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5-1 アンダーグラウンドfeat. ある民間軍事会社のランチタイム

「いる所にはいるな」

 と話し出したのは西宮で麻薬のマーケットを広げたい依頼者の為にやってきていた元軍人、現在民間軍事会社を立ち上げたエリック、三十四歳。隆々とした肉体は誰が見ても威圧感を感じる。

「あぁ、またその話ですか? リーダー、日本の小さい映画館にいた兵士の目をした少女でしたっけ? そんなのいるわけないでしょ? 日本のアニメや漫画に影響受けすぎですよ」

 エリックの話にツッコミをいれたのは、十五、六の少年。もといモンゴル系の元少年兵。アフガン紛争で恐るべき数の命を奪った彼を血濡れのブラックと呼びエリックが引き抜いた精鋭。日本旅行に行くと言うと彼がもろ手に手を挙げてついてきた。素行の悪さに定評があるブラックだが、金さえ渡しておけば悪さはそこまでしないのでエリックが終日監視する形でエリックの形式上用心棒として連れてきた。


「でもそんな女がいたら抱いてみたいね。この国の売女は悪くないけど、悪い意味でこなれているから飽きるんだよね」そう言うブラックにエリックは頭痛がしそうだった。風俗嬢を相手にサービス外の暴行を加えてヤクザとひと悶着あった。「ブラック、次にあんな問題を起こしたらお前を射殺する。俺に冗談は通じない事くらいは分かってるよな?」

 そう言って睨むエリックに対して、全く悪びれた様子もなくブラックは笑う。エリックに冗談が通じない事くらいは知っている。知っているが故の余裕。何故ならエリックは戦闘力という一面を評価してブラックをこの民間軍事会社に引き抜いているのだ。

 ブラックは笑いながら、

「リーダーに歯向かうわけないじゃないですかー。さーせん」そう言ってポンポンとエリックの背中を叩いて笑う。「厄介ごとだけは起こすんじゃないぞ」

 この日本という国はとても楽でいい。食事をしながら人殺しの話をしようが、卑猥な事を女の店員に大声で言おうが理解していない。ブラックは食事よりもセックスよりも、血を見るのが好きだった。

「リーダー、でもこの平和ボケした国をめちゃくちゃにしてやれたらスカっとするだろうなとは思いません?」

「はぁ、まぁそうだな。あたりまえの日常がなくなるなんて1ミリも知らない顔だ」こんなところにいると感覚が鈍りそうだとエリックは思う。

 それでもエリックは「平和はいいことだ」と適当に入った洋食屋のビーフシチューを口に運ぶ。

「平和、平和はよくないですよー! 俺たちみたいな人間が不必要になるじゃないですか」と笑いながらブラックは血の滴るステーキにを大きく切って口に運ぶ。「でも俺たちみたいなのが呼ばれるって事は、どんぱちするんですよね? 相手はチャイニーズマフィア? ベトコン二世? それとも日本のヤクザなんて言わないですよね? 俺的にはなんでしたっけ? 日本の軍隊。あーあれだ! ジエイタイ! あれとドンパチやってみたいですけどね」

 そう言って、“自衛官募集”と書かれたポスターを指さしてブラックは笑う。戦えない腰抜けの軍隊と。

「飯を食ったら、他の仲間と代わって粉をまくぞ」麻薬の売人代わりをする事に少しエリックは嫌そうな顔をする。

「あー、俺は嫌いじゃないけどね。何人か日本人のガキと仲良くなったし」

「お前だってガキだろうに、だがそういう馬鹿と何かは使い要だ」エリックにそう言われてブラックは頷いて「そうそう! あいつら俺を仲間かなんかだと思ってんの!」

「それでいい。粉を撒いているのを我々じゃなくて日本人のガキにシフトさせる」エリックは一万円札の束をブラックに渡した。

「ボスが喜んでたとか適当に言って小遣いを与えておけ」

「ええっと、すげぇ五十万もあるじゃん! 俺の給料より高いでやんの! こんなにくれてやる必要ある? こんなに俺に渡してリーダー持ち逃げしたりするとか思わないの? もったーいなーい!」

「日本にポリスに捕まればおじゃんで、日本のマフィアに捕まれば人生ゲームオーバー、いずれにしても、その程度の金額がガキどもの命だ」

「いや、それでもさぁ」とブラックが口をはさむ。「俺が、アフガンで命かけてた時なんて、その百分の一程度の価値だったんだよ?」

「残念だったな? 日本生まれじゃなくて」

「ほんとそれ、この右を見ても左を見ても浮かれている国で自分が産まれなかった事をぞっとしているよ。リーダーみたいなろくでなしに会わなくて済んだから」

「それは俺もだ。お前のような生存嗅覚が強力で戦闘能力も極めて狂暴な奴なんて早々他にはいないだろうよ」

「誉め言葉?」

「あぁ、勲章物だ」

 早々に依頼主がそれ専門の麻薬の売人を呼び立て、ブラックに唆された若者も含めて引き継ぎたいものだと思った。いつブラックが事を起こすか分かったものじゃない。

「じゃあ、勤勉で勤労な俺は小遣いと粉を配りにいってまいりまーす!」

「あぁ、気をつけてな」

 ブラックは笑って振り返る。「うん、日本のポリスを咄嗟の事で殺さないように気を付けていってきますよ」

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