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4−4 アンダーグラウンドfeat. ある串カツ屋の悩み②

赤松はこの店を裏稼業共々引継ぎ二代目である。自営業というものは想像以上に難しい。美味しい物を出せばいいと単純な物じゃない。かといって質を落とせば客はこなくなる。


「本当に、常連がよくない」とお店にきてくれるお客さんがよくないと赤松はそう普通にそう言った。その話にはショオは少しばかり興味深そうに突き出しのナスの漬物で箸休め。

「それは困った。しかし何故?」赤松は冷蔵庫からダシ醤油を取り出すと、片付けの準備をしながら、〆の鯛茶漬けを作る準備に入る。もちろんメニューにはない。「美味しいって聞きつけて若い子や観光客だってたまに来てくれるんですよ? でも常連のみんなの素行がねぇ」

「それって尼の人だよね? 私も入ってる?」

 赤松は静かにうなずいて「もちろん」

「えっ?」

「いや、本当に、営業終了後にいちいち来る客とか最悪ですよ」


 ざぁざぁと洗い物を続ける赤松。常連によって店はダメになるというのは有名な話で、常連だからと店側にわりと無理に自分ルールを通す。

 ショオはハリマオ会の仕事としてここにやってきたわけで、常連顔しているつもりはなかったのだが、経営者の赤松の視点からすればなんら変わらない。「な、なんか悪いな」とショオの食べる手が止まり謝罪。

 串カツ屋『よる』の営業時間は0時迄なので既に営業時間を1時間以上過ぎている現在深夜営業の許可が本来必要なのである。いきなり悪い事してる気になるショオ。

 そんなショオの前に〆の鯛茶漬け。

「あと、店のメニューにない物の要求とか」

 いつもショオが手土産にもってくる鯛の刺身。これで〆の鯛茶漬けを所望しているのだ。

「そんなに迷惑だったか? 赤松」


 そこまで言われるとものすごく食べずらいが、食材が勿体ないのでワサビを溶かしてすする。実に美味い。赤松の料理の腕は本物だった。「まぁ、冗談ですよ。常連がこない店はつまらない」と赤松は笑った。その表情の中には常連客が店をダメにするという言葉もやはり含まれているようにショオには思えた。

 食事を終えて、ショオが多めに支払いをするので、代わりに赤松はタクシーを呼んでいた。何処に住んでいる人物なのかは知らないが、阪神尼崎駅に向かう事もあれば、JR尼崎駅方面に向かう時もある。依頼相手は自分達だけじゃないだろうし、当然と言えば当然なのだが、その中でも随分よくしてもらっているという自負と恩は感じていた。本日はJR尼崎方面に向かっている。もしかしたら女性でも待たせているのかもしれないなと手を振って店に戻る。

 今頃、誰も感動させる事のない深夜ダンサー達を始末し終わり宋とゆかりがファミレスで祝勝会でも行っている頃だろうかと、ようやく一人になり、日本酒山田錦大吟醸を取り出すと一人で鯛の刺身を肴に一息つく。始末屋の仕事、いつまでも続けられるものじゃない。

 店を畳めば虎の子の貯金と合わせて余生を送る事くらいはできるだろう。が、それは何も起こらなかった時。これから赤松の身体は衰えていくだろうし、病気にだってなるだろう。それならまだいい方で、始末屋というどうしょうもない仕事をしている自分が恨みを買わないわけがない。平穏な隠居生活に入ったとたん殺されたじゃ笑い話にもならない。そんな事を考えて、やはり酒に逃げるのはよくないなとその悪魔の甘露を飲み干した。とにかく始末屋なんて自分には合ってないし、この業界自体向いてない。

 そう自分では思っているのに、依頼は後を絶たない。始末屋は『よる』の赤松を除いて右に出る者はなしと持てはやされ、再びため息をついた。

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