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8-5 アンダーグラウンドfeat. 経営者によるお金の価値観②

「……そろそろ海に到着しますよ」

「あら、本当! 随分暗いのね?」

「レベッカさん、あまり前にでないでくださいね」

 冬雪がそう言うとレベッカは冬雪とクロと手をつなぐ。自販機でココアを買って、

 しばらく眺めて「日本の海ってなんだか不思議な匂いがするのね」

「確か日本の太平洋側の海は日本に多い特有のプランクトンや生き物の死臭みたいなのがするんですよ。これ、日本では磯臭いって言われてて、わりと海洋資源が豊富な理由でもあったりするって確か学校で学んだ事があったと思います」

 冬雪の学生レベルの知識、

「なるほど! フユキはとても博識な男の子なのね! 凄い為になったわ」だなんて、関心しており、クロも同じく、そして二階堂は、

「さすがですねフユキ様、私は学校という組織に中学の途中から所属してませんでしたからそのあたりはからっきしで」

「二階堂さんがですか?」

「えぇ、中学の途中から家庭の事情でしばらく色んなところを転々としておりました」

「まぁ過去なんて気にしない事ね」

「過去は気にしないですか、ハハッ。確かに今でございますね」

「そうよ。今が充実しているかどうか! 人間臭らなければなんでもできるわ!」この人は悩んだ事なんてあるんだろうかと二階堂と冬雪はレベッカを見て思った。

 さすがに何もない暗い海を何十分も見ていても面白くない。「ではそろそろ白亜様のお屋敷に向かうという事で宜しいでしょうか? お二人も本日は白亜様のお屋敷にお泊りください」

 まだ正式に宮水ASSに依頼をしたわけではないが、長い事色々付き合わせてしまった。別途料金も上乗せしなければいけないので、二階堂は「本日の報酬は100万程で構いませんか?」と伝え、冬雪が困り、代わりにクロが、

「お金の事はまとめてボスに伝えて、クロには分からない。クロに分からないという事は冬雪にも分からないから」とこういう時はそう答えるように言われているんだろう。それを聞いて二階堂も頭を下げる。今更だが、冬雪は仕事の請け負い方や報酬について全然知らない事に気づいた。

「クロはとてもクールね! お金の話はしないって好きよ!」そうレベッカに褒められるクロ。

「お金の話はボスかブリジットかタマの仕事、クロには関係がない」

 クロの話を聞いてレベッカだけが怪訝な表情を見せた。レベッカはクロが少し前まで世界を震撼させた殺人鬼である事を知らないのだ。彼女にはお金に価値はあまりない。

「そう、お金に興味がないじゃなくて関係ないは面白い解釈ね」レベッカがそう言ってクロという人物について理解しようとしている。冬雪も二階堂も彼女の想像できる世界の外にクロがいる事を当然言わない。

「この世界が貨幣経済である限り、お金から逃げる事は誰もできないのね? お金ってよく命より大事かどうかという話をすると思うけど、命よりは大事じゃないわ。でもお金という力は人生の選択肢を広げてくれるとは思うの、例えばさっきのラーメンだって1杯分のお金しかなければ1杯だけだけど、お金を沢山あれば二杯どころかなんだって頼めるでしょ? この世界に人間として生まれてしまった以上、お金は何処でもついてまわるわ。だから関係ない事はないわね。ただ、クロはお金に支配されていない面白い女の子だわ」

 クロにとってはお金とは殺しをせずに食を得られる手段の一つとしてとらえている。だからといってそのお金に執着もしてはいない。自らの報酬すらボスの榊任せだ。

「だから、クロはお金を支配しているって考えたらどうかしら? 無関係でいられない物であればできるかぎり効率的に手元に残るようにした方が利口よ」

 さすがは大きなワイナリーの令嬢だ。経営的な思考をしているのだろう。

「お金を支配するですか?」冬雪が不思議そうに尋ねるので、白亜の屋敷に向かう間、経済のお勉強が始まった。

「例えば、殆どの人って生活の為にお金を稼いでいるでしょう? それって生活していくのにお金が必要じゃない? お金に依存して生活をさせてもらっているようなものよね? でも、働かなくても生活できるだけのお金が入ってきたとしたら? 働いて得るお金は全て自分の為に使えるでしょ? 最悪働かなくて時間を優先したっていいじゃない? だから、お金に使われる。という生き方からお金を支配して生み出す生き方にすればとても人生は明るい物になると思わない?」

「まぁ、確かに」

「その為に何ができるのか、チャンスは一杯あるわ」とレベッカが微笑んでみせる。

「例えば私や白亜はどちらかといえば成功者よね? そんな私達とのフユキやクロの出会い。こういう繋がりは大事にした方がいいわね」

 確かにそうだろう。金払いのいい憂慮顧客だろうし、こんな仕事ばかりこなしていたら生活には困らない。「きっと今、フユキは私の護衛みたいな仕事を沢山繰り返していれば生活には不自由しないと思ったわよね? それはまだお金に支配されているわよ。何をすればお金が働いてくれるのか? 考えてみてもいいかもしれないわね。もし興味があれば私のところ一度いらっしゃい」

 きっと、学校では教えてくれないような高度な何かを教えてもらえるんだろう。レベッカは冬雪とクロに自分の名刺を差し出した。冬雪は受け取ってからきっとレベッカのワイナリーに行く事はきっとないだろうと思った。レベッカは表の仕事をしている人で、自分は裏稼業、お天道様に顔向けできないような事もこれから行っていくのだ。

「まぁ、二人は本当にまだ若いからなんだって出来ると思うわ。バックパック一つもって世界中を見て回ってもいいと思うし、何かをはじめるのに遅いという事はないわ! 私だって新しい事をはじめようと思って日本にやってきたんだから! 人生は思ったよりはやく終わるようにできているから後悔のない人生を送りたいわね!」

 レベッカの話は耳が痛かった。しかし、この車に乗っている冬雪、クロ、二階堂の三人には多分、そういう未来はないだろう。

 そして、車は白亜の屋敷に到着した。

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