8−11 アンダーグラウンドfeat.人質と飲むビールも美味い②
そう言うブリジットの言葉と表情はどこか哀愁を感じ、赤松に対して嫉妬を孕んだような感情を感じた。「せやけど、一回こっちに片足突っ込んだら多分、無理なんやろうな」同時に諦めの言葉も述べる。「店長の揚げる串カツは美味しいですよ。きっとファンがもっと増えればそれだけでも」という宋の言葉を遮るように「あのな? ハンサム、ウチ等は少なからず恨みを買う。表稼業だけに戻るなんてもうできへんねん」ばっさりと切り捨てるようなブリジットの物言いに榊が割った。
「それは言い過ぎだBB、赤松さんの腕ならなんとかなるかも、でも普通よりずっと難しいって話さ」
「難しいてボス、期待持たせるような事言う方が残酷やない? 赤松の腕は本物や。戦争をお仕事にしてたウチがいうんやからな。あーいうのは何処でも需要がある。そして赤松も嫌々言うても、一度手染めてるから足を洗うなんてできひん。まっとうな世界に戻ろうとすると、運命が邪魔するようにな」
片腕をなくしても未だに喜んで荒事の場に身を置く自分とは真逆で出来る限り関わりたくないと思っている赤松だが、ブリジットでも驚くほどの戦闘能力と問題解決能力を誇る。
「なら、今の串カツ屋を続けようと思ったら店長は今の仕事を」
やめる事はできない。縁を切る事もできない。かならずついてまわる。
ブリジットの言う事は認めざる負えない「裏の仕事は絶え間なく依頼があります」
「やろうね。ウチと喧嘩しても死んでないし」それはブリジットなりの最上位の誉め言葉。「なんなら赤松さんが表稼業にのみ専念するときは、宮水ASSを利用してもらえばいい」「はぁ? ボス、それこそ夢物語やろ? ボディーガード代いくらかかると思っとんねん。結局何かあったらこのハンサムもあの狂犬みたいな女の子も赤松も自ら武器を取るやん。一度身体が覚えた事はわすれられへん」
「依頼の内容にもよるだろブリジット」
「は?」
「まってください。店長が裏稼業から足を洗うなんてまだ言ってませんし、きっと今後も始末屋の仕事は尼では必要になってくると思います。だから、私の一存では何もわかりません。ただ、もしそんな時は力を貸してください」
「まぁ、その前に仕事で衝突して殺してまうかもやけどな」
「店長がいればそうはなりません」
「……凄い宗教や」
「宗教ではなく、単純に尊敬です。店長は本当に店を切り盛りしている時の方が楽しそうで、私もそんな店長と一緒に仕事をする事が誇りです」そう語る宋の表情は恋する乙女のそれだ。しかし、宋は残念ながら乙女ではなく、男。それになんだかブリジットは地雷をふんだようで「ま、まぁええんちゃう」
榊はクスっと笑った。「さすがはBB自由の国出身だ。そういう事に関しては配慮があるんだね」
ばつが悪そうな表情をして空き缶に吸い殻を突っ込む。「こういう連中ややこいだけや」
榊はなるほどと、ブリジットの処世術に感心する。「さて、そろそろ『よる』さんのお店の近くだからクロと冬雪くんにも連絡いれとこうか」
「……さすがにもう寝とるやろ? というか朝の方が近いやんけ、ビール飲んだら仮眠せなあかんやん。ハンサムくん、店の仮眠所借りんで」
ブリジットの言葉を聞いて「ウチのお店、そんなところないですよ。基本的にみんな自宅に帰って寝るか、シャワーだけ借りて車中泊ですよ」
「マジで……」三本目のタバコをポロリと落としてブリジットがドンびいた。




