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7−6 アンダーグラウンドfeat. それは殺しの申し子雪之丞②

体術には自信があった。宮水ASSのブリジット程とはいえなくとも、彼女相手でも時間は稼げる程度に、白亜にはその程度はできるように叩き込まれてきた。だが、今の冬雪の攻撃は捌いてもさばききれない。「立花冬樹様、これはどういう事でしょう? 私は手加減されていたのでしょうか?」

 そう聞く二階堂を無視して冬雪は攻撃を繰り返す。なんとか反撃しようとした二階堂の一撃を軽々と返し、逆にカウンター。二階堂の顔に一発いいのが入る。

「なんだこの強さ」二階堂の本心からの言葉。「分かりました認めましょう」

 それは護衛として十分な力があると二階堂が認めたわけだが、冬雪は攻撃を止めない。なんとか冬雪の攻撃を止めようにも見た事のない武術、暗殺に特化した忍術だと探偵から聞いていたがこれほどの物とは思いもしなかった。さらにいえば、今の冬雪は一切の容赦がない。二階堂に打撃が蓄積され、もうノックアウト寸前だった。トドメと言わんばかりに冬雪が手刀を二階堂に向ける。

 きっとオーダースーツの一点ものだろう二階堂の服は見る影もなくあらゆるところから出血。このままだと不味いという状況でクロが冬雪の前に立った。二階堂を守るようにクロが冬雪の徒手を受けて立つ。二階堂と同じくなんならウェイトの小さいクロの方が冬雪の攻撃を受けきれていないかに思えたが、冬雪がトンとクロと距離を取る。そして、腕から割りばしを引き抜く。

 打撃を受けていたのではなく、クロは冬雪を止めるべく攻撃に転じていた。

「君、クロだっけ?」

 クロを見て、冬雪ははじめて出会ったかのように話しかける。「あなたは冬雪じゃないの? 誰?」

「雪之丞」冬雪はそう呟いて構えた。「クロか、いい。凄くいい」

「いい?」クロは理解できずに首をかしげる。

「僕は君が欲しいよクロ」

「欲しい?」

「うん、君を僕の嫁にしたい」突然のプロポーズ。

「嫁? よく分からないけど、二階堂への攻撃はもうダメ」

「僕を、いや冬雪を殺そうとした男じゃないか、首を折っておかないと次にあった時に面倒じゃないか」

「ここは西宮市、殺しはダメ。もし、まだ二階堂を痛めつけるなら、冬雪に教育的指導を実行する。数日起きられない」

「へぇ、やってみてよ! クロぉ!」もう冬雪、もとい雪之丞の興味はクロにしかない。そしてクロが前から自分には勝てないと言っていた冬雪の姿を言い当てていた。

「君のその姿は僕に似ているよ。君は数多の命の中でその境地に立ったんだろう? 息を吸って吐くように殺しができる間柄だ。いいつがいになれる」

 クロは無表情で変わらない。教育係として冬雪の暴走を止める。

 雪之丞の体術は恐るべき精度だった。クロの中で、ブリジット以上かもしれないと本能が感じさせられる。はやく逃げた方がいいと細胞の全てがそうクロに命令をだしているが、二階堂を見捨てるわけにもいかない。新人の冬雪に西宮市で殺しを行わせるわけにもいかない。獣のような雪之丞の攻撃をクロは全力で受ける。

 クロは雪之丞の動きを見て、それを真似た。それに雪之丞は歓喜する。この僅かな時間でクロが雪之丞の体術を会得しつつある。

 雪之丞は少し後ろに下がり「すごいなクロ」とクロに微笑み、構えを変える。クロは変わらず無表情でいると、

「まぁ、今日はこのくらいでいいか」

 クロの手を掴み引っ張る。そして雪之丞はクロの唇を吸った。その舌がクロの口の中に入ろうとしたとき、クロに噛まれすぐに離れる。

「痛っ!」

 雪之丞、いや。冬雪は今どういう状況ときょろきょろ周りを見渡す。そして舌がめちゃくちゃ痛い。傷だらけの二階堂を前にして、状況がどんどん冬雪の中で理解していく。自分は意識を失っていた。この状況で自分よりも格上の二階堂や、クロがこんな風になっているという事は、アイツが出たんだ。

「クロさん、雪之丞がでましたか? 何かされませんでした?」今までにもこいつがでてくるととんでもない事が起きる。「クロの口の中に冬雪の舌をいれてきた」なんですと!

「えっ、なんで雪之丞がそんな事を」今まで、婦女子に乱暴した事だけはなかったという事は冬雪も覚えていたなのに「立花冬雪様、その、別人格? の雪之丞様はクロ様にプロポーズをされていましたよ。それも随分、お熱だったようで、最後は格闘というより恋人みたいにいちゃついて、キスをしたら舌をクロ様に噛まれたといったところでしょうか?」

「えぇ?」なんだって?

「さっきの冬雪ならクロも安心できる。二階堂も冬雪で構わないとさっき言っていた。冬雪、二階堂だから死ななかったけど、少しやりすぎ。西宮市では殺してはいけない。殺すなら違うところで」

 ここじゃなければ殺してもいいと言ってしまうクロに二階堂は苦笑して立ち上がる。ボロボロになった服から札束を出して、部屋を散らかしてしまった迷惑料だと冬雪に支払ってくれた。帰ろうとする二階堂に冬雪はせめてもの償いとして、クロと同じくヤキソバを食べて行かないか提案した。さすがに芦屋の殺し屋である二階堂がこんな庶民の作った庶民の食べ物を食べるのかと言って思ったが「お言葉に甘えて」と言うので冬雪は勉強用の椅子を譲ってヤキソバづくりを始める。そうこうしていると、冬雪の家のインターフォンが鳴らされる。

 一体誰だろうと思ってみると、カメラには外国の女性の姿、その人物を見て二階堂が困り顔で「お二人の護衛対象です」

 防弾の車の中に六麓HSのスタッフと待機してもらっていた護衛対象レベッカ・スミス。散らかっているが、さすがに入れないわけにはいかないだろうと冬雪はオートロックを解除して招き入れる。

 しばらくすると、室内にいても聞こえるヒールの地面を打つ音。そして冬雪の部屋をノックするので、冬雪はレベッカを部屋に入れる。

 ―あら、美味しそうな匂い。私にもくださる?

 という事で追加でヤキソバを三人前さらに作る事になった。クロが一応護衛対象という事で一人掛けソファーを譲っていた。冬雪の中で雪之丞が出てきた事はかなりの衝撃的な事件だったのだが、二階堂もクロもさして気にせずにヤキソバが出来上がるのを待っている。裏稼業に身を置くとこんな感じになるのかと冬雪は関心してフライパンを動かした。

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