19 王太子カリストは婚約者の優しさを噛みしめる
あのオリヴィエが私のためにお茶を。
それだけで口元が緩んでしまいそうになり、隠すのが大変だった。
これまで一度だってそんなことをしたこともないのに。
彼女の気遣いがこれほどまでに嬉しいなんて。
……人というのはこうまで変わるものなのか。
一体いつから、私はこれほどまでにオリヴィエに執着するようになった?
ソウルが前に言った時は否定したが、この胸にある気持ちは紛れもなく、執着というものなのだろう。
怪我をきっかけに一変した彼女の態度、そして勤勉さ。
はじめて私に寄り添い、子どもたちのために協力してくれた。
この国を一人で支えなければならないというプレッシャーを感じていた中に、突然、そうではないと言ってもらえたような気がした。
オリヴィエさえ寄り添ってくれるのなら、私は立派な王になれるかもしれない。
そんな確信にも気持ちがいつからか芽生え、それは日に日に大きくなっている。
こうして毒味もなく、薬草茶を飲んでいるのは、オリヴィエ、君を信頼しているからだ。
「薬草茶か、初耳だな。効果はあるのか?」
ソウルがポッドに伸ばそうとする手を、ためらいなく叩く。
「オリヴィエが私のために淹れてくれた茶だぞ。お前に飲ませると思うのか?」
「すごい独占欲だな」
「……これくらい、普通だ。未来の妻が私のために淹れてくれたんだ」
「普通ねえ。ま、そういうことにしておくか」
正直、お茶の味は最悪だ。
でも効果があると彼女が言うのだ。
飲む以外の選択肢などあるか?
芯からじんわりと温かくなってくる。
ミリエルのしでかした不祥事の尻拭いを母上と共にしなければならず、寝不足気味で重たかったはずの体から疲労が消えていくようだ。
「少し眠る」
寝室へ行き、気絶するように眠った。
意識する間もなかった。
そして目覚めると、夜が明けようとし、東の空が明るい。
まるで一生分眠ったようにここ数日あった、汚泥のようなものは綺麗さっぱりなくなっていた。
何もかもオリヴィエのお陰だ。
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