2−4 アンダーグラウンドfeat.ブリジット・ブルーは優雅に働く②
「警察がこんなまどろっこしい事するわけないやん? だってそやろ? 警察はどちらかといえばアンタ等悪人の味方や。どんな目にあった被害者に対しても別に復讐してくれるわけでも、殺してくれるわけでも、ましてや守ってくれるわけでもないやん? せやろ? 『もうこんな所来るんじゃねーよ?』とか言って刑務所送った後にまた犯罪者を野に放つやん? だから、ウチ等みたいな仕事が成り立つんやろね? まぁ、一つだけ安心させたろか? ウチはアンタが抵抗せーへん限りは殺さへん」まずいウィスキーを一真の頭からかけて「安心しーや」と微笑んだ。
「ウチの所に相談してきた大学生の女の子。友達に紹介されてこの店にきたんやってな? 働くの断ったらアンタがしつこく付き纏ってくると。バレんのが怖かったんやろ? この店、奥で客取らせとる。弱みを握った女の子に他の女の子を紹介させる。友達やろうが、姉妹やろうがな。で、今回の依頼者からこの事バレるのを恐れたアンタはどうにかしてこの店に入れてやろうとしたんやろ。やめどき誤らんかったらウチ等みたいなんが呼ばれんで済んだのにな?」
既に銃を一真に剥けているブリジット。
「ちょっと、それ玩具?」と聞く一真にブリジットは足を組みながら愛らしく微笑んでみせた。そして眉間に一撃を与え一言「あんた船乗るの好きか?」
「目覚めた? そんなに強くは当ててへんけどな」暗いどこかで一真は目を覚ました。「ここは何処だ? 俺は……何をして」
状況が把握できない一真に「今から北の海に出稼ぎに行ってもらいまー。寒いのは大丈夫? 選別にユニクロのダウン買うたったから」
「は? は……? リサちゃん、一体何を言ってるんだ? いやいや、なにこれ? オーナーのジョーク?」
「アホか」と呟くブリジット。一枚の領収書を一真に見せた。
そこには、金、五十万也と書かれ、内容はストーカー対処費用としてと書かれ、受け取りはブリジット・ブルー。支払いは曽我部幸江。
その名前を見て一真は誰からの依頼かを知って憤慨する。
領収書を握りしめ、一真は胸ポケットから財布を取り出す。「百万、いや百五十万支払うから勘弁してくれない?」
百五十万という金額を聞いて、ブリジットは少し驚くとニンマリと笑う。それに了承したと思った一真もふっと笑ってタバコを取り出す。ブリジットはライターの火を近づけた「いやー、リサちゃん……じゃなくてブリジットちゃん話分かるね! いいパートナーになれそうじゃん」とタバコをふかす。
しかし、ブリジットは嫌らしく嗤うと「多分、自由に吸える最後のタバコやからな」
「は?」
「酒井一真、二十八歳。そこそこ健康体。いい値段で売れたで、ほんまごちそーさん」
ブリジットはサクマ式ドロップスを取り出すとドロップを一つ取り出す。ハッカ味が出たので引き直し、イチゴ味を口に入れる。
奥からぞろぞろとガタイのいい外国の男達が集まってくる。「ハロー、ハロー。酒井一真。これからお前のボスの方々だ」
「ふざけんな! 何勝手に俺の事を売り付けてんだよ! オイ!」
「いや、お前本気で言ってるん?」
ブリジットは生ゴミでも見るような目で一真を見つめる。「……なんだよ。おかしいだろ、こいつ等にも言ってくれよ」
今まで無理やり女の子達を商品にしてきた一真。
「等価交換やん。お前が今まで踏み躙ってきた女の子達の尊厳の代償を支払えや」悪事を繰り返した者はそれ相応の覚悟が必要であると「大丈夫、命はとりゃせーへんやろ。50年か60年か、漁業をして女がおらへん環境やろうから、ケツ掘られる程度の娯楽はあるって、よかったやん!」
控えめに言って人生終了のお知らせ。「でも、あれやん! 新鮮な海の幸食い放題ちゃうか?」
なんのフォローにもなっていないブリジットの話、それを日本語の通じない外国の明らかに堅気ではない船乗りに何を話したかを説明する。すると、大爆笑の船乗りはラム酒を持ってくる。
「えぇ、ええやん! キャプテンモルガン! しょーもない酒飲まされたから口直しに頂くわ」そう言ってショットグラスに一杯入れてくれるので「一真、アンタも飲むか?」
「助けてください」それにブリジットは「あかんやろ」
「俺の後ろ盾が黙ってない」そんな最後の脅しに対して、ブリジットは笑う。「蒼龍会やったけ?」
「知ってるなら……」
「前にさ、そこの消し屋の亮太って男が死体で見つかったやろ?」
「それがなんだよ……」ショットグラスのラム酒をクイっと飲み干す。「あれ、ウチがやってん。護衛対象を殺しにきたからパーンってさ」
そう言って使い込んだであろうハンドガン・ガバメントを見せてそれで一真の額をツンツンと突いて笑った。




