第四十五話 水着のお披露目です
水着、調べるの大変でした……
八月も後半、夏が終わりを迎える時が近づいて来たがそれでもビーチには多くの人がいた。俺達と同じ、学生組だと思える集団もいくつか見られる。
ビーチに着き、俺達はまず男子と女子(一人は女子と言えない年齢)に分かれた。
男子はビーチの場所取りを済ませそこにビーチテント、その隣にビーチパラソルを立てる。女子は着替え場に行きそこで着替えを済ませる。
俺達男子は服の下に水着を着ていたため、テントを立て終わるとすぐに服を脱いで水着姿になった。そのまま、女子達が着替えて来るのを待つ。
大和とモブ田はソワソワした様子で立っていた。女子達の水着姿を楽しみにしているのだろう。
俺はもちろんそんなことで浮かれてはいない。
「カズ、にやけてるぞ」
「…………」
そうして待つこと短時間、女子達の着替えが終わり俺達の前へと姿を現した。
「「おおー」」
大和とモブ田が感嘆の声を上げている。水着姿は、見事に三者三様だった。
まず舞鶴。
着ていたのはフリルのついたバンドゥビキニ。明るい花柄のもので、なるほど、小さな胸でも可愛らしく見えた。
「我が生涯に一片の悔いなし」
それを見たモブ田は、それだけを言い残すと鼻血を吹き背中から砂浜に倒れ込む。
「熱っ!!」
こいつはもうどうしようもねえな。
次にみう。
水色のホルダーネックのビキニを着ていた。パーカーを羽織っていて露出は少なめだが、胸の部分はしっかり強調されている。
こうして見てみると、思っていたよりも少し大きい。どうやらみうは着やせするタイプだったようだ。
舞鶴と比較すると特にその大きさが目立つ……
じろり。
ビクッ。
止めておこう。
で、最後に京子先生。この人に関しては……
「先生、水着と紐って実は別物なんですよ」
「もちろん知っているぞ!」
……もうこれ以上は何も言うまい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
海の定番と言えば、スイカ割りにビーチバレー、人の体を砂に埋めるなど色々なものがあるだろう。海でイルカの浮き輪に乗って波に揺られるだけでも楽しい。
とりあえず京子先生の「サンオイル、塗ってくれてもいいんだぜ!」という定番の誘いは丁重にお断りしておいた。では今俺は何をしているか。
…………。
ビーチパラソルの下で、ぼーっと海を眺めていた。正確には、海で遊ぶ立也たちをである。
初めは少し、海辺ではしゃいでみたのだが……
うん、無理だわ俺には。あいつらに混じって遊ぶ体力がない。
それは右隣に座っているみうも同様である。
「疲れた」
「ああ」
俺とみうは五分と経たない内にビーチパラソルの下に潜り込んだ。こんな暑い日は、日向にいるだけで体力がゴリゴリ削られる。
「…………」
「…………」
俺もみうも、無言で並んで座っていた。その距離は存外近く、どこかむず痒い。
どうしてか、騒がしいはずのビーチの音が遠くに感じた。
「…………」
すっ。
耐えきれなくなり、そっと腰を浮かし少しだけみうから距離を取る。
「…………」
すっ。
すると、みうがその分だけ距離を詰めて来た。
「…………」
いや、これはあれだな。きっと座り心地が悪くて座り直したんだろう。
で、その時にたまたま俺の方に寄ったのだ。
そう自己解決する。そしてもう一度距離を取ろうと腰を浮かせ……
「今日は、暑い」
「はいっ」
突然みうからかけられた声に驚き、その場に座り直した。距離は結局、変わらない。
右を振り向き、みうの横顔を見る。
「ここなら、日焼けの心配もないし……」
気のせいか、少しみうの声に緊張の色が混じっている気がした。
「パーカー……脱ごう、かな」
「!?」
その言葉に、何故か俺は動揺する。別に何もおかしいことは言っていないはずなのだが。
「い、良いんじゃねえか。減るもんでもねえし」
それどころか、よっぽど俺の方がおかしなことを言っている。
「そう、だよね」
みうが、パーカーに手をあてる。そして静かに脱ぎ始めた。
隠されていた肩が露わになる。みうが脱ぐ仕草が、どこか魅惑的に思えて。
やっぱり、今の俺はおかしいらしい。何がかは分からないが、どこか狂っている。
夏の暑さに、やられてしまったようだ。




