6-5 アンダーグラウンドfeat. 三宮センター街で打ち上げ②
「収穫がなかったわけじゃないし、ごの字だね」榊がそう言うと、「あのガキ拉致する事もできなかったから泳がすという意味でもええかもね。ウチ等をねらってきてくれるんやろ?」生かして戻した事で、次は本気でこちらを殺しに来るだろう。榊は自分にブリジット、クロはまだしも研修生には少し荷が重いかなと思った。
これから三宮方面に戻って車の置いてある駐車場に戻り見回り終了だが、「ボス、ちょっと買い物して飯食ってかえろーや」
帰りの運転は自分だなと思う。
ブリジットはもうオフモード、酒を飲むつもりだ。
「どうせ三宮まで来たんだから洋食でも食べていこうか? そういえば、むかし両親にはじめてハンバーグステーキ喰わせてもらったのは神戸だったなぁ」
日本人ではないブリジットでもそこはファミレスやろ? とツッコミたくなったが、榊は恐らく元々良いところの出かもしれないと薄々感じていた。
「そのハンバーグを食わせてくれるん?」ブリジットは血の滴る神戸牛がいいなと思ったが、「いや、店名どころか場所も分からないよ」そう言って適当に入ったサンプラザの洋食屋、ビーフステーキはなさそうだが、フライとトンテキが有名らしい。「ビールが飲めればなんでもええわ」
「という事は俺は呑めないという事だね。……まぁいいけど、料理は適当に頼んでおいて、クロ達に連絡をとってくる」
完全に過保護な親だなとブリジットはジョッキのビール半分程飲み干して思う。「はいはーい。あのぉ、注文ええ?」
「はい、ただいま」
「ローストビーフとカツ飯とカニクリームコロッケ、あとおつまみセットにビールおかわりね。面倒だからビール二つにかちわりワインも、あとこのハンバーグのランチセットもおねがいなー」
「かしこまりました」
「よろー」
振り向きざまに女の子の店員のお尻でも撫でようかと思ったが榊が帰ってきたので、ジョッキを上げておかえりとジェスチャー。
「なに頼んだの?」
「てきとー」まぁ一応ボスの分はランチセット。
「数分電話をしている間に既にビールが空になってる」
「こんなん普通やろ?」
運ばれてきたおつまみセットのポテトを食べながらブリジットはビールに舌鼓をうつ。同じく榊も横からポテトをフォークにさしてつつく。想像してたより美味しい。「電車でくればよかった」
「ビールはね。先に呑んだ方がかちなんや」
「……そりゃそうだろうね」
とはいえ、目の前でかぱかぱ呑まれるのは少しばかり閉口してしまう。麒麟ビールとアサヒビールを交互に呑むブリジット。
それに関して西宮市民、宮っ子の榊は「アサヒビール一択でしょ普通」と苦言を漏らすが、ブリジットは笑う。
「ビールはさ、どこの国でもだいたい飲める命の水や」
「いいすぎだろうよ」
「そうでもないで」と、ブリジットが話し出す。「大航海時代はビールがほぼ栄養やったんや」
いつの時代の話だ? 「ほぉ」
元軍人であるブリジットだからこそたまに面白い話を聞かせてくれる。米軍はビールの量り売り自販機があるだとか普通に生活してたらまず知らない世界。
大航海時代繋がりか、ブリジットは太平洋戦争時の日本軍の話を榊に語った。戦艦の中に巨大冷蔵庫があり、そこキンキンに冷えたビールが配給としてふるまわれていた。軍人になった良かったと生まれ始めてのビールに感動したという話。
ブリジットは日本の歴史に詳しい、日本人の榊より。
「あの、俺にもビールお願いします」ここまで話されて我慢なんてできようもない。
ブリジットはかちわりワインを飲み干すと「ウチにも同じもんお願い」
同時に運ばれてきたジョッキをかちんと合わせて無言の乾杯。さすがに最初の一杯目である榊の飲みっぷりは良かった。喉を鳴らしながら中ジョッキを空にする。我慢の果ての一杯だ。さぞかしうまいんだろう。冷静に車の運転手がいなくなった事に榊はスマホを操作する。運転代行を呼ぶのである。
再びビールをおかわりし、カニクリームコロッケを堪能。
うまっ! たまんねぇ!
そんな酒盛り中に運転代行として玉風がクロと冬雪を連れてやってきた。玉風はビールを我慢させられるプレイに飽きれ、ウザ絡みするブリジットをクロになすりつけた。




