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血に塗れた銀狐が自身の幸せを見つけるまで  作者: 骸崎 ミウ
銀狐と炎猫の出会い
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先日、夢に出てきた場面を模しました

「り、燐〜?大丈夫?」



「………………大丈夫じゃない」



私が声をかけるとちゃぶ台に突っ伏した燐がそう答えた。



あの騒動から2日間、燐の悲鳴が山脈中に響き渡り、しばらく気絶していた。



そして目が覚めてからこの調子である。



「えーと、燐?」



「…………………」



私が声をかけても燐は膨れっ面でそっぽを向くか聞こえ無いふりをしている。かといって離れようとする私の手首に尻尾を巻き付けて離そうとしない。



………………どうしよう。



玄角さんが言うにはそのうち元に戻るそうだけど、いつになったら戻るのだろうか。



「……………ねぇ小鈴」



「な、なに?」



と机に突っ伏していた燐が私を呼んだ。



「私、あの後大変だったんだよ?山脈走り回ってさ。ずるくないかなぁ小鈴だけ」



「い、いや、あれは………」



「まぁ、わかるよー?ゲンさん怖かったからねー?」



ぶーぶーと言う燐。それを見て私はなんだか彼女を年下の子供に見えた。



「えっと、ごめん」



私はなんだか申し訳なくなって謝った。



「別にいいよ。それより………小鈴?あの時言ったよね?悪戯以外なんでも言う事聞くって」



「た、確かにそう言ったけど…………。なにを要求するの?」



私は燐に聞いてみた。すると燐は私の側に来たかと思うと私を押し倒した。



「ーーーーえ?な、なに?」



「………………」



燐は黙ったまま私に馬乗りになった。ジッと晴れた空の様な群青色の綺麗な双瞳に私は身が竦んで動けなくなった。



………改めて見ると燐は非常に整った顔をしている。火傷はあるもののそれも言い方は変だが、彼女の魅力を引き立てている。



え、え?待って?私、どうなっちゃうの!?





***





〜side日暮 燐〜



押し倒された小鈴は表情の薄い可愛らしい顔を赤くして固まっている。金色の瞳を不安気にゆらゆらと揺らしていて、狐耳もぺたんと伏せてしまっている。



…………普通に可愛いと思った。



なんというか………、いじめたいと私の中で嗜虐心が鎌首をもたげた。小鈴を滅茶苦茶にしたいと思った。



「ーーーーえ?な、なに?」



小鈴は戸惑い、顔を僅かに赤くしてそう声を上げた。



対する私も何故小鈴を滅茶苦茶にしたいと思ったのかわからなかった。気づくと私は小鈴に覆い被さって逃げられない様にしていた。



「え、ちょっと、ほんとなにっ!?」



小鈴が何か言っているけどあえて無視した。



小鈴を食べたいと本能が訴えて、それを理性が押し付けている。……………なんでだろう。こんなの知らない。はじめての感覚だ。



私は異能的にも肉体的にも他の同性とは違う。だから、あの孤児院では気味悪がられた。陰湿ないじめに過度な懲罰を受けたりもした。



だからなのか、私は第4世代以下とは反りが合わない。ゲンさんと本条爺ちゃんなど一部の例外はいる。けど、やっぱり心の隔たりというのは僅かにあった。



小鈴がはじめてだ。はじめからなにも壁が感じなかったのは。



やっぱり、同じ第5世代だからなのだろうか。



それでもこれは違う(・・・・・)。本能のまま押し付けちゃ駄目だ。だから抑え込んで我慢して妥協案を言う。



「ーーーー尻尾」



「…………え?」



「…………尻尾枕させて」



「尻尾を枕に?い、いいよ?」



私が退くと小鈴は座り直して私に背を向けて、自身の尾を差し出した。



私の二又とは似ても似つかない彼女の背を覆い尽くすほど巨大でもふもふとした9本の尻尾だ。普段は邪魔だからということで1本に纏めてあるがそれでもかなりのボリュームだ。



私は小鈴の尻尾を抱き枕の様に掴み顔を埋める。そうすると私の上半身は彼女の雪の様に白い綿毛に包まれる。



「んっ、んんぅっ、り、燐。あまり、強く掴まないでっ」



「…………」



私は小鈴のお願いを無視して、触り続ける。



とても、触り心地の良い毛並みだ。ずっと触っていたくなる。よく手入れされている証拠だ。それになんだか僅かに甘い花の様な匂いがする。顔を埋めたまま深呼吸すれば、どんどんと意識が微睡んでいく。



「小鈴……わたし、ねる」



私は小鈴にそう言い残して微睡に身を任せた。



「え?……………わかった。おやすみ燐」



微睡み始めた意識の中。



頭を撫でられる感触と小鈴の優しい声で私は眠りについた。

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