い者。その人殺しはクロと言う
クロは屋上の駐車場から5階のジョーシン電機に向かうとそのままエスカレーターに乗り7階、百円ショップのダイソーに上がる。
ここにはよく買い物にくる。そして、この綺麗な陳列の並び、障害物だらけの店内。クロのテリトリーと言っても過言ではなかった。言葉どおり女の子の尻を追いかけるようについてきた元少年兵は今なお、クロを見てニヤニヤしている。クロをレイプするつもりでいるのだ。これ以上のお預けはコードネーム・ブラックと呼ばれる彼は我慢できない。
彼は戦場で生き抜いてきた。元少年兵として酷い扱いも受けてきた。そんなブラックは戦場で学んだ事がある。奪うより奪いたい。力は使われるより使いたい。略奪、凌辱、彼のその狂気とも思える性格から、真っ黒だと彼はブラックと同僚達に呼ばれる。これで自分が黒人系だったら人権団体が黙っていないなと思いながら、このお気楽な国にいる、お気楽で汚い者も汚い事もしらない雌を嬲り、穢し、犯そう。そう思うだけで下半身が反応する。目の前のスカした女はどんな顔で、どんな声で泣くのか。
獲物であるクロがポケットから取り出している物。大量の鍵。それが武器なのか? そんな殺傷能力の低い物よりタクティカルペンとかの方がまだマシなんじゃないかとブラックは思った時、ブラックの顔が裂けた。
「……は?」
なんで自分の顔が斬れたのか、声をかける前に、クロが目の前にいる。は?
そしてクロはすっと下がって距離を取り棚の奥に隠れた。
ようやくブラックも気づいた。ここは障害物だらけ。
自分はあの女の狩場に誘い込まれたのだと、いや、そもそも車でここに誘導された時には既にそのつもりだったんだろう。得意な狩場でブラックを狩るつもりだと気づいた時には怒りが優先した。
「このクソあまぁ! 狩るのは俺だ! お前は黙って股開いてたらいんだよジャップ!」ブラックが叫び「意味が分からない。アマ? じゃなくてクロはクロ」
「クロ? お前がクロか!」自分と同じ名前を持った強い女。会ったら犯そうと思ってた。「なおさら、犯したくなった。あばら折れるくらい殴ってファックしてやんよ!」
ブラックはサイレンサー付の銃を二丁取り出した。ここで発砲するつもりなのか? そのつもりなのだろう。そんな事を普通の感性の持ち主なら考えるのかもしれないが、クロからすれば仕留める相手が銃を持った。ただそれだけの事なので顔色一つ変わらない。
ブラックはクロのその反応に、店内で発砲。陳列棚を抜けて一発でも当たればいい。流れ弾に関係ない客に当たればクロの動きも鈍くなるか?
「ほらほら、パンピーに当たっちゃうよ!」買い物客はここにはいない。とはいえ、クロにとっては誰が死のうと関係ない。護衛対象とこれらは知り合いで護衛対象に危害は加わりそうにない。ならばこの邪魔な連中をバラして護衛任務に戻ればいい。しかしクロは一つ困っていた。
この少年は冬雪に任せて、自分があのデカブツを仕留めるべきだったと、冬雪を早く助けに行きたい。新人を守らねばならない。その為には前に出るべきだが飛び道具を持っている相手は適当に撃って場所を探ってきている。それなりに戦い慣れしているとクロも認め、姿を見せて少年を誘導する。当然好き放題撃ってくる。射撃の腕も悪くない。何発かかすった。殺すつもりのない弾丸の軌道。それにクロは安堵する。これならいけると。
クロは必要な物を見つけるとそれを持って少年の前に出た。クロもハンドガンを持っているが撃ちあいになれば二丁でロングマガジンの少年に手数で負ける。とはいえ自分を殺すつもりがないのであれば問題ない。大丈夫。
笑っている。クロが前に出てきた事で銃を向ける。いい反応だ。クロは自分と同じくらいの動きをこの少年が見せるので、本気でこの少年が殺しに来ていたら少し手間だったなと思った。ここは西宮市ではない、尼崎だ。そしてクロの得意とするタイプの狩場だ。そんな場所で殺してこない。
冬雪のところにいこう。
クロはそう思うとハンドガンを少年の頭につけて、引き金を引いた。冷っとする感触。まずいと少年も引き金を引く。歪な音が響き、その後にバン! とつまらない音が店内に響いた。それは命を奪う安い音。クロとブラック、二人の銃はどちらも引き金を引かれた。ブラックはクロの身動きを奪い凌辱する為に、クロは純粋にこの少年を殺す為に、その結果は一目瞭然だった。頭に小さな穴を開けてゆっくりと流血し、倒れる少年の姿。そしてクロは腹部に入れていた二枚のフライパンを取り出すと、ガランと捨てる。
ゆっくりとレジにいる女性がやってくる。
何事もなかったかのように少年をトランクケースに入れると、クロに領収書を渡した。フライパン二つ分の価格と一人人間を処分する費用がかかれている。
「あとでボスかBBの方から連絡してもらう」
パートをしながら副業で始末屋を営んでいる井口雅子は笑みをこぼして頷いた。




